甲は、A土地の所有者乙を被告と表示して、所有権移転登記を求める訴えを提起した。なお、この訴訟には、訴訟代理人はいないものとする。 |
一 当事者の確定基準
1 甲は、乙を被告として所有権移転登記請求を提起し
たが、実際には丙が訴訟追行していた。この場合、被
告が乙か、それとも丙かで、その後の取扱いを異にす
るので、当事者の確定基準が問題となる。
思うに、当事者は裁判籍や訴訟能力を判断する際の
基準として重要であるから、訴訟の当初から明確に確
定される必要があり、訴状の記載をもとに判断すべき
である(表示説)。
ただ、その際は、具体的妥当性の見地から、訴状の
当事者欄の記載だけでなく、請求の趣旨・原因など一
切の訴状の表示を合理的に解釈して決するべきである
(実質的表示説)。
2 本問では、訴訟物が甲の乙に対するA土地の所有権
移転登記請求権の存否で、そのA土地の所有者は乙で
あるから、訴状の当事者欄の記載「乙」を基に、一切の
表示を合理的に解釈して決すると、被告は乙である。
3 これをもとに、以下の小問を検討することにする。
二 小問1
1 設問(1)
(1) まず、無関係な丙は単純に訴訟から排除それば
よい。
(2) そして、被告乙については、呼び出した上で追
認(34U)の機会を与えることになるが、本問で乙
が追認するとは思えないので、最初から審理をや
り直せばよいと考える。
2 設問(2)
(1) 別訴提起による方法
この場合も、法的安定性の見地より、判決は有効
であり、前述のように当事者は乙であるから、既判
力は乙に及ぶ(115T@)。
従って、別訴提起したとしても、前訴の既判力に
よって、訴訟追行の瑕疵を主張することはできず、
この方法はとれない。
(2) 再審請求による方法
氏名冒用訴訟の場合は、無権代理人による訴訟追
行と類似するから、338条1項3号を類推適用すること
によって、再審請求できる。
従って、再審請求によって前訴の瑕疵を争うこと
ができる。
(3) 訴訟行為の追完による方法
ア. 訴訟行為の追完(97)とは、「当事者がその責め
に帰することができない事由により不変期間を
遵守することができなかった」場合に訴訟行為
の追完を認めるものである。ここで「責めに帰
することができない事由」とはいかなる場合を
いうのか。
思うに、97条の趣旨は、帰責性なき当事者に
追完を認めることで公平を図る趣旨であるが、
一方で、追完を認めると相手方当事者の期待可
能性や予測可能性を害する。
そこで、@期間を徒過した理由、A追完を認
めることによる相手方の不利益等を総合的に考
慮して、「責めに帰することができない事由」に
あたるかを決定すべきである。
イ. 本問では、@乙が控訴期間を徒過したのは、丙
が乙と称して訴状等を受領したため、乙は訴訟が
係属していることすら知らなかったのが原因であ
る。これに対し、A甲と丙は意を通じており、追
完を認めても甲に不利益はない。かかる事情から
すると、「責めに帰することができない事由」があ
ると考えられる。
従って、乙は移転登記の執行を受ける等して敗
訴の事実を知ってから1週間以内に、訴訟行為を
追完し、控訴提起する方法により、瑕疵を争うこ
とができる。
三 小問2
1 別訴提起による方法
乙は既に死亡しており、死者に対する判決は内容的に
は無効である。従って、既判力は相続人丁には及ばず、
丁は別訴提起により争うことができる。
2 再審請求による方法
死者に対する判決も外形上は一応有効に成立している
から、再審請求によって取り消すことは可能である。
この点、裁判所は乙の死亡により訴訟手続を中断すべ
き(124T@)ところを中断しなかったわけだから、338条
1項3号類推適用により再審請求できると解する。
3 訴訟行為の追完による方法
この場合、小問1設問(2)と違い、@乙は訴状を受領し
訴訟が継続していることは認識していたから、「責めに
帰することができない事由」にはあたらないと考える。
従って、訴訟行為の追完により、控訴提起することは
できない。
以上