【問題】  政党が民主政治において重要な役割を果たしていることにかんがみ, 政党助成金の交付を受けるためには「党首を党員の選挙によって選出 しなければならない」との条件を法律で定めたと仮定する。この法律 の合憲性について論ぜよ。 【解答】 一 政党の憲法上の地位 1 政党とは、政治的意見を同じくする人々が、一定の政策を実現す  るために組織する団体のことをいう。   政党は、民意を媒介し、実現する役割を果たしている。即ち、大  衆社会の発展と、普通選挙制(15条3項)の導入により、一票の価値  が相対的に低下し、一人では政治に影響を与えることは不可能であ  る。そこで、同じ政治的意見を持つ者同士が一定の集団を組織する  必要があり、それが政党である。 2 日本国憲法上、政党について正面から規定した条文はないが、政  党が民意を媒介し、実現する役割を果たしている以上、議会制民主  主義を支える不可欠の要素であり、憲法は政党の存在を当然に予定  している。   そして、憲法の政党に対する態度として、一般的に、@敵視、A  無視、B承認、C憲法的編入の段階に分けられるが、憲法に直接の  規定がない我が国の政党は、「結社の自由」(21条1項)によって保障  される任意団体であり、B承認段階にあると考えられる。 二 政党に対する規制 1 以上のように、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素とし  て公的側面を有している一方で、私的結社としての性格も有してい  る。   そして、前者の公的側面を強調すれば、政党に対しては高度の規  制が認められることになる。 2 しかし、政党が「承認」段階にあるということは、政党も1つの任  意団体として結社の自由によって活動が保障されているから、私的  結社としての「本質」を害することはできない。日本国憲法が、ドイ  ツの「闘う民主政」という考え方を採用しなかったのは、価値相対主  義の下、民主主義に敵対する思想に対しても自由を与えるという前  提に立っているからである。実質的に考えても、政党が民意を媒介  し実現する役割を果たすためには、私的で自由な活動が不可欠であ  る。   従って、政党を規制する法律は、ある程度厳格な基準で判断すべ  きであり、具体的には、@目的が重要で、A目的と手段との間に実  質的な合理的関連性がある場合に限り合憲と考える。 三 本件法律の合憲性 1 まず、@本件法律のようないわゆる党内民主主義の目的は、政策  本位・政党本位の政治が進む中で、政策の決定・ポスト(役職)の配分  等に強力な権限を持つ党首の選定を民主化することで、より強く民  意の反映を図るという点にあり、かかる目的は重要である。 2 そして、Aかかる目的を達成する手段として、党首公選制を法的  に義務付けた場合(ムチの手法)は私的結社の本質を害するものとし  て許されないが、その採用を政党助成金交付の要件とすること(アメ  の手法)は直ちに違憲とは断じ得ない。   しかし、今日、政党助成金が各政党にとって不可欠の活動資金に  なっていることからすれば、事実上の強制といえる(ムチの手法に近  い)。また、党内の人間関係や経験を考慮した上で党首に相応しい者  が選ばれることが民意を正しく反映することもある。とすれば、党  内民主主義の採否は各政党の自主的判断に委ねるのが相当であり、  本件法律は目的と手段との間に実質的な合理的関連性がないという  べきである。 3 従って、かかる法律は21条1項に反し違憲である。                              以上