文章*その他

top
new
yota_talk
bun
photo
jibun
links
bbs


パロディ

 もっと激しいもんかと思っていたが、終電はそんなに激しいものではなかった。もっと、一斉にたくさんの人が走って来てラッシュさながらに電車になだれ込んでぎゅう詰めになるのかと思っていたけど、そんなことはなかった。別に、自分の乗った電車がかなり手前までしかいかない奴で、もうちょっと遠くまでいく急行とかならもっと人が乗ってきて終電フレイバーになるのかもしれないし、平日だったからかもしれない。
 始発駅から乗って来ていた人で目立ったのは短髪気味でヒゲでがっちり気味で黒いTシャツにジーンズのイケメンといきなり床に座り込んだ不思議系の巨乳の女の子で、女の子付きでなかったら俺はゲイと勘違いしていただろう。女の子の方の家に行くらしい。
「駅どこ」
「ん、10個目」
 とか、座り込んでいる女は男に向かって新書よりは少し大きめの本を差し出して聞いた。
「どっちの絵が好き?」
「こっち、かな」
 とかって、男の方はけっこう戸惑ってるふうにその本をつまらなそうに眺めているところなんかを見ると、二人があんまり親しいとは思えない感じだった。むしろ今日どっかで会って意気投合したって感じ。それってむしろゲイに多いよな、とかこの男の方はキャラ設定がちょっと前に良く会ってて、今でも好きな人にちょっと似てるなぁとか、思ったりもしている。

 次の駅はJRの乗換駅で普段もここから人がいっぱい乗ってくる。それなりに込んで来て、最後に乗って来たのはどうやら酔っぱらってる大学生っぽかった。なんかちょっとした部活の飲み会っぽい。どこまでが同じ団体かは分からなかったが、最後に乗って来た女の子一人を男が二人掛かりで抱えていてちょっと、デンジャラスな感じだったので、面白そうでつい注目。女の子はかなり酔っぱらってるらしい。
「おい、オマエ俺の荷物持ってて」
「俺、こいつ送って駅からタクシー使うし」
とか
「自分のはこれっすよ」
「こいつ絶対吐くよな。ビニールビニール」
みたいな話をしていて、大学入ってすぐみたいな、どっちかっていうと高校生っぽい男の子が先輩の荷物を持ってたりする。彼等はビニール袋を持っていなかったみたいなので、俺も荷物をごそごそやってみたけど、どうでもいい時はもってたりするビニール袋が今は見当たらなかった。
 なんか、女の子を抱えてる男二人は妙に自信満々で、
「俺とお前がいれば大丈夫」
とかよくわけの分かんないことを言っているあたり、彼等もそれなりに酔っぱらっているんだろう。

 ちょっと目を離しているうちにすぐそばに立っていた、私、酸いも甘いも乗り越えてそろそろ女盛りを過ぎる頃って感じの、八代亜紀似の御姉様〜おばちゃんの境ぐらいの女が、女の子の頭を撫ではじめて、あたしも若い頃こんな感じだったわ、みたいなことをいいはじめている。それに男二人がタメ語で応対していたりする。
「次の駅で降りるから」
ってころになって、唐突に今まで別団体だと思ってた奴が、片方のリーダーぶっている男に微妙にくってかかりだした。なんか、そいつの面倒は見て、なんで他の奴の面倒は見ねぇのみたいな言い掛かりをつけているっぽいが、リーダーの反論の仕方が「こいつがツブれたのは俺らが飲ませたからなんだから俺らが責任とんなきゃ行けねぇだろ」みたいな事情を知らなくてもうんこみたいな内容で、相当頭悪そうなので、結構面白くなって来たなぁ、食って掛かってる内容はさっぱりわかんねぇけど、とか思っていると、その微妙な口論を聞いた酔っぱらってる例の女の子が、「喧嘩はやめてよぉ」みたいなことを言っていて、確かに、その男二人の口論は直訳すれば「なんでお前がその女もって帰んの」「は、うっせ」であるみたいだから「私のために喧嘩はやめて」って言えてるよなぁ。とか、思う。それでもめげずに二人は口論していて、もうちょっと大きな声になったらちょっと不穏な雰囲気だなぁとか思うんだけど、「喧嘩はやめて」の女の子の訴えに「いや、これは喧嘩じゃないから大丈夫(俺らはチームで信用しあってるんだよ)」みたいなことをリーダーがのたまってる辺り、リーダーもかなり酔っぱらっていることがうかがえる。
 彼等の降りる駅が来て、別にそんなことをする必要は全くないと思うんだけど、リーダーは女の子を抱きかかえて、八代亜紀似の女と
「俺、優しいっすよね」
「やさしいね、うらやましいわ」
 みたいな会話を交わして、その団体の一部を残して降りていった。
 ところ、またも別団体だと思っていたさっきとは違う男が、唐突に、持っていたビニ傘でいきなり窓の外をさし、その傘の先っぽが知らない女の子の肩に触れて結構危ない上に女の子がマジでビビっているにもかかわらず、いや、確かに同団体の高校生っぽい男の子がスンマセンって感じで会釈はしていたけど、「だからなんであいつらがあの子連れて変えるんだよ」と、激昂しだした。どうやらさっき食って掛かっていた男とそいつはペアらしくて二人で文句を言っていいはじめている。んで、その取り巻きの後輩っぽいさっきの男の子二人ぐらいがなだめたり、残った先輩二人はなだめるのをシカとして遠くへいってしまったので、二人でちょっと困ったふうになっている。困ったふうっていってもどうしようオロオロって感じではなくて、あーあ、どうしたもんかなぁって感じなので、そんなに深刻な感じはしない。
 っつーか、今頃になって言うぐらいなら、じゃあその前に文句いえばよかったじゃんかと思うのに加えて、その文句いってる二人の方が、確かに、明らかにルックス的にリーダーとそのツレに劣るので、多分二人もルックス的に奴らが持って帰るべきだろうっていうことは分かって、負け惜しみ的にというか、こうなってしまったお決まりの状況に納得しながらも、その納得することには納得できないで、文句を言っているんだろう、多分。と思う。もし自分たちにお鉢がまわってきても二人はどうしたらいいか分からなくなっちゃうだろう。ルックスのヒエラルキーとそれを自覚することって恐ろしいもんだなぁ、他人のことは言えないけど。とか勝手に思って、僕は電車の中もすいてきたので、空いている座席に腰をおろした。

 最初の男と女の子のペアを見ると、女の子は床にぺったりと座って真剣に、男の方はつまらなそうにさっきの本、多分漫画をまだながめている。ながめているっていっても、かなりその本には興味がないみたいで、なんか眠そうに集中している女の子と違って、本から目をはずして女の子の方を見たり、周りに視線を泳がせたりしている。一方その様子を全く気にすることもなく、女の子の方は
「あと3駅」
とかいったりしていて、男のガタイはでかいのに、明らかに女の子の方が主導権を握っていて、その対比がなんかアンバランスで結構面白くて、ちょっとながめたりしている。
 男の方が俺的にいい感じなのに対して、その女の子は別にそんなにかわいいわけじゃないけど、女の子のキャミソールからは透明なブラのストラップがちょっと見えていて、今年も透明なストラップがはやってるのかなぁとか思う。

 二人が床に座っている隣の4人がけにはさっきの後輩っぽい大学生二人が座っていて、最初は二人で文句を言っている先輩は困ったものだみたいなことを言っているみたいだったが、右側の方が携帯で話しだして、手持ち無沙汰そうにしていた左の方もいつのまにか携帯で、「いや、誰が俺らと同期の女の子を連れて変えるかでもめちゃって」とかって、かわらずに、もめ事を誰かに報告している。終電はモラルがないらしくて、ぜんぜん車内での携帯電話のご使用はご遠慮しなくてもいいらしい。確かに、通勤ラッシュの時とかとは違って電話じゃなくても話し声で十分車内がうるさいから、確かに今さらな感じはする。でも、やっぱり友達同士が、一緒にいるのに両方どうでもいいような話を携帯でしているのはなんかへんというかかなり面白い。俺も友達との会話になら携帯料金ぐらい以上の価値はあると思う。だから、携帯を月に何万も使う奴は病気っぽいとは思うけど、理解はできる。

 電話している二人の横の二人分の座席は空いていて、ただ二人がちょっとはみだして座っているので、二人が座るには少し足りなそうな微妙な幅の座席になっている。漫画を読んでいた女の子が座りたいと言いだして、男はその微妙な幅は無理だと思ったんだろう、向かいの座席とかに少し目を走らせたが、そのしぐさに気付くこともなく女の子はその微妙な幅に座った。男は多分そこに座るのは窮屈そうだから立っていようと思ったんだろうが、ガタイの出来てるツレの男が座るには明らかに足りなそうな、あまった椅子に座れって感じでそこをぽんぽんたたくので、凄く窮屈そうにしかたなくそこに座って、その横では相変わらず高校生っぽい多分大学生の二人が電話で話していて、そろそろ漫画を読んでる二人と俺が降りる駅に着く。
 電車が駅に着いた辺りで、隣の車両で人が揉み合って倒れていたので、すわ、ケンカかと思ったけれど、別にそんなふうではないらしくて、そっちに見とれている間に、漫画を読んでいた二人に先におりられて、なんか後をつける格好になった。
 そんなに親密なふうでもなかったのに、改札を出る辺りからいつのまにか、手を繋いでいて、少し後をつけてみたい気もしたけど、二人はそのままコンビニに入っていった。

 別に一人で自己陶酔的に寂しそうに微笑んでいる八代亜紀似の水っぽい女も、自己陶酔的に俺って紳士的とか思いながら結局お持ち帰りをしてるリーダーっぽい奴とそのツレも、へべれけになって喧嘩しないでぇとかゆっている女(多分結構かわいい)も、そいつらが持って帰ることを納得がいかないフリして文句いってた二人組も、後輩っぽいちょっとかわいい微妙に途方に暮れていた方の二人組も、ガタイはデケェけど不思議系巨乳の女の子の方が主導権を握っていて、別にけだるそうな雰囲気だったのに、駅から歩いていくところは普通のカップルっぽくなっていた二人組も、むしろ、ゲイバーで一人で飲んで来たせいで終電になってる俺も、終電に乗ってるせいで、妙にオリジナリティがあるようなフリをしていながら、実際にはなんのオリジナリティもなくて、それは、今これを書いている俺自身にもいえることだ。全てがどっかのうんこみたいなドラマの一コマだろうが、未来日記のワンシーンだろうが、ぜんぜんあり得そうで、ちょっとうんざりしながらも、世紀末的にそのことに悲観的になったり、結局オリジナリティなんてねぇんだよな、とか陶酔的になるわけじゃなくて、そのお約束っぷりがなんか笑える。無理して笑ってるんじゃなくて、ちょっと脱力しながら。もう21世紀だし。