1.高綱ゼミナールについて

高綱ゼミナールは、今年創立15周年を迎える。このゼミは1987年4月に日本大学
通信教育部の史学演習(東洋史)をゼミナール形式で行うことによって発足したもの
である。

私が史学演習をゼミナール形式で行いことにした理由については、ゼミ誌『亜友夢』
の創刊号において次のように述べた。

「私はゼミ形式こそ教員にとっても学生にとっても大学の授業らしい授業ができるも
のと考えていたからである。ゼミは大学の授業の一環であるとともに、その運営は
学生が自主的に行う『研究会』『クラブ活動』的な側面をもっている。ゼミはあるテー
マについて教員とゼミ生がともに考え、ともに話し合い、最終的には卒論の作成に
つながる専門研究を深めることが目的である。しかし、決してそれだけでなく、ゼミに
おけるフリー・トーキングによって思考の幅を広げ、教員と密接な関係をつくり、ゼミ
活動を通じて仲間づくりを行い、大学生活を楽しみ、それらによって人間としての魅
力を磨く全人教育が可能ではないかと考えられる」(「『亜夢友』の創刊によせて」、
1988年1月)。

高綱ゼミナールではこれまで「近代におけるアジアと日本」を全体テーマとして活動
してきたが、このようなテーマを取り上げた理由については、同じく『亜友夢』創刊号
において次のように説明した。「むろんゼミの指導教員である私の専攻分野が中国
近現代史であること関係している。私は中国近現代史を正しく理解するには日中関
係史を抜きにして語り得ないし、また日本人として中国を研究する際に、近代におけ
る不幸な日中関係をまず正視すべきであると考えている。このことは、かつて日本
が侵略したアジア諸地域の研究についてすべて言えることであり、日本人が例えば
ヨーロッパ史を研究する場合とは事情を異にしているといえよう。即ち、アジア――
特に戦前『帝国日本』が侵略した台湾、朝鮮、中国、東南アジアを研究する際に、ま
ず近代における日本との関係を正面から捉えることが重要であると考える」(同
上)。

2.高綱ゼミナールの各年のテーマ

1987年度:「竹内好編『アジア主義』(筑摩書房、1963年)を読む」
1988年度:「日本帝国主義と植民地」
1989年度:「日中十五年戦争史」
1990年度:「抗日戦争史」
1991年度:「孫文の革命運動と日本」
1992年度:「松本重治著『上海時代』(中央公論社、1974年)を読む」
1993年度:「信夫清三郎著『聖断の歴史学』(勁草書房、1991年)を読む」
1994年度:「岩波講座『近代日本と植民地』(岩波書店、1992年)を読む」
1995年度:「『満州国』を考える」
1996年度:「映像資料にみる『満州国』」
1997年度:「日中関係史」
1998年度:「野澤豊編『日本の中華民国史研究』(汲古書院、1995年)を読む」
1999年度:「『満州国』と東アジア」
2000年度:「奥村哲著『中国の現代史』(青木書店、1998年)を読む」
2001年度:「ベネディクト・アンダーソン著『増補 想像の共同体』(NTT出版、1997
年)を読む」

3.2002年度の高綱ゼミナール

 2002年度の高綱ゼミでは、「近代におけるアジアと日本」と全体テーマに即して大
学の授業(史学演習)では「台湾史」をテーマとしてとり上げる。

授業のねらいは、今日までの400年に近い台湾の歴史は「外来政権」による抑圧と
住民の抵抗の記録であるが、主に台湾の歴史(中学校)教科書『認識台湾』(翻訳
『台湾を知る』)を読み解きながら台湾ナショナリズムの形成史を考えることにある。
すなわち、台湾の歴史教科書の講読と検討を通じて「台湾人による台湾人のため
の台湾史」を内在的に理解し、またポストコロニアルの視点から台湾の歴史と文化・
社会を再検討する。また、テキストとして台湾の歴史教科書を取り上げることは近年
論議の焦点となっている「歴史教科書問題」について、アジアの視点から具体的に
検討してみたいと考えたからである。

 さらに、課外授業(東アジア関係史研究会)では台湾の歴史教科書以外に、日本・
韓国・中国の歴史教科書を比較検討し、それぞれの歴史認識の相違を明らかにす
ることを試みる。 





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