第1章

第5条
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。


不当とは、不法なものにのみ限られず社会通念上是認し難き程度の手段をもってするものは含まれない。

意思に反して労働を強制するとは、意識ある意思を抑圧し労働することを強要することであり、詐欺の手段によるものは必ずしもそれ自体としては、含まれない。



第6条
何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。


労働関係の開始についてのみならず、労働関係の存続に関係するものも含む。

違反行為主体は、法の適用を受ける事業主に限らず、個人、団体又は公人、私人を問わない。

一の使用者が、他の被使用者との労働関係に介在する場合も本条違反となる。

「就業」とは、労働者が労働関係に入り、又はその労働関係にある状態を言い、「介入」とは、その労働関係の開始存続について何等かの因果関係を有する関与をなしていることを言う。

法人の従業者が法人のために労務提供契約を結びその利益を法人に帰属させていた場合の犯罪行為者は、契約者たる従業者である。



第7条
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げない限り、請求された時刻を変更することができる。


「公民としての権利」には、@法令に根拠を有する公職の選挙権及び被選挙権A憲法の定める最高裁判所裁判官の国民審査B特別法の住民投票C憲法改正の国民投票D地方自治法による住民の直接請求E選挙権及び住民としての直接請求権の行使等の要件となる選挙人名簿の登録の申出等がある。訴権の行使は一般的に含まれない。

「公の職務」とは、@衆議院議員その他の議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、法令に基づいて設置される審議会の委員等の職務A民事訴訟法第271条による証人・労働委員会の証人等の職務B公職選挙法第38条第1項の選挙立会人等の職務等をいう。

公民権の行使を労働時間外に実施すべき旨定めたことにより、労働者の就業時間中の選挙権行使請求を拒否すれば違法。



第9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。


許認可等の手続き 演劇事業等の如く事業の本拠の外随時に移動性の事業場を設定する事業又は常時事業場を移動する事業についての手続きは、各事業場所轄の監督署長に行うのが原則であるが、この原則によることが適当でない場合には諸手続きの必要を生じた最初の事業場を管轄する監督署長に対するもので足りる。

新聞配達人について、配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払形態が請負制となっているだけであって、一般に販売店と配達人との間には、使用従属関係が存在し、配達人も本法の労働者である場合が通例である。

商船大学及び商船高等専門学校が機関関係の学科、課程の学生を対象に民間の事業場に委託して行う工場実習を受ける実習生については、当該事業場との関係において原則として労働者ではない。なお、一般の大学の工学部等の学生又は工業高等専門学校の学生で工場実習を受ける実習生であっても、原則として労働者ではないものとして取り扱う。

請負契約によらず、雇用契約により、使用従属関係下にある大工は本条の労働者。

看護婦養成所の生徒については、原則として労働者ではないが、実態においては、次のいずれにも該当する場合を除き、労働者と見るべき場合がある。@実習中といえども、教習及び教習の場合に関係ない作業事務所その他雑用に使用されないこと、A生徒の管理について責任者が定められ、生徒の教習と一般看護婦の労働が明確に区別されていること。

組合専従職員は、使用者が在籍のまま労働提供の義務を免除し、組合事務に専従することを使用者が認める場合には労働基準法上労働関係は存続する。なお専従職員が労働組合の労働者である場合又は労働組合が他に労働者を使用する場合は労働組合の事務所は法別表第一に掲げる事業に該当しない事務所と認められる。

放送協会に専属の管弦楽団、合唱団、劇団、効果団については、一定の拘束条件のもとに労働を提供する義務を負い、その労働の対償として報酬を受けており、契約の名称如何にかかわらず協会との間に使用関係が存在する限りにおいて、本法上の労働者である。ただし、演出について裁量を一任されている者についてはこの限りではない。

非常勤の消防団員であって火災、堤防の決壊等限られた場合のみ出勤するものは本条の労働者ではない。

市町村の固定資産評価員は労働者である。

中央競馬会所属の調教師、馬手間には一般に労働関係あり。

少年法第25条第2項第3号の規定により補導を委託された施設等の施設内において少年が作業に就く場合であって、当該作業がもっぱら生活指導又は職業補導の一環として行われているときは、一般に労働基準法上の適用はない。

事業主が病院から委託を受けて、病院のために治療目的で入院患者を作業に従事させる場合は、当該患者は原則として本条の労働者には該当しない。

いわゆる委託契約により、教職員に代わって宿直勤務に従事する用務員等を労働者であるとした事例。

いわゆる芸能タレントの労働者については、次のいずれにも該当する場合には、本条の労働者でなない。@当人の提供する歌唱、演技等が他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること。A当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと。Bリハーサル出演時間等の、スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと。C契約形態が雇用契約ではないこと。



第10条
この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他の事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。


下請負人は、本条弟9条の労働者でなく本条にいう事業主である。



第11条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。


@支給されるものが労働者の自家消費を目的とせずに明らかに転売による金銭の取得を目的とするもの、A労働協約によらないが」前例若しくは慣習によってその支給が期待されている貨幣賃金の代わりに支給されるものは賃金と見る。

チップは賃金ではない。ただし、無償あるいはきわめて低廉な価格で食事の供与を受け又は宿泊を許されている場合には、かかる実物給与及び利益は賃金である。

役職員交際費は賃金ではない。

栄養食品又は保健薬品の支給は、労働協約に基づき特定作業に従事する労働者に対してその稼働日数に応じて一定額の範囲内で支給するものであれば賃金である。

作業用品代は損料又は実費弁償と認められ賃金ではない。

福利厚生のために使用者が負担する生命保険料等補助金は賃金ではない。

スト妥結一時金は臨時の賃金である。

航空機乗務員が、通常の業務として、航空機に一定区間乗務する場合に支給される乗務日当は、その目的は主として航空機に乗務することによって生ずる疲労の防止及び回復を図ることにあり、一種の特殊作業手当てと見るべきものであり、賃金と認められる。



第12条

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき自由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によって計算した金額を下回ってはならない。(以下略)


臨時に支払われた賃金とは、臨時的突発的事由に基づいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が極めて不確定であり、かつ非常に稀に発生するもの。

賃金ごとに締切日が異なる場合の平均賃金は、各賃金ごとにその直前の締切日をもって算定する。

賃金が協約によって過去に遡ってアップされる場合の平均賃金の計算においては追加額は各月に支払われたものとして行う。

休日手当ては月によって定められた賃金とみなす。

休電日の休業手当ては総額に含む。

支給期間の当初に一括支給しても、その期間の各月分の前渡と認められる冬営手当ては賃金総額に含まれる。

いわゆる日給月給製の平均賃金の最低保障額は、欠勤しなかった場合に受けるべき賃金の総額をその期間中の所定労働日数で除した金額の100分の60とする。

私傷病手当ては臨時の賃金と解す。

私傷病の長期欠勤者が復職して短時日の間に平均賃金を算定すべき場合には出勤以降の賃金及び期間について法12条第1項の方法を用いる。

中央協定成立後細部協定成立迄期間の経過があった場合は、中央協定成立の日をもって賃金債権額が確定したと解し、中央協定実施以降の平均賃金算定は新賃金により算定するが、この場合細部協定成立後精算額を算出する。

けい肺の場合の平均賃金は、診断確定の日に既にけい肺発生の恐れがある作業場を離れていても、その事業場に引き続き在職している場合は、診断確定の日を算定事由発生日とみなす。

転職後業務上疾病の再発した場合は業務上疾病に罹患した事業場の賃金によりその事業主が補償する。

定年退職後再雇用され再雇用後3ヶ月に満たない労働者の平均賃金は、退職前の期間をも通算して算定する。

平均賃金の算定期間が2週間未満の労働者であって、
@満稼動の者は、当該労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の総暦日数で除した金額に7分の6を乗じた金額
A通常の労働者と著しく異なる労働に対する賃金額となる労働者は、通常の労働に対する賃金額に修正した金額が平均賃金となる。

平均賃金の算定期間が一賃金算定期間に満たないときのいわゆる完全月給者の平均賃金は、月給を30で除した金額が平均賃金となる。

雇入後3ヶ月未満の月給労働者についての平均賃金算定期間中に、一賃金締切期間に満たない期間の就労に対して月給が減額されることなく支払われている期間があるときは、その期間の日数を30日とみなし、算定期間中に支払われた賃金総額を当該30日と算定期間におけるその余の日数との合計日数で除す。

じん肺の場合の災害補償に係る平均賃金については、じん肺に関連するとみられる休業期間及びその賃金を総日数及び賃金から控除する。ただし、その休業期間中に算定事由が発生した場合には、休業開始日を算定事由発生日とみなす。