てなわけで、到着したのは昼前であっただろうか。道路も渋滞などの混雑はなく気持ちよく到着。「乗り放題パス」を購入し、写真を撮ったような記憶がある。あいにく手元にその実物がないため表示させることは出来ないが、そのパスを手に我々は富士急ハイランドを満喫させようと胸をときめかせていた。

園内も込んでおらず、10分程まつことで富士急の大目玉、フジヤマを体験することが出来た。調べたところによるとギネスに4部門程で載ったことがあるコースターであり、それなりのスリルは感じられた。最高到達点79m、最高落差70mを65度の傾斜で時速130kmの速さを体感する事ができる。高さ、といえばヨウスケは高所恐怖症の持ち主、終始目をつぶっていたのであろうか、目の前に座っていた彼の首はかなり揺れていた。

絶叫マシーン系には他には「レッドタワー」という高さ52mの地点から時速65kmで4Gの重力を体験できるフリーフォールマシーン。個人的にはとくに気に入った乗り物で、敷地と金さえあれば
裏庭に作りたいと思うほどだ。実際このアトラクションは数回乗る事ができた。


はっ!この旅でもう一つ欠かせないとても重大な要素があった。

それはなんといっても、寒さである。忘れてはならないのは、既に11月であったこと。クリスマスや大晦日等のイベントの代名詞が出てきてもおかしくない時期だ。まさに冬のプロローグ。そんな季節に時速100kmを超す絶叫マシーンなどにのって寒くならないわけがない。しかもヨウスケは高所恐怖症。「冷える」要因がこれで二つあるわけだ。

なのに、我々が次に挑戦したアトラクションが、グレート・ザブーン。

名前からして、やばい。察しの通り、ボートに乗って、大きな傾斜をくだり水溜りに突撃する乗り物だ。ネーミングのセンスのみじんも感じられない乗り物をこの時期に並ぶことなどもちろんない。他の客といえば、言葉がわからずついならんでしまった観光客と隣に我ら5人組、「馬鹿レンジャー」

しかし、さすが我が国ジャパン。お客様サービスには心がけている。頭から被れるおかっぱらしきビニール袋を着けている客を発見。

「なるほど、これなら衣類が濡れることはない。」

しかし乗り場までいってみると、ビニール袋は商品とされ販売されていた。この辺もさすが日本だ。値段は忘れたが、

「ゴミ袋同然のものに金など払えるか!」

と、使用済み用のゴミ箱からビニール袋を収集。ゴミ袋同然の物を入れる箱ならまだいいのだが、ゴミ袋同然の物の「ゴミ箱」、から手にいれた袋は完全なるゴミ。

「ま、一回しか使われていないものだからいいか。」

気楽な我らはそれを頭からかぶり、これで準備は万端と思いきや、ボートが動き出してから様々な問題が待ち受けていたのだ。

我々がかぶっているのは「使用済み」の袋。つまり、既に濡れているわけだ。

不覚。

しかもどっちが裏で表かもわからない。反対にでも身に着けてしまっては、自ら自分の衣類をぬらしている事になる。本末転倒である。ヨウスケの場合はなおひどい。ビニールに顔や手を通す穴がどれだかわからない。結局必死で身にまとうが、ヨウスケのビニール袋がやぶれていることが判明。

焦り狂うヨウスケを目の前に他の4人は大爆笑。しかしすぐに半泣きのヨウスケをよそにもう一つの疑問が頭をよぎる。

「私は大丈夫だろうか」

そう、家族とはいえこの状況だと自分が一番大事。ヨウスケの現状はかわいそうではあるが、この際知ったこっちゃない。

「巻き上がる水はどの角度でボートにはいってくるのだろうか。」
「最初の衝撃のあとにくる二番めの水しぶきに注意」

とかわけのわからない憶測を立て始める。ここでオレは「グレート・ザブーン」の攻略方に気づく。それは襟を閉めることだ。首もとの隙が一番危険性を伴うであろうと確信した自分は襟を持つ右手の力を緩めることはなかった。そしていざ落下。

これがまた以外と怖い。ローラーの上を走るボートの音は迫力があり、迫る水たまりを前に投げ出されるのではないかと不安が募る。衝撃とともに水しぶきがあがる。予想していた2打目も受けとめ、ボートはやがて静粛に。だが聞こえてくる笑い声、皆多少は濡れてもこのアトラクションは楽しかったようだ。「楽しかったね」と皆の顔を見回したその瞬間オレの頭は吹っ飛んだ。

そこに一人笑っていない暗い表情を浮かべたおっさん(ヨウスケ)がいた。やはり破れたビニール袋では自分を守ることはできず頭からおもいっきり水をかぶったみたいだ。水滴がしたた落ちるめがねはズレ、天然パーマのかかった髪の毛はウェーブを欠き、異常なほどにずぶ濡れ。そしてかわいそうな彼を覆うのは破れた「ゴミ袋」。

彼には失礼だが、私がそれを見て一番最初に思い浮かんだイメージは深夜の新宿西口であった。格好ばかりか彼の表情がそれを物語った。他のメンバーを見渡しても罪悪感と、また笑いを提供してくれたヨウスケに感謝の気持ちが混ざり合った複雑な笑みを浮かべている。やはり同じ場所をイメージしたのであろう。

「、、、やっぱり買っとくべきだった。」彼はそう思ったに違いない。

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