今からってか最初に公開するのは、昨年(2001年)のNHKコンクール用に作った
作品です。と言ってもしっかりボツになりましたけどね・・・(苦笑)
まあ、とりあえず読んでみてくだせぇ。感想は掲示板やメールなどなどに・・・
時が止まった日
(ゆか)高校1年、入学してから間も無いこの日、今日私の中ですべての時が止まった…
母「ゆか、ゆか」
(ゆか))意識が遠のいていく中、すがるような母の声が聞こえる…
医者「やはり意識が戻らない事にはなんとも言えませんねぇ。」
(ゆか)反対側から聞き覚えの無い声が聞こえた…。意識!?私は思わず目を開いた。
母「ゆか!大丈夫なの?」
(ゆか)私は何気なく微笑み、うなずいた。
医者「意識が戻ればもう大丈夫でしょう。」
ゆか「お母さん、どこにいるの?ここはどこ?」
母「ゆか、あなた…」
タイトルコール<時が止まった日>
(ゆか)この後私は全てを母から聞かされた。ここは病院だという事。交通事故に巻き込まれて今まで
意識が無くこのまま回復しなかったら危なかった事。そして、私が光を失った事も。
医者「頭を強く打ったようですから後遺症として視力が失われたものと思われます。他に異常は発
見できませんのでこのまま退院してもらって大丈夫でしょう。」
母「はい、先生ありがとうございました。」
(ゆか)こうして退院の日がやってきた。この日私は初めて自分に視力が無くなった事の実感がわいて
きた。人が歩く音、車が通る音、犬の声、全てが聞こえるのに私の視野に入る事はなかったから…。自分だ
けが世界から隔離されている、自分だけが時が止まっている、もちろん入学した高校にはもう通学することはで
きない。そんな悲しい事実をまのあたりにして一人で泣いた夜もあった。そんな日々を過ごしていた私のもと
に手紙とともに一本のテープが届けられた。
誠「突然のこんな手紙…と言ったら変かもしれないけど、テープ、驚かせてしまったらごめん。
君は僕のことはあまりはっきりと覚えてはいないと思うけど、僕は同じ中学に通っていた萩原誠ってい
います。初めてじゃないけど一応はじめまして・・・。君が事故で失明した事を友達から知ったんだ。それで僕に
何かしてあげられる事はないかと考えて、考えて、考え抜いたんだけどこんなことしか思い付かなかったんだ。こんな
緊張しっぱなしで勝手にしゃべり続けてるテープだけど返事をもらえたらうれしいな。あっ、返信の住所は封筒に一緒
に入れておいたよ。文通といっても古臭いし、点字を覚えるまででもいいから…」
(ゆか)突然の申し出だった。でも自分を失いかけていた私にとっては嬉しい出来事だった。顔はぼんやりとは覚え
ているけど今の私にはどうでもいい事だし、テープの中の必死に話し掛けてくるあの人の心は十分に感じ取る事がで
きた。そしてこのテープ文通を続けようと思った。続けることで私は 生きる自信を得られる気がしたから・・・
(誠)僕からすれば思い切った挑戦だった。返事がくるかとか、あんなテープいきなりもらってへんに思われないか
なとか、送ったその日の夜は気が気じゃなかった。正直ほとんど眠っていない。でも送ってから丁度一週間たった日
の事だった。
ゆか「テープ・・・ありがとね。あのテープを受け取った時は本当に嬉しかったよ。それにしてもこんな風に一人で
テープに向かって話すのって結構大変なんだね。こうして話しているとなんだか緊張しちゃうし・・・そういえば誠
君も緊張して話してたよね。でもはっきりと気持ちは伝わったよ!・・・」
(誠)なんと返事が返ってきた。話の内容は僕のテープ同様に緊張していたのかあまりはっきりとはしていなかったが、
一生懸命さはひしひしと伝わってきたのでうれしかった。」
(ゆか)このテープ文通はこの後しばらく続いた。何かに挑戦して失敗し、落ち込んでいる時とか、なにかあるとすぐ
私はこのテープを聞き返したりした。そんな時、彼からの衝撃的な告白があった。
誠「実は僕は目の病気で視力がもう無いんだ。君とこのテープ文通をはじめた時はまだかすかには
見えていたんだけどさ。だから僕は海外に行って目の網膜の移植手術を受けて来るよ。君をは
っきりと見るために…。この手術を受ける勇気を君がくれたんだ。君が何事にも挑戦している
時の声を聞いて決心がついたんだ。ありがとう。」
(ゆか)テープはここで終わっていた。そしてそのテープを最後に彼からの返事は来なかった。
でも私はこんな目の見えない私でも人に勇気をあげる事ができる、人に希望をあげる事ができるとい
う事をこの彼とのテープ文通を通じて学んだ。光を失ったあの日、私は何もできないのだと落ち込ん
でいた自分がばかみたいに思えてきた。何もできないのではなく、何ができるのかを探さず、何もし
なかっただけなのだと…。そう決心した私は世界中で困っている人、特に私と同じく光を失った人の
ために働こうと決めた。その人達にとって私の彼みたいな存在になろうと…。もし、あの時私が光を
失っていなかったらこんな明確な決心はできなかったと思う。普通にテレビを見て過ごし、外見で人
を判断し、ただのOL生活を送っていただろう。今の私は光を失った事にむしろ感謝している。そして
しばらく時が過ぎていった…。
後半、感動の結末です!
<電話のコール音>
ゆか「もしもし…」
誠「もしもし、ゆか?」
ゆか「そうですけど・・・」
誠「俺だよ、おれ。」
ゆか「もしかして・・・え?突然どうしたの?」
誠「いっいや、久しぶりに声が聞きたくなってさ。どうだろ、
今から会えるかな?どうしても伝えたい事があるんだ。」
ゆか「え?今から?うっうん、何か久しぶりで何から話したら
いいかわからないけど…」
誠「会ってからゆっくり話そう。それじゃあ今夜迎えに行くよ。」
ゆか「うん、待ってるね。」
<レストランのBGM>
誠「とりあえず、二人の再会を祝してと言っても会って話すのは
これが初めてだよね。まあ細かい事は後にして、乾杯。」
ゆか「乾杯。」
<グラスの当たる音>
誠「あっと、まずテープを送れなくてゴメン。
あの後すぐアメリカに行って手術を受けたからね。
おかげで今ははっきりと見えるよ。」
ゆか「おめでとう、だね。」
誠「ありがとう。手術後はあっちの大学をでたから帰国が遅れて
しまったんだ。でも今はこっちの会社に就職して
働いているよ。」
ゆか「私は国際福祉団体に所属しているよ。私にも世界の人々に
してあげられる事があるんじゃないかってね。
盲人には盲人しかわからない事があるからこんな私でも
役にたてると思ったからね」
誠「偉いな、ゆかは…。」
ゆか「で、伝えたい事って…。」
誠「そうはっきり聞かれると言いづらいんだけど、お、俺と
結婚してくれないか?突然で驚いただろうけど・・・」
ゆか「え!?ま、まあ嬉しいけど、だって私目が見えないから…
ほら、家事とかできないし…。」
誠「いいんだ、そんな事。俺の辛い時や悲しい時にそばにいて
くれれば…。」
その時になぜか私の目から涙がこぼれたのを覚えている。
そしてその時の彼の顔もなぜかはっきりと覚えている。
私の中の時間はあの日に失われたはずなのに、
あの瞬間だけ時間が動いた事が今でも不思議でしょうがない。
そして光の代わりに得たこの幸せを私は今も満喫している…。
でも、私の中の両親の顔は事故当時のままだし、
友達はいつまでたっても高校生のままだけど、
私は光を失ったのではなくて見失っただけなのだと気づいた・・・。
こんな作品の中から、実際の音におこしてみませんか?
そんな台本もガンガンお待ちしています。
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