甲がラップに包んだ大麻樹脂の塊を飲み込んで体内に隠匿している疑いがあるため、捜査機関は、甲の腹部をレントゲン撮影の上、体内に大麻樹脂の塊らしいものが確認できた段階で、甲に下剤を用いて、大麻樹脂の塊を早期に体外に排出させ、これを押収しようと考えた。
 このような捜査を行うには令状が必要か。必要であるとすれば、どのような令状によるべきか。

一 身体検査の種類
1 捜査機関は甲に対し身体検査を行おうとしているが、
 この捜査を行うにはどのような令状が必要か。
  この点、身体検査の種類としては、以下の3つがある。
 (1) @身体の捜索
  捜索とは、一定の場所・物・人の身体について、物・人
 の発見を目的として行われる処分をいう。
 (2) A検証としての身体検査(狭義の身体検査)
  検証とは、五官の作用によって物の状態を認識する処
 分をいう。
 (3) B鑑定処分としての身体検査
  鑑定とは、特別の知識経験を有する者による、事実の
 法則またはその法則を事実にあてはめて得られた判断の
 報告をいう。
2 これらの処分は、いずれも、被験者の身体の自由とい
 う重要な権利・利益を侵害するものとして「強制の処分」
 (197T但)にあたり、捜査機関が行うには裁判官の発す
 る令状を必要とする。
  この点、判例は強制採尿が問題となった事案で、条件
 付ではあるが身体検査令状(218T後)によることを認めて
 おり(※1)、その対象物で令状を選択するきらいがある。
  しかしながら、身体検査が強制処分とされ令状を必要
 とするのは、それが身体の自由の侵害だからであり、そ
 うだとすれば、これらは身体への影響の程度ないし許容
 限度に違いがあると考えるべきである。すなわち、@身
 体の捜索は、外表検査のみ可能で、A検証としての身体
 検査は、全裸にして調べることもできるし、場合によっ
 てはレントゲン等の内部的検査も可能であり、B鑑定処
 分としての身体検査は、これらに加えある程度身体への
 侵襲を伴うことも許されると考える。
  このことを前提に、本件捜査を検討する。

二 本件捜査の場合
1 レントゲン撮影について
 (1) かかる捜査は強制処分であるから、令状は必要で
   ある。
 (2) そして、レントゲン撮影は内部検査であるから、
  身体検査令状(218T後)による。
2 下剤を用いて排出させ押収する行為について
 (1) かかる捜査は強制処分であるから、令状は必要で
   ある。
 (2) そして、下剤を用いて排出させる行為は身体への
   侵襲を伴うから、基本的には鑑定処分許可状(225V)
   によるべきである。
    もっとも、鑑定処分許可状では直接強制できない
   (225条4項が準用する168条6項は139条をあえて準用
   していないし、225条4項は172条を準用していない)
   ため、被験者が検査を拒絶した場合に不都合が生じ
   る。
    そこで、直接強制が可能な身体検査令状(218T後)
   を併用すべきと考える。
                        以上

※1 書き間違え。捜索差押許可状(218T前)です。積極ミスに…。

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