鴨長明

1155?〜1216

作者 鴨長明(1155?〜1216)。下鴨神社の禰宜(ねぎ)、鴨野長継(ながつぐ)の次男。18、9で父の死にあい、家職を継ぐ望みを失って、以後は和歌・管弦に親しみ、地下歌人として活躍する。和歌を俊恵に学び、後鳥羽院に認められて、和歌所寄人となる。『千載集』に一首、『新古今和歌集』に十首入集。五十余歳で出家し、大原で隠遁生活を経て日野外山に移り、方丈の庵を結んで『方丈記』『無名抄』『発心集』を著した。

成立 奥書によると、1212年(建暦2)三月晦日ごろの成立。

内容・構成 内容からおよそ四つに分けられる。
         序章では、人の世の無常を川の流れによせて、詠嘆的な調子で語り始める。次に二章では、彼の経験した天変地異、社会変動が克明に描き出され、得に福原遷都の箇所は詳細な見聞録をなしている。三章では、身近へと話題が移る。若いころからの自分の住居の転移を述べた後、現在の住居すなわち方丈の庵の様子を,一つ一つの道具立てにまで言及して述べ、その閑寂な草庵の快適さ、意味深さを嘆美する。しかし、終章では、一転してその方丈の生活にさえ疑問を抱きかざるを得ない自分であることがあらわにされ、その矛盾に対し自問自答を試したあげく、「心ざらに答ふることなし」として黙してしまう。

方丈記の本文

ゆく川の流れは 絶えずして、しかも、もとの水に あらず。 よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え かつ結びて、久しく とどまりたる例なし。 世の中にある 人と スミカと、またかくのごとし。

流れ行く川の流れは絶えることがなく、それでいて、流れはもとの水ではない。よどんだ所に浮ぶ水の泡は、消えたりできたりして長い間同じ状態でいることはない。世の中に存在する人間や住居も、これと同様である。

<第一学習社カラー版新国語便覧より抜粋>