塩野七生

神の代理人 評価★★★☆☆
<あらすじ>
 枢機卿のポストでサヴォナローラを懐柔しようとしたアレッサンドロ6世、遊びと祭りが大好きで巨額の借金を残して死んだレオーネ10世ら、ルネサンスに君臨した4人の法王たちの、宗教と政治の間に展開される生臭い権力葛藤のドラマ。

<感想>
 ルネサンスの有名人といったら多くの人はレオナルド・ダ・ヴィンチかミケランジェロ、ラファエロあたりを答えると思います。しかし彼らのスポンサーに大商人らと共になったのがローマ教皇でした。今でもヴァチカンにミケランジェロの絵や彫刻が残っています。あらすじに書いてある人の他にも時代錯誤にも十字軍を提唱して無視された法王や、イタリア内で戦争を何度も行い嫌がられた法王が載っています。


コンスタンティノープルの陥落  評価★★★★★
<あらすじ>
 東ローマ帝国の首都として一千年余も栄えたコンスタンティノープル。独自の文化を誇ったこの都も、しかし次第に衰え、15世紀後半には、オスマントルコ皇帝マホメット2世の攻撃の前についにその最期を迎えようとしていた。地中海に君臨した首都をめぐる、キリスト教世界とイスラム世界との激しい覇権闘争を、豊富な資料を駆使して描く、甘美でスリリングな歴史絵巻。

<感想>
 東ローマ帝国ことビサンツ帝国はあまり馴染みがない人が多い帝国でしょう。現在のイスタンブールであるコンスタンティノープルを首都として栄えた国家です。日本においてキリスト教というとまずカトリックを想像する人が多いと思いますが、ビサンツ帝国では東方正教と呼ばれる独自のキリスト教を信仰していました。西洋と東洋が交じり合う、独特な文化を持った国を舞台に物語は進んでゆきます。ベネチアやジェノバの商人、双方の皇帝の側近、聖職者、イタリアからの留学生等の視点から描かれています。そこで主題となるのはキリスト教徒、イスラム教の2文明の対立ではなく西欧、東欧、イスラムの3文明の対立であるように思えます。東方正教会をヴァチカンと合流させることで、西洋に再び十字軍を起こさせることで国を救おうとする聖職者と、国は滅んでもあくまで信仰を貫こうとする聖職者の対立が興味深いです。現実に合わせて信仰で妥協し国を救おうとするものは背信者と言う事もでき、信仰を貫き現実の社会の破壊を祈ることしかしないものは狂信者とも言えるでしょう。宗教に関する疑問を提示してくれる本でもあると思います。


ロードス島攻防記  評価★★★☆☆
<あらすじ>
 イスラム世界に対してキリスト教世界の最前線に位置するロードス島。コンスタンティノープルを陥落させ、巨大な帝国を形成しつつ西進を目指すオスマントルコにとっては、この島は喉元のトゲのような存在だった。1522年、大帝スレイマン1世はついに自ら陣頭指揮を取ってロードス島攻略を開始した。島を守る聖ヨハネ騎士団との五ヶ月にわたる壮烈な攻防を描く歴史絵巻第二段。

<感想>
 聖地奪回の十字軍の折、中東を本拠地として設立された騎士団がありました。有名なところではテンプル騎士団やドイツ騎士団がありますが、聖ヨハネ騎士団もその一つです。他の騎士団が金貸しに精を出した挙句壊滅させられたり、開拓ばかりしていたのに対し、聖ヨハネ騎士団は中東、エルサレムから追い出された後もロードス島に居残りイスラム教徒相手に海賊をしていました。そこが責められ陥落するまでの物語です。僕は圧倒的多数に責められ、援軍も期待できない、そのような状況で知略をつくして戦い抜くというストーリーが好きなので大変楽しめました。ただ作者が女性だからかもしれませんが、描写に少し理解できない個所があります。そしてなにより興味深かったのは現在でもこの聖ヨハネ騎士団は活動していることです。もちろん海賊ではありませんが。


レパントの海戦  評価★★★☆☆
<あらすじ>
 西暦1571年、スペイン王フェリペ2世率いる西欧連合艦隊は、無敵トルコをついに破った。コンスタンティノープルの攻略から118年にして、トルコの地中海制覇の野望は潰えたのだ。しかしこの戦いを契機に、海洋国家ヴェネツィアにも、歴史の主要舞台だった地中海にも、落日の陽が差し始めようとしていた。文明の交代期に生きた男たちを壮大に描く三部作、ここに完結。

<感想>
 プレヴェザの海戦で敗れて以来地中海の覇権を奪われていた西欧世界が、トルコに対し反撃をする物語です。太陽の沈まぬ帝国となっていたスペインを中心にイタリアの海洋国家が結集して戦いました。この後スペインの艦隊は無敵艦隊などと呼ばれるようになります。ここでポイントとなるのは、この艦隊に位置的な関係もありますが、イングランド、オランダは全く関与していないことです。(オランダは正式にはまだ国家ではありませんが)この戦いの後スペインはアルマダ海戦においてイングランドに敗れることになります。確かにレパントの海戦において従来の切込みを中心とするトルコ軍に対し、砲撃を多く取り入れた西欧連合軍は優勢を保ちました。しかしそれ以上に砲撃とスピードに特化したイングランド艦隊に敗れることになるのです。


チェザーレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 評価★★★★☆
<あらすじ>
 ルネサンス期、初めてイタリア統一の野望をいだいた一人の若者、父である法王アレッサンドロ六世の教会勢力を背景に、弟妹を利用し、妻方の親族フランス王ルイ十二世の全面的援助を受け、自分の王国を創立しようとする。熟練した戦略家たちもかなわなかった彼の「優雅なる冷酷」とは。<毒を盛る男>として歴史に名を残したマキャベリズムの体現者、チェザーレ・ボルジアの生涯。

<感想>
 マキャベリがその著書である『君主論』のなかで理想の君主とした人物です。それだけでろくなもんじゃないと思ったあなたは大きく誤解しています。「目的のために手段を選ばず」というのが一般的なマキャベリズムの理解ですが、この考えは一面的過ぎます。そもそもの考えは、権力を握ろうとするならば民衆の支持を得なければならない。そのためには個人的な感情に流されず、時には民衆を騙して統治しなくてはならない、といったもののはずです。(完全には自信無いです。)このチェザーレという人物はまさにそういった人物でした。別に世の中のためではなく、たまたま自分の野望と民衆の望みが重なっただけだと言わんばかりの人であり、その民衆を騙し支持を得るためならば、泣かないでバショクを切れる人間でした。西洋では親父と共にタブーのない悪魔のような一族として嫌われているらしいです。