動物繁殖学

 

春機発動期:

生殖器の各部は、出生後の体の発育とともに大きさを増し、組織学的にも変化して、やがて生殖活動が可能となりはじめる時期を迎える。この時期を春機発動期といい、雄では精細管に精子が出現する時期、雌では初回発情の時期と定義される。

 

夏季不妊:
熱によるストレスにより、精巣及び精巣上体の機能が減退し、精液性状に異常をきたし、不妊となる症状。

 

スタンプスメア法:
馬の子宮外口部に直接小型のスライドグラスをあてて、そこについた粘液の肉眼的性状を顕微鏡下で確認し、性周期を診断する方法。

 

異常発情:

栄養状態や年齢、あるいは飼養管理上の欠陥などのストレスにより、性腺刺激ホルモン分泌に異常をきたし、正常な発情が起こらない状態をいう。例として、発情期間が長期間にわたる持続性発情、交尾欲を発現しない鈍性発情、排卵を伴わない正常様発情、徴候がはっきりしない微弱発情、発情期間の短い短発情、妊娠初期に起こる裏発情などがある。

 

フラッシング:
交配前に栄養水準を上げて、排卵率を高めること。豚や羊などにおいて、確実な受胎、双子生産率の向上が期待できる。

 

不動反応:

発情とともに現れる雌の発情徴候の一種。雄の求愛に対してじっと静止し交尾を受け入れる姿勢をとる。ブタでは、雄許容期に腰部を手で圧すると、静止して交尾を受け入れる姿勢を取る。

 

クラッチ:





産卵鶏は毎日1個ずつ産卵するが、一定の期間産卵すると(連産)、1日休産し、再び連産と休産を繰り返す。この1回の連産をクラッチと呼ぶ。1クラッチの産卵数は数個から200個以上の範囲で異なる。一般に、クラッチの長さは、老鶏になるほど短くなる。1クラッチ内で第1卵は早朝に産卵される。以後の産卵時刻は毎日少しずつ遅れ、最後の卵は午後遅くに産卵される。1日休産の後、再び第1卵が早朝に産卵され、次のクラッチがはじまる。このように産卵時刻が変動するのは、下垂体前葉から分泌されるLHの分泌時刻が遅れ、それに連動して排卵時刻も遅れるためである。産卵時刻が午後の遅い時間になると、LHが分泌されないので、排卵が起こらず、クラッチ間の休産日が生じると考えられている。

 

季節繁殖:



繁殖行動が季節により活発になったり停止したりすることを季節繁殖という。繁殖季節のある動物を季節繁殖動物といい、季節繁殖動物の性腺の活動は、繁殖季節が終わると低下し、次の繁殖季節がくるまで停止する。ウマやロバは季節繁殖動物で、春〜夏の日長時間の長くなる時期に繁殖季節を迎えるので長日繁殖動物という。一方、ヒツジやヤギは秋〜冬の日長時間の短くなる時期に繁殖季節を迎える短日繁殖動物である。これに対し、明確な繁殖季節をもたないウシやブタは周年繁殖動物と呼ばれる。

 

ノンリターン法:

家畜の妊娠を確認する方法の一種で、発情が回帰しなければ妊娠したと診断する方法。この方法は、特別の技術や設備を要しないが、畜主が発情を見逃したり、早期胚死亡が起こっても発情が回帰しないことがあり、信頼性は低い。

 

馬の卵巣:


一般的な家畜の卵巣は、中心部が髄質(血管帯)で表層部が皮質(実質帯)であり、卵巣門近くを除き、表面上皮と呼ばれる立方ないし扁平な単層上皮で覆われている。これに対し、馬の卵巣は中心部が皮質で表層部に髄質があり、表面上皮で覆われているのは一部分だけである。排卵は、その表面上皮からのみ起こり、凹みがあることから排卵窩と呼ばれる。



ウシの繁殖
  ウシの繁殖周期は17〜24日で平均21日。未経産のウシでは20日のものが多い。そのうち発情時間は18時間前後と他の家畜より短く発情終了後10〜12時間後に排卵が起こる。繁殖供用の開始時期は、品種によって差があり、温帯種や乳用種は早い。ホルスタインでは春機発動に達した10月齢から、さらに5〜6ヶ月後からを、繁殖供用開始時期としている。妊娠期間も、品種によって異なるが、278〜292日である。産子数は、通常一子だが、まれに多胎となり、妊娠後期で早産となることが多く、2頭の胎子が異性である場合、両胎子の絨毛膜血管の吻合により、血流の混合が生じる。その結果として、雌胎子の生殖器の発育が阻害されて、フリーマーチンとよばれる不妊雌ウシが生まれる。
雄の繁殖供用開始時期は、ほぼ雌と同じで、供用期に達した雄牛からは、1日数回精液を採取可能だが、毎週2回程度、規則正しく採取するのが理想である。雄の繁殖能力は日長差に影響を受けることはないが、温度の影響を大きく受け、温帯種では、30℃以上になると精巣および精巣上体の機能が減退し、精液性状が不良となる。これを夏季不妊という。
家畜牛の人為的管理として、多頭飼育経営における授精業務の簡易化を目的とした、性周期の同期化、また、優良な形質をもつ牛の開発を促進する、人工授精や、受精卵移植、体外受精といった技術も確立されつつある。

 

ブタの繁殖
  ブタの発情周期は、18〜24日で平均21日とウシとほぼ同じだが、妊娠期間は109〜120日と短く、産子数は約10頭である。ブタの受精卵は、着床までの間、両子宮角内を遊走し、授精後12日目頃には左右相互の子宮角に均等に分布し、着床する。この時、胚が4つ以上子宮内に存在しないと、妊娠は維持されず、流産する。
雌ブタの繁殖供用開始時期は、6〜11ヶ月齢で、雄許容期には、落ち着きがなくなり、雄の求愛に対してじっと静止し、交尾を受け入れる不動反応を示す。排卵は発情終了近くに起きる。雄の繁殖供用開始時期は、雌とほぼ同じである。
ブタにおいても、人工授精等の技術は開発されてはいるが、受胎率が悪い。さらに、多胎で妊娠期間も短いため、その付加価値は低く、あまり一般的ではない。

 

ウマの繁殖
  ウマは、季節繁殖動物で、春から夏にかけて繁殖期を迎える長日繁殖動物である。雄雌とも36ヶ月齢頃からを、繁殖供用開始時期としているが、競走馬などでは、経済的理由などからもう少し高齢になってから供用が開始される。通常単胎であるが、まれに双胎となり、死産や流産になる確立が高いため無事生まれてくる双子は少ない。また、連産は可能ではあるが、受胎率は下がり、流産発生率は上がる。
ウマの発情周期は15〜30日と幅広く、早春で長く、夏で短くなる傾向がある。発情期には、雄が近づくと両後肢を開き、腰を屈めて尾をあげ、陰部を開閉して陰核を露出するライトニングが見られる。さらに、特有の鳴き声を発したり、食欲の減退、頻繁な排尿などが見られる。ウマの発情持続時間は4〜10日と他の家畜と比べ長い。これは、ウマの卵巣の構造が他の家畜と異なり、内側が皮質、外側が髄質になっていて、排卵が排卵窩と呼ばれる一定の場所からしか行われないため、卵胞の発達や、卵胞の排卵窩への移動に時間がかかるのが原因である。
通常動物は、妊娠期間中、黄体から分泌される黄体ホルモンにより妊娠を持続するが、ウマは妊娠100〜150日で黄体がすべて消失し、黄体ホルモン分泌源は、胎盤に移行される。さらに、妊娠40日前後から子宮内膜杯よりPMSGという妊馬特有のホルモンが分泌され、これも妊娠の維持に関わっている。このホルモン分泌源移行期に、黄体ホルモンが不足し、流産する可能性が高くなる。この対応策として、移行期にエストロジェンを連続投与し、黄体機能を延長させてやるとよい。妊娠期間は330〜345日である。