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装甲騎兵ボトムズ

アニメ:1983年〜1984年 テレビ東京系で放映
漫画:コミックボンボン1983年〜1984年連載


まえがき

大ヒット作品・・・である。機動戦士ガンダムと比較するとなると、認知度・人気度とも勝るとはいえないかもしれないが、機動戦士ガンダムはヒーロー物の代表格で、装甲騎兵ボトムズは同じロボット物であってもポジショニングが違う。で、装甲騎兵ボトムズは玄人好みの超大作・・・と評することができる。何せ、ストーリーが重い。とにかく重い。第二部にあたるクメン編なんてどうみてもベトナム戦争を連想させる。同アニメの当時の主な視聴者は子供たちであって、あの複雑なストーリーなんて絶対に理解出来ていなかったはず。単に人型ロボットが出てきてかっこよくドンパチやる・・・。我々子供達はそれだけを楽しみに見ていたのだと思う。

小生もこの歳になって同作品の漫画(講談社2003年12月〜2004年1月全四巻)とDVD全集を視聴したが、ボトムズの全ストーリーを一定レベル以上に理解するのに複数回の視聴を要した。何しろ最初っから主人公のキリコがいったい誰を相手に戦っているのかすら良くわからない。治安警察とメルキア軍の関係、あるいはギルガメスとはそもそも何かとか、メルキア軍と対峙しているバララント軍はクメン王国とアッセンブルEX10にどのように関与しているのか?など、基本的なところからしてとにかく迷う、迷う。大ファンであってもきちんと背景詳細まで語れちゃう人はそうはいないと思う。

装甲騎兵ボトムズはOVAを含め、とても長い作品である。「みゆき」のように事件毎に一個一個検証していたらマジで日が暮れてしまう。なので、面白可笑しくなるように、ずらずらと好き勝手なことを綴ってみた。ご勘弁を!

因みに、この作品は一旦見出すと初代機動戦士ガンダム以上に嵌る(ファンであれば絶対そうなる)。このところ、多くの昔のアニメ作品がDVD化されて来ているが、しぶとい人気を博するのがこの装甲騎兵ボトムズで、大人になっても楽しめる玄人さが受けているのかもしれませんね。


キリコ=キュービーは何者か?

他の大作アニメなんかにも見られるように、作品中最も大きなポイントが、グレー領域のままになっている。装甲騎兵ボトムズのTV作品を慎重に辿っていくと、”大まかな答え”として、キリコ=キュービーは「異・能・者」であり、彼と同様の能力を持った先駆者「ワイズマン」が自身の後継者として選んだ男との位置付けになっている。では、果たして異能者とは、キリコ=キュービーとは何処から来たのだろうか?人間なのかそれとも違う生命体なのか、それとも人工的に作られたものなのか?・・・。残念ながら、この疑問を完全に解消してくれるシーンは作品中に出てこない。一時、PS(パーフェクト・ソルジャー)ではないかとの疑いもあったが、ジジリウムを浴びる必要の無い彼には当てはまらない。時代背景からしても新しいタイプのPSでもない。後に発表されたOVA作品の中で「ネクスタント」と呼ばれる人工の補助頭脳を持つPSの新種にあたるアーマノイドが開発されているが、勿論これとも違う。

「野望のルーツ」なるOVA作品の中で興味深い記述が一箇所ある。レッド・ショルダー部隊の生みの親であるペールゼン元帥は、当時最強の精鋭部隊(後のレッド・ショルダー)を編成するためにあらゆる戦線における兵士達の戦闘内容、配属位置から計算した生存確率などを調べ上げて驚異的な数字を残す人材を探求していた。彼の計算では、キリコ=キュービーのそれは250億分の一の確率で生まれる人材に当たるものだとの解を導き出すに到った。そして、キリコ=キュービーに見られる異能者としての超人的な能力は、DNAがもたらした先天的なものであると確信し、その実態を「異・能・的・生・命・体」と呼んだ。
然るにキリコ=キュービーは250億分の一の確率で生まれたある種の奇形=一般人と比較して戦闘能力、肉体能力が異常に発達した異能的存在なのだと。現に、キリコ=キュービーの肉体回復能力は尋常で無いことがTV作品のなかで随所にみられる。戦闘で負傷した時のキリコの回復能力はいつも周りの人を驚かせたし、サンサ編でフィアナ(プロト・ワン)がキリコの治療にあたった時には、通常の人間では考えられない回復能力の持ち主である(3倍以上の回復能力と描写している)との医療記録を残した。更に付け加えるのなら、ペールゼン元帥に銃で撃たれ、キリコの心臓が停止し、死亡が確認された事件があったが、数時間後に自発的に心臓が鼓動を再開して甦ったという、常人では考えられないこともやってのけた。

ここまでの説明で、キリコ=キュービーは偶然的にこのようなスーパー能力を備えて生まれてきた者と整理できるが、払拭できない点が一つある。ペールゼン元帥が若き日に見たカプセルの中の”母親の胎内にいる頃のような赤ちゃん”の存在である。果たしてあれはキリコだったのだろうか?そうだとすれば偶然ではなく必然的にキリコは生み出されたことになる。・・・が、このシーンの説明が一切無いためその真意は闇のままである。PS開発初期の頃のものと解釈できないことも無いが説明が何もないため検証のやりようが無い。もし、最後にこのシーンが流れなかったら250億分の一・・・の説明がキリコ=キュービー生誕の答えになるのだが、原作者の意図は果たしていなかなるものだったのか・・・。DVDコンプリート版のインタビューの中で2005年以降もボトムズ続編製作の可能性はありうると語っているので、何れ詳しく解明される時がくるのかもしれない。


異能者とニュータイプの違い

ある意味、非常に興味をそそる議題である。概念的には、機動戦士ガンダムのニュータイプは人の覚醒(もしくは思惟)、装甲騎兵ボトムズの異能者は先天的に持って生まれた超人のことである。言い方は違うが目指している方向性は同種のものといえよう。

しかし、ニュータイプはあくまでも覚醒がテーマであり、先天的ではあるがその能力は生まれてすぐに見分けが付くものではない。肉体的に優れた能力は無く、予知能力に基づく戦闘能力が主眼となっている。マチルダ大尉が述べたように、一種のエスパーともいえるだろう。存在した数も相当数に上り、人工比率からして十億人に数人程度か?

一方、異能者は肉体的能力も生まれながらにして備わっている。心臓が止まっても復活出来るし、肉体的能力は凄まじい。存在確率は250億人に一人程度。先駆者の「ワイズマン」を含めたとしても作品中に二人しか存在しない。TV作品の続編である「赫奕たる異端」編の背景となっている32年後においてもキリコ同様の異能者は現れていないようだ。因みにワイズマンは3,000年も生き延びた。次々とニュータイプが現れる機動戦士ガンダムとは明らかにタイプを異にする。

機動戦士ガンダムの「強化人間」と装甲騎兵ボトムズの「PS(パーフェクト・ソルジャー)」の概念については同じ類のものといって過言ではないだろう。ニュータイプ、異能者の能力と同レベル、あるいはそれ以上の完全なる戦闘マシーンを人工的に生み出そうとして開発された事が共通点だ。「赫奕たる異端」編に出現する「ネクスタント」は人間を基にしアーマノイドに補助頭脳を植え込んだものらしいが、どう見てもターミネーターのパクリに見える。行き着くところは大体皆同じという訳か・・・。


キリコ=キュービーの戦闘能力

作品中、キリコの戦闘能力はどうやら一番ではない。レッド・ショルダー部隊の中でも飛びぬけて優れていたとの説明があるが、”純粋な”AT格闘戦では何度か負け損なっている。生き延びてこれたのは戦闘能力以外に偶発的な能力も備えている(ペールゼン元帥の説明による)からといえる。純粋なAT格闘戦であればイプシロンに負けたであろう。しかも、イプシロンはプロトワン(=フィアナ)と違って完全なるPSと位置付けられていたが、プロトワンへの感情移入が存在してしまったことを考慮すると、彼もまた完全なる冷酷無比な戦闘マシーンとは言い切れない。キリコはその”不完全な”PSであるイプシロンより戦闘力が劣るレベルなのだ。

それと、OVA作品で登場する改造人間ラダァ・ニーヴァ。こやつには完全に負けていた。ル=シャッコの援護を受けてなんとか倒したが、純粋な戦闘能力では圧倒されるくらい劣っていた。キリコ一人で立ち向かっていたら確実に敗北を喫したであろう。それからもう一人、これも普通の人間ではないが、「ネクスタント」のテイタニア・ダ・モンテ=ウェルズ。彼女がキリコに感情移入することなく、痛みをコントロールできるモードにちゃんと切り替えて戦っていたのなら、キリコに勝てたはず。それもATに乗らずにアーマノイドそのままの体で。最終的にはATに乗り込んでキリコと戦うことになるのだが、彼女自身もそのからだのままで十分戦えるのにATに乗って対決することに疑問を投げかけていた。にもかかわらず(くどい説明文でゴメン)、純粋なATの格闘戦でもキリコは負けた。勝ち残れたのはまたしても”偶発的な事故”に助けられた事よる。話は戻るが、この意味でキリコは神に選ばれたもの=異能者とも定義できるのかもしれない。作品中の異能者の位置付けはこのような必然的な奇跡を身に付けた者だからだ。

最後に、ATが何機も入り乱れる大戦闘状態では普通の人間のATからの攻撃をくらってキリコのATが大破するケースが結構あった。彼はやられる度にスコープ・ドックを乗り換えている。キリコの戦闘能力は凄まじいものに変わりは無いが決して飛びぬけたスーパーマン的なものではないらしい。対して機動戦士段ガンダムのニュータイプは覚醒した後は一般人のミサイルなんてどんな状況であろうともかすりもしないところを見ると、秀でている能力の差に大きな違いがあるようだ。この辺はニュータイプとは完全に違う点だ。


アストラギウス銀河はどこにあるのか?

装甲騎兵ボトムズの部隊はアストラギウス銀河。外周から中心部まで約13万光年におよぶ渦状銀河であり、銀河各地に広く人類が分布している。同銀河系の中心部に近い惑星クエントにて高度な古代文明が発達し、そこから派生した文明が銀河各地で勢力を拡大、後のメルキアとバララントの二大勢力が分割統治している。

では、このアトラギウス銀河はいったいどこにあるのか?

答えは意外と簡単で、このアトラギウス銀河は我々の銀河と全く繋がりのない架空のものとして設定されている。従い、我々の宇宙には存在しない。アストラギウス暦も西暦とはまったく関係はない。希望的観点から話をすると、このアストラギウス銀河は我々の銀河系からウン十億光年離れたどこかに存在していて、何百年後の近未来のストーリーであって欲しいと思うものだが、アトラギウス銀河の存在自体が架空なので、装甲騎兵ボトムズの世界には地球すら存在しない事になる。そういうものだとして見るしかない。



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