これまでの調査から、日中韓の天狗の比較をしていきたいと思う。
日本の天狗は、中国の天狗がモデルになっているといわれているが、その姿や性質は、驚くほど違っている。
古代中国の古書『山海経』(せんがいきょう)には、すでに天狗の名前が記されており、天狗と書いて《てんこう》と読ませて、狸に似て白い首を持ち、凶を防ぐ獣であると考えられていたようである。しかし、同じ中国の天狗でも、時代や土地によってかなりの違いがあるようで、『山海経』には凶を防ぐとあるが、やはり中国の古書『漢書』(かんじょ)には、災いの前兆として現れる凶星であると記している。井上円了をはじめ、小松和彦や知切光歳といった妖怪学の第一人者の多くは,こちらの説を主張していることが多い。
日本にはじめて伝わった天狗も、不吉の前兆として現れる彗星のことだったらしい。
また、中国の天狗は未婚のまま亡くなった人の悪霊であるとする話もある。その場合の天狗は、生まれたばかりの赤ん坊を連れ去って殺し、かわりに自分が生まれかわろうとする恐ろしい妖怪だという。
いずれにしても、中国の天狗と日本の天狗は、名前こそは同じでも、性質は全くといっていいほど似ていないことが分かった。