4月。春まっさかりのこの月。穏やかな日差しの中、何やら起こりそうな予感がする今日。親の仕事の都合で、葛見梨那は今日からここ、私立緑瑛学園で新しい高校生活を送る事になった。
 癖のある長い茶髪にもかかわらず、大人しそうな女子高生に見える。・・・だが、性格は結構キツイ。正直者で思った事はすぐ口にしてしまう。その為、学校ではあまり人と話さないようにしていた。
 「まいったな。何処だろう、ここ・・・・・・

無事、学園に辿り着けた所まではよかった。学園の広い敷地も、何とかクリアして校舎まで着けたのだが、その校舎もこれまた広く、職員室どころか、自分のいる場所さえわからなくなってしまったのだ。
 「そこの女子生徒。危ないからそこをどきなさい!」
不意に後ろから声をかけられ、梨那が振り返ると、ローラーブレードを履いた少年と3人の先生が猛スピードで近づいて来ていた。
 梨那があたふたしているうちに、距離が徐々に縮まっていく。
「ちょっと、そこの女の子。そのまま動かないで」
少年はそう言うと、梨那の頭上をひらりと飛び越えた。
「ごめん。じゃーねーっ!」
「こらーっ!新、待ちなさい!!」
少年は謝りながら去っていった。その後を先生達が追っていく。
「なっ、何なのあれ・・・・・・」
梨那は何が起きたのかわからず、しばらく呆然と立ち尽くした。




 「転入生を紹介する。葛見梨那さんだ」
「葛見梨那です。よろしくお願いします」
梨那が自己紹介をした直後、ドアが突然開いた。
「先生達と追いかけっこしてたら遅れました」
悪びれもせず、笑って教室に入って来たのは、先ほど梨那の頭上を軽々と飛び越えていった少年だった。
「わかった。もういいから座れ」
見た目、30代ぐらいの担任の神代は「またか・・・・・・」というようなうんざりした顔をして、少年を席に座らせた。生徒達の小さな笑い声が教室のあちらこちらから聞こえる。
 席に着いた少年は、神代の隣に立っている梨那に気付いた。
「あれ?先生、その女の子、誰?」
「今日来た転入生だ。仲良くしろよ」
どうやら、少年は梨那とついさっき会った事をすっかり忘れているようだ。少年は梨那に笑いかけた。
「俺、紺堂新。よろしくな」
「葛見梨那です。よろしく」
新と挨拶を交わしながら梨那は、
(本当に、私と同級生?この容姿で・・・・・・。あの大きな瞳。私と同じ、癖のある茶髪。彼の方が少し濃いけど・・・・・・。身長は私と同じくらいかな。)
と、こんな事を考えていた。
 「じゃあ、授業を始めるぞ。葛見、お前は紺堂の隣の席に座れ」
「葛見。こっち、こっち」
新に手招きされ、足早に席に着いた梨那は、クラス中の視線に気付いた。誰もかれもが梨那をチラッと見てヒソヒソ。チラッと見てヒソヒソ・・・・・・。その繰り返し。誰も授業を聞いていない。
 梨那はその視線を気にしながら、授業を受ける事になった。