司馬遼太郎
坂の上の雲 評価★★★★★
<あらすじ>
明治維新をとげ、近代国家の仲間入りを果たした日本は、息せき切って先進国に追いつこうとしていた。この時期を生きた四国松山出身の三人の男達、日露戦争においてコサック騎兵を破った秋山好古、日本海海戦の参謀秋山真之兄弟と文学の世界に巨大な足跡を遺した正岡子規を中心に、昂揚の時代、明治の群像を描く長編小説、全八冊。
<感想>
「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、連合艦隊ハ直チニ出動、之ヲ撃滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」という電文はご存知でしょうか。この文章を書いたのが日本海海戦の立役者であった秋山真之です。小学校、中学校通じて日露戦争の事は歴史の教科書に載っていると思います。しかし多くの人がこの戦争をそれ程重要なものと考えてはいないのではないでしょうか。まぁその40年後の太平洋戦争が大きすぎたためかもしれませんが。この本には明治維新から日露戦争を経て太平洋戦争に至る、日本近代史の世の中の流れが書かれています。なぜ日本が太平洋戦争に至ったか、いわゆる一般大衆の心理の流れがわかったような気がしました。
まぁそんな事を考えなくても単純に物語として面白いと思います。既成の軍人という枠に囚われない秋山兄弟、天才戦術家と言われた児玉源太郎、レーニンなどの社会運動家と接触しロシア革命を後方かく乱のため起こそうとした明石元二郎など魅力的な人物が多数登場します。馴染みの薄い時代だと思いますが、ぜひ読んでみて下さい。
燃えよ剣 評価★★★★☆
<あらすじ>
幕末の動乱期を新撰組副長として剣に生き剣に死んだ男、土方歳三の華麗なまでに頑なな生涯を描く。武州石田村の百姓の子「バラガキのトシ」は、生来の喧嘩好きと組織作りの天性によって、浪人や百姓上りの寄せ集めにすぎなかった新撰組を、当時最強の人間集団へと作り上げ、己も思い及ばなかった波紋を日本の歴史の中に投じてゆく。
<感想>
新撰組を有名にするのに確実に一役買った作品です。この本の主人公である土方歳三は政治家でも思想家でもなく、国を憂いたことも無かったでしょう。彼は新撰組という組織を、彼自らつくった局中法度書という法をもって鉄の組織に仕立てました。また「剣に生き、剣に死ぬ」とありますが、この場合の剣とは刀の意味ではなく、剣客でありながら必要とあれば西洋の銃器も取り入れる人物でした。歴史に「もし」は禁句ですが、もし彼が薩長側に生まれ、活躍していたら維新後どのような軍隊を作ったのか、考えてみたりもします。この本にはそんな土方歳三の生き様、そして死に様が描かれています。
歴史と視点 評価★★★★☆
<あらすじ>
歴史小説に新しい時代を画した司馬遼太郎の発想の源泉は何か?帝国陸軍が史上初の惨敗を喫したノモンハンの戦いを、太平洋戦争を戦車隊員として戦った自身の体験と重ね合わせながらふりかえり、敗戦に至る壮大な愚行に対する一つの視点呈示するなど、時代の諸相を映し出す歴史のハク動をとらえつつ、積年のテーマ「権力とは」「日本人には」に迫る独自な発想と自在な思索の軌跡。
<感想>
小説以外の司馬さんの本の中では一番楽しめたと思います。自身が経験しているため段々張子になっていく大日本帝国という国家を、戦車に重ね合わせながらうまく描いています。また戦前の天皇がどのように神聖化されたか、ということから、東洋的な権力の創り方について論じ、西洋人がその権力構造をどう理解したかについて書かれています。太平洋戦争がどのような戦争であったか(侵略or解放)よく論じられますが、この本を読むと現代人の抱いている当時の人間に対するイメージがいかに固定化されたものであるかわかります。