動物遺伝学
特殊な遺伝

・2対立遺伝子がともに不完全優性
  強い逆羽の黒色鶏と、正常羽白斑鶏を交配すると、F1はすべて弱い逆羽の青色鶏となる。
これは、2組の対立遺伝子が、ともに不完全優性であると考えられる。
 
強い逆羽 黒色鶏
×
正常羽 白斑鶏
P:
FF bb
 
ff BB
   
 
   
弱い逆羽 青色鶏
 
F1:
 
Ff Bb
 

・1対の遺伝子間でのみ完全優性、他の遺伝子が不完全優性
  無角赤色ショートホーン牛と、有角白色ショートホーン牛を交配するとF1はすべて無角糟毛牛となる。
これは、角に関する遺伝子は完全優性で、毛色に関する遺伝子が不完全優性の遺伝子により支配されていると考えられる。
 
無角 赤色
×
有角 白色
P:
PP R1R1
 
pp R2R2
   
 
   
無角 糟毛
 
F1:
 
Pp R1R2
 

・従性遺伝
  雌雄で、同じ遺伝子型でも、その表現形がことなる遺伝様式。伴性遺伝と似ているが、その表現の発現にホルモンが関わることが異なる。
 
無角サフォーク種 ♂
×
有角ドーセット種 ♀
P:
PP 
 
pp
   
 
   
♂: 有角
♀: 無角
 
F1:
 
[Pp]
 
   
 
♂: 有角
♀: 有角
♂: 有角
♀: 無角
♂: 無角
♀: 無角
F2:
[PP]
[Pp]
[pp]
       

・限性遺伝
 

一方の性においてのみ表現される形質は、限性遺伝と呼ばれる。その要因は、

  • X連鎖した劣性遺伝子に基づくもの
  • Y染色体上の遺伝子によるもの
  • 常染色体上にあるが両性で異なって表現されるもの

その、例としてヒトの若禿げ、耳介多毛などがある。



血液型


・血液型の定義
 

赤血球、白血球、血小板(血清、臓器、分泌液)などの抗原抗体反応および電気泳動法により検出される型。


・血液型キメラ 〜フリーマーチン〜
 

性の違う双子の子ウシが生まれたときには、雌個体は成長するとフリーマーチンとして知られる不妊の間性様個体になる。その原因は、胚発生時に胎膜で血管が吻合し、赤血球細胞や生殖細胞などの混合が起こる。これにより、雌の二次性徴の発現機構に障害が起きる。また、胚が抗原にされされると、それは永久にその抗原に対する抗体を産生することができない。これを免疫寛容性という。


・ボンベイ型
 

抗Aおよび抗Bのどちらの抗血清にも反応しない、代表的なO型の表現型を示す女性からAB型の子供が生まれた。家系図からこの女性はOBの遺伝子型をもつことがわかる。これは劣性遺伝子hにより、B抗原の発生が抑えられたと考えられる。通常ヒトは、H抗原を持っていて、AおよびB遺伝子の働きによりH抗原をAおよびB抗原へと変換する。しかし、このボンベイ型の女性は、h遺伝子により、H抗原を産生できず、そのためB遺伝子を保持するにも関わらず、B抗原を産生できなかった。



グロビン遺伝子の発現と制御


・プロセッシング
 

真核細胞では、RNAポリメラーゼによって転写された直後の一次転写物がそのまま機能を現す場合は少ない。むしろ多くの場合、修飾を受け、加工をされた後、初めて機能的な分子となる。この転写直後から完成mRNAに至る過程はプロセッシングと呼ばれ、核内で起こる。
mRNAが転写されると、ついでスプライシングが起こる。真核細胞の場合、その遺伝子は成熟mRNA中に保持されるエクソンと、転写はされるが途中で捨てられるイントロンの両方からなる。スプライシングはまさにmRNA前駆体に含まれる不要のイントロンを除去し、同時に分断されていたエクソンをつなぎ合わせるプロセスである。この過程でもしエクソンの連結に誤りが生じると、アミノ酸を指定するコドンにズレが生じて異常な蛋白質が作られる。それゆえこの過程は正確に行われる。そのための目印として、イントロンのスプライシング部位には、よく保存された数塩基の共通配列が存在する。特に、両端の5'-GT … AG-3'は、すべてのイントロンで共通しており、もしこれらの配列に変異が生じると、スプライシング自体起こらなくなる。
スプライシングの第一段階は、イントロンの5'-末端の切断である。これにはU1RNAが関与している。このRNAはいわばガイド役のRNAで、これが一種の添え木となって正しい位置でのRNAの切断を助けていると考えられている。切断されたイントロンの5'-末端は、そのイントロンの3'側の切断予定点の上流50bp付近にある配列のアデニル酸に2'-5'ホスホジエステル結合によって連結され、投げ縄構造をつくる。そして遊離したエクソンの3'-OHが次のエクソンの5'-リン酸基に結合し、スプライシングは完了する。



集団遺伝学

・ハーディー・ワインベルグの法則
 

大きな集団で対立遺伝子A1の割合がp1で、対立遺伝子A2の割合がp2であるとすると、一世代任意交配したとき、遺伝子型の頻度は次のようになり、この頻度はこのまま続く。

遺伝子型
頻度
A1A1
p12
A1A2
2p1p2
A2A2
p22

 


・遺伝的浮動
  生物集団が有効であるとき、これが原因となって生ずる遺伝子頻度や遺伝子型の変化をいう。

・自然選択
 

ハーディー・ワインベルグの法則は、各遺伝子の接合体が、次世代の配偶子のプールに等しく存在するという条件が不可欠である。しかし、実際には、生存力や繁殖力の違いにより選択が起こる。


・選択と突然変異のつり合い
  定方向の選択は、遺伝子頻度を時には速く、多くの場合はゆっくりと変化させ、有利な遺伝子は不利な遺伝子を置き換える。それでも、どんな種にもその自然集団を調べればわかるように、常に多数の有害遺伝子が存在し、その主な原因は突然変異である。新しい有害遺伝子は突然変異で生ずるが、それは選択で除去され、結局これらの二つの過程がつり合って、新しい突然変異の出現率と選択による消失率とが等しくなる。


生殖細胞

・生殖細胞
  胎生期間中、始原生殖細胞が、生殖細胞となり、雌では卵原細胞へと分化し、第一卵母細胞となった後、第一減数分裂前期で停止する。一方、雄では、精原細胞となり休止する。性成熟に達すると第一卵母細胞は減数分裂を再開し、極体を放出して第二卵母細胞になった後、第二減数分裂前期で排卵される。精原細胞では、A型、中間型、B型を経て精母細胞となった後、第一精母細胞となり、第一、二減数分裂を行い、第二精母細胞、精子細胞になる。その後、変態を行い精子となり受精能を獲得する。

・ゲノムの刷り込み Genomic impriting
  精子由来と卵子由来の対立遺伝子が、配偶子形成の過程で何らかの機構で区分され、子における遺伝子発現時期や量が異なる現象。

※カタナックが行った実験
大11染色体と第13染色体がロバートソン型転座を起こしたマウスで、配偶子形成のときに染色体不分離が起こると、第11染色体を二本持った配偶子と、二本とも欠いた配偶子が形成される。それぞれが受精することにより、相同染色体で二本とも卵子由来、あるいは精子由来のマウスが生まれる。それぞれの表現型は染色体構成がフルセットにも関わらず、正常マウスと異なっている。これは、第11染色体にある遺伝子の発現機構が、精子由来か卵子由来かで異なっていることを示す。

・ホメオボックス遺伝子
  他の遺伝子の発現を制限する遺伝子。ベイソラックス遺伝子群(BX-C)とアンティペディア遺伝子群(ANT-C)の配列に対応して染色体上にクラスターを形成している。


免疫遺伝

・免疫グロブリン
  H鎖とL鎖からなり、さらにそれらの末端で、可変領域と定常領域にわけられる。可変領域中には、超可変領域が存在し、ここで抗原と結合する。

・遺伝子の再構成
  免疫グロブリン遺伝子は、転写される時、任意に並んでいた遺伝子が再構成されて、mRNAに転写される。これにより抗体の多様性が生まれる。

※ 鳥類において遺伝子の再構成は胎生期に一度起こるのみで、ファブリキウス嚢で、偽遺伝子と遺伝子の置換を引き起こし多様性を保持している。

・主要組織適合性複合体遺伝子群 Major histocompatibility complex : MHC
 

蛋白抗原のペプチド断片をT細胞に提示する。

特徴

  • MHCは一つの染色体上の遺伝子群である
  • すべての脊椎動物に存在する
  • MHCは多数の対立遺伝子を有する
  • 母親と父親からMHCを受け継ぎその遺伝子産物を発現している
  • 3つのグループに分類できる
MHC T:
ほぼすべての細胞に発現
U:
Bcell、マクロファージ、樹状細胞など一部の細胞に発現
V:
その他 (補体など)