貢ちゃん
ずっとずっと昔、バブルの頃「貢くん」という言葉が流行った。
女の子にいろいろ貢男の子が増えた。「アッシー」なんてのもあった。
私は「貢ちゃん」だった。
大学1回生の時の話。その時付き合っていた彼氏は一人暮らしをしている
私とは違う大学の学生だった。出身地は確か遠方の人。
私はよく彼の部屋に遊びに行った。
彼の部屋はとっても殺風景で、家具もあんまりなかった。
彼はシンプルな人だったのだ。そこで私は考えた。
昔から一人暮らしをするときは、家具なんかは絶対に無印良品で揃えようと。
なぜかこれだけは譲れないものだった。今となってはなんでと思うけど。
それを彼に熱く語った。彼は快く了解してくれた。
「じゃこの部屋を無印良品で揃える?」
こうまで言ってくれた。今となってはバカップルもいいとこだけど。
まず手始めに、彼にクッションを貢いだ。もちろん2つ。
彼はとても喜んでくれた。私もうれしくてそのクッションを大事にした。
デートの時も必ず無印良品に行くようになっていた。
ここまでくるとどうしようもないアホである。でもその時の二人は楽しかった。
次に彼に抱き枕を貢いだ。彼はとても喜んでくれた。
私は週末になると、彼の家に泊まったり、一緒にいることが多かった。
いわゆる週末婚である。
私達はその週末婚を半年楽しんだ。その間に彼の誕生日があったり、
ふたりの記念日があったり、そのたびに大きな物から小さな物まで
貢ぎに貢いだ。ただ彼の喜ぶ顔がみたくって。
エアソファーを貢いだ時もあった。
そして半年後、週末婚にも終わりがきた。離婚である。
原因は彼にあった。彼はとてつもないやきもち焼きなのである。
束縛とも言う。それで、私が耐えられなくなった。
彼の愛の大きさはまだ10代の私には重かった。
彼ははっきり別れたくないと言った。
私は別れたかった。もう自由になりたかった。
こう書くとかっこいいけど、要するにもっと遊びたかったわけ。
彼も私の気持ちを察してくれたのか、私の顔が脅迫めいていたのか
別れる方向へと話が進んだ。
その時彼は深刻な顔をして私にこう言った。
「別れるならこの部屋の無印良品を持って帰ってくれ」と。
私はわけがわからず口をポカーンと開けてました。
彼曰く、
「この部屋に無印良品があるとお前を思いだすから。」
と。大小あわせてかなりの無印良品を私に持って帰れというのです。
でもその中には彼の愛用品もあるわけで。
それを言うと、
「じゃーもっかいやり直すの??」と。
とりあえず、別れたかった私は彼の部屋の無印良品を持って帰るはめになった
のです。
ただし、私の一番お気に入りのエアーソファは置いていけと言われました。
私はこれを持って帰りたかったです。てかこれが欲しかったです。
なぜだか無意味に無印良品のスリッパまで。使わねーし。
抱き枕も持ってけと。ますますいらねー。
当時の部屋は憧れだった無印良品でいっぱいだったわけですが、
部屋とはミスマッチで。統一性がまったくありませんでした。
教訓:彼のためと貢いだものが後で自分を苦しめる事になる時もある。
貢ぐより貢がれるいい女になれ。
でも何気に今使ってるクッションはあの時のです。
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