その他色々

沈黙   遠藤周作  評価★★★☆☆
<あらすじ>
 島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制のあくまで厳しい日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、<神の沈黙>という永遠の主題に切実な問いを投げかける書下ろし長編。

<感想> 現在でも平戸に行くと隠れキリシタンが信仰していた仏像っぽいマリア像などを見ることができます。隠れキリシタンは元はカトリックだったはずですが、今は独自の信仰となっているそうです。司馬遼太郎も書いていましたが、日本とは外国からの文明と対決するのではなく、受け入れて独自のものにしていく国だと言えます。そしてキリスト教もその例外ではなかった、ということです。この本では布教し続け受け入れられたと思っていたら、それが日本的な異形のものへと変化していってしまう、そういった神すらも変化させる日本の文化に対する宣教師たちの絶望が描かれています。


時計館の殺人  綾辻行人  評価★★★★☆
<あらすじ>
 館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに立つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが籠る時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは?

<感想>
 おなじみの館シリーズですが僕はこの「時計館」が一番好きです。いつものように閉じ込められた密閉状況の中で殺人が起こっていくわけですが、相変わらず動機はどうでもいいですね。動機はかなり後付けっぽいです。話の中でキャラクターの何人かが何かに気づく、もしくは知って驚くシーンがあります。まぁその後すぐ死ぬんですけど、僕はそこを読んだ時に何を見ると人間はこんなリアクションをするんだろうと本気で考えました。もちろんわかりませんでしたが・・・。このトリックは本当に驚愕しました。そしてあまりにも不自然なそのトリックのための小道具を、うまく理由付けして不自然ではなくしているのにも驚かされました。
<ねたばれ>
 内海は何に気づいたのか、その時に僕は写真に外部の人間が写っていたのかな、ぐらいにしか考えませんでした。後こずえの「何なの、これ」という台詞を見たときには見当もつかず、一気に最後まで読んでしまいました。よく抜け道が必ずあるのが卑怯だ、と館シリーズを批判する人もいますがあまり関係ないですよね。時間の流れが違う理由というのも不自然、というよりこんな事やる奴いない、と言ってしまえばそれまでですけど不可能ではない。綾辻氏の本は不可能じゃなければあり、そんな気がします。そこらへんのリアリティーなんて別に求めてないですしね。これテレビ化したらどんな感じになるんだろう。


黒祀の島  小野不由美  評価★★★★☆
<あらすじ> その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった。作家葛木志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り、「夜叉島」という名前に行き着いた。だが、島は明治以来の国家神道から外れた「黒祀の島」だった・・・。そして、嵐の夜、神社の木に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた・・・。島民の白い眼と非協力の下、浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?

<感想>
 綾辻行人の奥さんだそうで、さらに孤島ものとは・・・。そんな感じで興味を持って読んで見ました。京極夏彦を連想していたのですが、どちらかといえば横溝正史を連想しました。あと「トリック」にも雰囲気は近いかもしれません。殺され方や伝説、村人の雰囲気はおどろおどろしく、殺した動機などは現代的と、非常に楽しみやすいと思います。町中に風車と風鈴・・・気持ち悪いです。後この人の本は初めて読んだのでつすが、文章のうまい人ですね。あれだけ入り組んだ血縁関係の登場人物が出てくるのに、人物一覧表もなく理解させるのは大変だと思います。

<ねたばれ>
 あのままお医者さんが犯人だったらどうしようかと思いはらはらしました。二人が入れ替わっていた(麻里と志保)嫌な人は嫌なんでしょうけど、僕はあんまり関係なかったです。あの守護の環境の特殊性を利用したのはすごいですね。だから見知らぬ男だったのか、と驚きました。


未明の家  建築探偵桜井京介の事件簿  篠田真由美  評価★★☆☆☆
<あらすじ>
 「閉ざされたパティオ」を持つ黎明荘の主、遊馬歴の不可解な死。そして一族を襲う連続殺人の意外な真相とは。
<感想>
 一言で言うなら中途半端な印象を受けます。建築に関するうんちくをもう少し期待していたのですがそれ程ではなく、謎解きの面でも物足りない印象を受けました。見間違いって・・・そりゃないでしょ。


神の系譜  幽霊の国  西風隆介  評価★★★☆☆
<あらすじ>
 現実と非現実の境界線がそこにあった。依藤警部補は埼玉県警、立入禁止の黄色いテープの前で、いつになく現場を真剣に見つめていた。文化祭の模擬店で売る苗を採りに来ていた、県下の名門M高校の生物部の生徒が発見した白骨。それは猟奇殺人かはたまた死体愛好家の仕業か、死体に髑髏がないのであった。現場は神隠しの森と呼ばれる場所だった。山のあちこちに、変な石碑が立っているらしい。しかも学校の旧校舎では幽霊が出るという。それは、女子生徒の幽霊で「私の首はどこ?」あるいは「それは私の首!」といいながら女子の生徒に後ろから掴みかかるという。そのM高校こそ、依藤の良く知る超優秀な歴史部生徒、麻生まな美が通う高校だった。

<感想>
 1作、2作が本屋に無かったもんで3作目から読みました。超優秀な歴史部です。日本史の知識が全く無い人には意味がわからない個所があるかもしれません。「天海」という名を聞いて誰だかわからない人では、歴史ネタの部分ではきつそうです。でも謎解きの部分には関係してこないので読めないことはありません。ところで超常現象、超能力や幽霊に関する研究をするのは認知心理学の分野なんですね。

<ねたばれ> 結局あらすじに書いてある事件は全く解決していないんですが・・・。本当に『幽霊の国、解』が出て解決してくれるんでしょうか。歴史部に限らず、あのMの証で全員が納得する学校は相当優秀な感じがします。結局のところミステリーというよりは歴史+学園小説だったような・・・。


最長片道切符の旅  宮脇俊三  評価★★★☆☆
<あらすじ>
 国鉄全線完乗を果たした著者が、次に挑んだのは日本一の遠回り<一筆書き切符>の旅。北海道広尾から鹿児島枕崎まで、最短経路で2764.2キロ。ところが<最長片道切符>のルートだと13319.4キロ。これは最短4.8倍、地球の直径に相当する。十月十三日、時刻表と地図を片手に広尾を出発、紅葉前線と共に南下し、34日間で乗り終えるまでの真剣でユーモラスな大旅行。

<感想>
 今はもう廃線になってしまった多くの路線が登場します。当事に比べて北海道などは特に路線が激減しています。またこの切符は\65000、今ならいくらぐらいになっているのでしょうか。学割使えるうちに行っとこうかな、と思っています。でもこの本のルートを見ると、一度豊橋まで行ってから、飯田線経由で会津まで戻っていたりします。さすがにきついですね。ひょっとしたらかの『深夜特急』にも匹敵するかもしれない移動距離なのに、明らかに扱われ方が異なる、そんなこの本が結構好きです。


夢十夜  夏目漱石  評価★★★★☆
<あらすじ>
 「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って」そう言い残して逝った女の墓の傍で、男は百年待った・・・。不可思議な幻を紡ぐ「夢十夜」。

<感想>
 こんな言い方をしたら「本物」の人達に怒られるのかもしれないですが、星新一のショートショートのように読めると思います。とても美しい描写と不思議な気持ちになるストーリー、文学とはほとんど縁の無い僕でも楽しめました。