私のバイトでは、月に何回か順番でトイレ掃除をやることになっています。

もちろん男性女性別々でトイレ掃除を行います。

学生の時から(小・中・高)トイレ掃除が結構好きだったので、たいして苦ではなかったのです。



私の当番の日がやって来ました。閉店間近、私はいつも通り女子トイレの掃除に

取りかかりました。すると本日男子トイレの掃除係りの中田(仮名)さんが、


「みさき、ちょっと悪いけど、男子トイレの床、磨かなくていいから、水だけ流しといて。」


と頼まれました。


バイトの新人ですし、中田さんとはよく話すので、

「いいですよ。」と軽く引き受けたのです。


女子トイレの掃除を後回しにし、先に男子トイレからしてあげようと思った私は、

男子トイレをこっそり視察してみました。誰かいて、ごめん、見えちゃったあはん。

とか言えないじゃないですか。だから慎重に視察。

やはり閉店間近だからなのか、男子トイレには誰もいませんでした。


男の人が女子トイレに入るととってもドキドキするようですが、

女の人だって男子トイレに入るのはドキドキするもんです。


そして、道具入れを豪快に開け、ホースを引っ張り出し、勢いよく水を流します。

もうバイトも終わるので鼻歌なんかも混じっていたかもしれません。

そして、個室に水を流そうとしたその時、

一つの個室が開きません。押しても引いてもだめ。壊れてるのかなとドアを

ガタガタさせようとして、ドアを改めて見たところ、

鍵がかかっているようで、ドアには人がいることを示す、赤い●になっていました。

さらに、追い討ちをかけるように、中から咳払いが聞こえました。

私は一瞬にして凍りつきました。

そして、「す、すいません」

と言って、ホースを片付け、急いでトイレを後にしました。


数分後、トイレを覗くと、男子トイレはホントに誰もいなくなっていました。

そしてそれを中田さんに話すと、


「・・・・とまあ、こんな感じで、私怒られるかと思いましたよ。」

「そりゃびっくりするな。でもまあ恥ずかしくて、クレームもこないだろ」

「ですよね。男子トイレにまさか女の子がいるなんて思いませんもんねぇ。」

「それにしても、お前ちゃんと確認しろよ。」

「はぁ、でもまさか個室にはいないだろと余裕かましてたんですよ」

「でもまあ、閉店間際だしだいたい人はおらんわな」


ともうすっかり笑い話的な感じで私は中田さんと別れ、家路に着いたのです。


次の日、元気よくバイトに行った私は、店長に呼び出されました。


「みさきちゃん、これはちょっとデリケートな問題なんだけど、
 
 昨日、トイレ掃除で床に水流したでしょ?その時お客様がいたよね?」

「はい。いたみたいですね。気づかずに水流しちゃって。」

「今日ね、そのお客様だと思うんだけど、電話があって、

 『人がせっかく気持ち良くう○こしてんのに、水流しやがって、しかもドア

 を開けようとしたやつがおる。どうなっとんじゃ。』っていうクレームが

 きたんだよ。それで、中田かと思って聞いたら、みさきちゃんだって言うも

 もんだから。」

「(中田ぁ〜ちょっとはかばえやっ)は、はい。私です。怒ってました?」

「ま、まあね。でもお客さんも恥ずかしかったのかなぁ?それ言ったらすぐ

 電話切ったよ。今度から気をつけてね。しかし、まさかねぇ?クスクス」


っと店長にデリケートな問題だからとお叱りを受け、しかも失笑されました。


その日店ではその話でもちきりとなり、その日から私は男子トイレ立ち入り禁止になりました。