卒業論文を書くにあたって一番苦労したのはテーマの決定でした。2年生の時 に卒業論文の一般指導へ行ったのですが、それ以降テーマが決められなくて3 年生になるまで指導に行けませんでした。3年で東洋史演習を履修してから東洋 史研究会の合宿に参加するようになり、そこで高綱先生に指導を受けてどうにか 二転、三転しながらテーマを決定するに至りました。
初めは「中国人の日本人観」をテーマにしようとしたのですが、どうやって一般 の中国人の日本人観を知るのか、史料が無くて辞める事になり。次に今まで授 業などで上海史を少しやっていた事も有り、また先生の指導もあったので、内山 完造についてやろうと漠然と方向が定まっていきました。それから「内山完造の 商売について」→「内山完造の中国人観」→最終的に「内山完造−上海内山書 店成功への一考察―」となった訳です。これだけテーマが変わった事も有り、卒 業するのに長くかかってしまいました。テーマを決める時はまず大きな枠を決め それから、副題を付けて狭く絞っていきます。初めから自分はこういう事で卒業論 文を書こうというものが無い人は、頻繁に卒業論文指導を受ける事をお勧めしま す。先生の指導に基いて手作業を進めていけば、落とされるような内容の卒業論 文書かなくて済むと思います。また、初めはどうやって卒業論文を進めて良いか 分からないでしょうから、自分の専攻に近い研究会などに入る事も一つの手で す。史学関係では現在、通信教育部には東洋史研究会、近世史研究会、近現代 史研究会が有ります。
○必要な資料を知る 資料収集は基本的に国会図書館や都立、県立などの大きな図書館でする事に なると思います。学部図書館や研究室などを主に使い、ない物は大きな大きな図 書館に行きましょう。ただ、コピー代が多めにかかります。 史料を集める時は始め、何を集めれば良いのか分からないと重いますが、まず は入門書にあたり、今現在どういう研究がされていて今までにどういう経過をたど ってきたのか、問題点は何かなど知り、挙げられている書籍にあたる事です。こ こでほぼテーマが決まると思います。それから、その本の巻末にある参考文献を たどって雪だるま式に集める文献をピックアップしていく訳です。中国近現代をや るなら山根幸夫他、増補『近代日中関係史入門』研文出版,1996年、等がありま す。入門書は出来るだけ新しい物を使った方が良いです。この他、HPの所蔵検 索機能を使って書籍の存在を知る方法があります。早稲田大学図書館のHPで は所蔵されている全ての資料が検索出来るようになっています。国立情報学研 究所検索サービスNACSIS Webcatでは200件までしか表示されませんが詳細 情報が検索出来ます。都立図書館のHPも近年検索機能が充実してきました。国 立国会図書館内の端末を利用するのも良いでしょう。所蔵する書籍、雑誌がまと めて検索出来るようになっています。この他歴史学関連のHPを使って情報収集 する方法もあります。卒業論文指導では100冊ぐらいは史料がなければと初め 言われましたが、全て使う訳では有りません。100冊の内使える部分というのは そう多くありませんし、必要なところを読んでいけば良い訳です。 私の場合は入門書にあたる、先行研究は沢山あるかなどをあまりやらなかった ので、テーマの切り口をどうしたらいいかなかなか決まりませんでした。先行研究 に論文はなく、書籍が3冊程度、あとは内山完造が書いたエッセイ等が主な史料 となり、先生からの貴重な資料提供と、聞き取り調査が出来た事で卒業論文を書 く段階までたどり着く事が出来ました。皆さんはセオリー通りやる事をお勧めしま す。
○資料収集について 1.図書館を利用 資料収集で利用した図書館は以下の通りです。 国立国会図書館、国立国会図書館支部東洋文庫、都立図書館 日本大学文理学部図書館、早稲田中央図書館 都立図書館については広尾の中央図書館を使いました。私の場合、東洋史専 攻だったので東洋文庫は重宝しました。ここは国会図書館と違い、借り出す事が 出来るのが大きな利点でした。(残念ながら現在貸し出しは廃止されました。)国 会図書館にない物がある場合があります。利用するには東洋文庫発行の紹介状 が必要ですが、一度閲覧証を作ると期限が切れてもそのまま更新してくれます。 但し返却日を過ぎると遅れた日×月分利用が出来なくなるので注意が必要で す。東洋史専攻の方は指導教員やゼミの先生に書いてもらう事をお勧めします。 早稲田中央図書館は雑誌記事を集めるのに役に立ちました。あらかじめホーム ページで所蔵の請求番号を調べておき、書庫に入って自由にコピーが取れて、コ ピー代は1枚10円なのでお金と時間を節約出来ました。文理学部図書館で紹介 状を発行してもらう必要があります。午前中に請求すれば翌日、午後なら翌々日 に発行してもらえます。国会図書館は9時30から行く事をお勧めします。10:30 までなら一度に3枚資料請求票を出す事が出来ます。それ以後は2枚。午前中 は1回でコピー出来る書籍の頁数が80頁(枚数ではなく頁数、1冊に付きではな く合計)、午後は50頁になります。コピーは1日3回まで出来ますが、これは書籍 と雑誌別々に3回という事です。ですから上手くいけば書籍3回、雑誌3回1日に コピー出来る訳です。後日複写の場合は何度でもコピーする事が出来ます。
2.指導教員へ依頼 私の場合、国会図書館、東洋文庫に置いていないような資料は先生にお願い してコピーを取らせてもらいました。国会図書館に所蔵していてもコピー不可とい う事もありましたので。
3.私家版等は著者へ依頼 これは少し無謀だったかもしれませんが、私家版で製本、販売されていないよう な参考文献を資料として挙げている著者に直接手紙を書いてコピーを送ってもら うという事をやりました。結果は上手くいき、貴重な資料なので指導教員にもコピ ーを差し上げました。
4.聞き取り これは当事者に直接質問をぶつけるという事ですが、私の場合、たまたま指導 教員とゼミ卒業生とのパイプから内山書店の店員をされていた方、内山完造夫 妻を良く知る方々4人から直接話しを聞く事が出来、卒業論文に使いました。未 だ明らかにされていない事を聞けて卒業論文には好資料となりましたが、上手く 活用する事が出来ませんでした。聞き取りには7月、8月に行きました。場所は東 京と広島です。国会図書館に置いてない私家版の史料をもらう事も出来、大変有 益でした。広島からの帰りに岡山県で内山完造の講演テープが有るというお寺に も立ち寄りました。この時、内山完造の講演テープをお借りして起こす事が出来 ました。卒論を通じて貴重な体験が出来ましたし、良い思い出にもなりました。
○執筆 執筆に関して、史学科は参考文献や註を含めて四百字詰め原稿紙に100枚 以上という事になっています。これは手書きだと大変な重労働です。清書するの も大変ですし、どこか一行間違えたと後で気づくと困った事になります。ですから 私はパソコンのワープロ機能を使って卒業論文を書きました。これは皆さんにも お勧めします。パソコンとまでいかなくてもワープロで書いた方が後々編集するの に楽です。社会人になってからワープロが打てないというのは考えものなので今 の内に慣れておいた方が良いかもしれません。それと、パソコンなどを使う場合 はバックアップを頻繁に取った方が良いです。もし元データが破損しても簡単に 復旧出来ますから。テーマ、目次と参考文献目録を提出して指導教員から許可 (これなら書き始めても大丈夫と言う事)が出れば書き始めるのですが、卒論提 出の半年前にこの段階までは行きたいものです。 以上で私の卒業論文執筆体験談を終ります。
2000/5/13
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