
「土俵でアミーゴ」―なんてエキセントリックで素敵な響きであろう。この言葉を耳にした瞬間、俺の脳天にある種の衝撃が突き抜け、体中に電流が駆け巡った。ビビビっ、松田聖子が歯医者のダンナと結婚した会見のセリフが見事にマッチした。
「土俵でアミーゴ」とは7月24日にNHKが深夜1:47から約1時間に渡って放送した番組タイトルである。俺は夜中に寝付けずにチャンネルを回しており、そのとき偶然この番組と出会ったのだ。
内容は部員が集まらず、常に土俵際だった広島大学相撲部に4月、メキシコ人の相撲部主将が誕生した。メキシコから来た留学生セサル・ピエドラスさん35歳。存続が危ぶまれる広大相撲部に「日本人の男子部員を勧誘し相撲の魅力を伝えたい」というセサルさんの奮闘記である。
ステキ、ステキすぎる!!そう、『外タレ』を謳っている当サイトにおいて到底見逃せないネタであり、何より相撲という日本の国技を外国人が守ったという「黒船万歳ストーリー」にはご飯が何杯あっても足りません!
ブラウン管にかじりついて離さない俺は放送中の約1時間まばたきを3.5回しかしなかった(んなわけねえよバカヤロー!!)。まあ、それくらい内容の濃いいい番組だった。
広島大学の部員は主将のセサルさん(メキシコ出身)の他に、副主将のマルタ=アルカンタラさん(女性、メキシコ出身)、広報のアントニオ=レヒドール=ガルシアさん(スペイン出身)、コーチのブーレノワール=アブドゥラさん(モロッコ出身)の4人。
『土俵でアミーゴ』ではセサルさん、アントニオさんが勧誘活動するシーンから始まる。まわし一丁で大学キャンパスを練り歩く二人。他のサークルの勧誘が上手くいく中、二人は大苦戦。彼らは勧誘のビラを手に持ち一生懸命勧誘をする。でもビラはもらってくれない。他のサークルのビラがどんどん貰われていく、寂しげな表情の二人。
その画がとってもシュール、まるでコントのよう。
いやいや、俺は馬鹿になんてしてない。俺はその姿に我が外タレ一家の勧誘活動をシンクロさせて見ていたのだ。
誰もビラをもらってくれない、勧誘の為に話し掛けてもまるで汚いものを見るかのように一瞥し、そして無視を決め込む女性達…彼らの気持ちは痛いほど良く分かる。よく分かるぞバカヤロー!!
しかし、彼らは「もういっちょ!」とやられても関取に向かっていく幕下力士の表情をしていた。『なぜだ、部員獲得の勝算はあるのか?』と俺は思った。そう、新入部員の集まらない彼らは最終兵器を隠し持っていたのだ。稽古見学を兼ねた「ちゃんこ大会」である。
20人前のちゃんこを用意して、けいこに汗を流す部員達。勧誘活動の大一番だけに緊張しているのかけいこに身が入らない。なかなか見学者は来ない・・・。
俺は心の中で叫んだ。「ここで誰も来なかったら、あのちゃんこ鍋はどうするんだ!!」
そうなのである。誰も見学者が来なかった場合、部員4人そこそこで20人前を平らげなければならないのである。画像を見れば分かるが、部員のアントニオさん(画像3番目)は細身の体。相撲部とはいえ、ついこの間相撲文化に触れた外国人である、いくらなんでも20人前は無理だろう。でも俺は心のどこかで誰も来ない結末を期待してしまった。
だって細身のスペイン人の彼がまわし姿でガツガツちゃんこをかっこむ姿なんて、おいしすぎるだろ!、『モウ食エナイス、無理スョ』なんて言いながら、『ショウガナイダロ、誰モ来ナインダカラ…』なんてやりとり想像しちゃうだろ!
まあ、結局のところじわじわ見学者も集まって俺の心配は杞憂に終わったのだが、集まった見学者がタチ悪い。相撲したいから、相撲に興味があるからなんて奴はおらず、何を勘違いしたのか国際交流研究会だと思って見に来た輩ばかりだったのだ。
その構成は留学生が半分くらいと、後は手軽に異文化交流できると思ってきた学生。そこそこの人数が集まってちゃんこの心配はなくなったが
いくらなんでもひどすぎるだろ!お前ら相撲部はNOVAじゃねえんだよっ!!
そんな連中でも見学者は見学者。セサル主将をはじめとする部員一同は大いに喜んだ。相撲部をアピールするチャンスだとばかりに稽古を披露する。
俺はなんて心の広い人たちだと思った。
ちゃんこ大会の甲斐あってか、彼らに待望の新入部員が入った。外タレの新歓活動で苦労を知っている俺は素直に喜んだ。よくやったセサル、よくやったアントニオと!。なんたってその新入部員も留学生なんだよ、しかもベトナム人。
オチまでつけてくれちゃったよコノ相撲部!でも本当によかった。
俺は番組が終わってから広大相撲部のファンになった。そして我が専修大学落語研究会の将来を考えた。落語も日本の文化だ、どうしても外タレ一家とダブらせてしまう。外タレ一家も部員不足に悩まされる時代もそう遠くないだろう。今でも正直土俵際だ。一人の留学生が部を救って『リアル外タレ一家』を作ってくれるのだろうか?はっきり言って心配である。今から黒人噺家のスカウトを考えた方がいいだろう。
最後に個人的希望を込めたメッセージ。広島大学相撲部よ、いつまでも外タレ相撲部としてがんばっていって欲しい。
第三回以上。