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L E T T E R S




A Letter from Wisconsin AUGUST, 2002

  
  中村先生

  ご無沙汰しています。
  Summer Programが8/9に終わり、8/14-8/19は日本にいました。日本も暑かったですが、こちらも暑く、湿度が高かったので、それほど苦にはなりませんでした。温度が高いせいか、こちらも雷を伴う夕立が多かったのです。これは当地としては例外のようです。もっとも東京と異なり、夜は湿度が下がりましたから、その分、楽でしたが。

  しかし、こちらに戻ってみると、たった一週間なのに、すっかり秋の気配が濃くなっ ています。もう朝夕は薄ら寒く、暑いのは太陽があるときだけ。まさに去年 の追分です。しかし体の順応は早く、それでもshort sleeveで結構やっています。

  これから一年住むことになるアパートに入りました。値段は少し張りますが、極寒の 中でも歩いて学校に行ける距離で、広さも広く、大家さんも同じ屋根の下に 住んでいるので、安心度が高いのではと思ったりしていますが。 One bedroomですが、 一人二人なら楽に泊まれます。

  Summer Programははっきりいってお買い得でした。日本人の多くは、法律を学びに来 たのに、政治の話ジャンという人が多く、それに税の話が出 たりして、もうあきまへんという人もいたのですが、これほどまでにbusiness transactionにまつわる法(判例法および制定法)、政治 (政策および政治制度)の絡みをうまく説明されたのは経験したことがありません。ま さに、(アメリカの)common law世界における法と政治のダイ ナミックス(税法込み)を完全に理解することができました(??? 主観です)。これは私 が意図している分野にとって格好のイントロと成りました。

  当初、summer programでも単位のくれるところを気にしていたのですが、(極寒の)現 地になれる準備期間とてして位置付けたこの program期で、半分以上留学の目的を達したような気すらする、というのが感想です。 今年は行政法を中心に進めていると聞いていますが、所詮外国との 交易なしでは存在し得ない日本にあって、特に分かりにくいアメリカのbusiness transactionにまつわる法、政治の絡み合いを理解するこ とは、アメリカの法の中心が議会法ではなく行政機関による法である(そのように教 わり、そうかなと思い始めました)ことを踏まえると非常に有益な知見が得 られる場所ではないかと思います。また日本人にとって忘れがちな州法・州政治と国 際取引の関係を理解することも必要です。これは合衆国憲法からはそれほど 読み取れないと思います。

  私の主観では、イギリス法は日本人にとってまだまだ理解しやすいと思います。それ はDiceyののべたように国会主権の原則で政治と法の分離がなされるこ とになっているからです(間違っていたらご教示ください)。しかし「アメリカ法」は まったく別物です。まず「アメリカ法というものはないという」ことから 理解が必要だそうです。Jenningの立場を進めるとこのようになるのでしょうか。

  御託を並べすぎました。

  相内


A Letter from Tokyo
 

  相内様

  お便り拝受。順調な滑り出しで、同慶に存じます。
  こちらは、走り回った7月とは正反対に、8月は、

  山河恋う 机前のわれに 夏果てる  あくび

  でありました。

  そちらは、新学期。大学は活気に満ちていることでしょう。
  キャンパスには新顔があふれ、大学生協は、教材や教科書が山積みされ、広大なグリー ンのあちこちに、学生たちの元気な会話が響く。Hi! How're U doin'? Pret'y G'd! ああ、コーネルで過ごしたときのことが思い出されます。

  さて、お便りのなかで相内さんは、法と政治の分離と混合という対比で、イギリスと アメリカを語られているわけですが、その対比軸に安易に飛びつかずに、今後、アメ リカの連邦や州の法を勉強される中で、まだいろいろな角度から考えを進めていただ きたいと思うのです。

  おそらくsummer programでは、アメリカのビジネス法を、「法を使った政治、政治的 な法」という視点から面白くまとめた講義を受けられたのだろうと想像します。アメ リカのリアリズムを根源とする法道具主義的instrumentalismな発想がやはり感じら れますね。そういう発想がアメリカの支配的空気であることは違いないのですが、そ の空気の中にあっても、法の言説は政治過程での言説とは異なる面を見せるのではな いでしょうか?(Dworkin, Law's Empireを読まれましたか?御一読をお薦めします。) その特殊法的な言説のレベルで、アメリカ的な特徴というのが、何か見受けられるか? それが、裁判所の憲法上の位置付けも全然違うイギリスとの対比を可能にする切り口 に思えるのですが。この点で面白いのが、P.S. Atiyah and Robert S. Summers, Form and Substance in Anglo-American law : a comparative study of legal reasoning, legal theory, and legal institutions (Oxford: Clarendon Press, 1991)です。(むかし、「アメリカ法」で、わたしが紹介したような気がする。)

  ちと、話が堅くなりました。
  むしろ、アメリカにいらっしゃる間は、アメリカ社会を広く体験され、実感されるこ とだろうと思います。Emily Dickinson(1830−86) http://www.bartleby.com/people/DickinsoE.html の詩を一つ御紹介して、終わりましょう。http://www.bartleby.com/113/2045.html

  As imperceptibly as Grief 
  The Summer lapsed away --
  Too imperceptible at last
  To seem like Perfidy --
  A Quietness distilled
  As Twilight long begun,
  Or Nature spending with herself
  Sequestered Afternoon --
  The Dusk drew earlier in --
  The Morning foreign shone --
  A courteous, yet harrowing Grace,
  As Guest, that would be gone --
  And thus, without a Wing
  Or service of a Keel
  Our Summer made her light escape
  Into the Beautiful.

  悲しみのように密かに
  夏は去った
  あまりにも密かで
  背信とは思えないほどに
  とうに始まった夜明けのような
  蒸留された静けさ
  もしくは 自然が疲れ果てて
  退き籠ってしまった午後
  日暮れがいつもより早く
  朝の輝きも様変わりし
  ねんごろで それでいて 心痛む思いのする優美さ
  帰ろうとする客のような。。。
  こうして 翼もなく
  船の便りもなしに
  私たちの夏は軽やかに逃れて行った
  美しいものの中へ

  (野田壽 訳)


  美しい、よい、新学期をお迎えください。

  中村民雄