入門ゼミ  クラス:1年 Oクラス  担当教員  渡部亮

 

全体のテーマ

テキストを使って、専門書の読み方、要点のまとめ方、発表の仕方を学ぶ。

会社の売上と利益、資本と負債(株式と社債)、証券市場の機能、機関投資家の行動、投資リターンとリスクの関係など、国際金融論や企業財務理論の基礎を理解する。

 

テキスト

バートン・マルキール著、井手正介訳『ウォール街のランダム・ウォーカー』(日本経済新聞社)

このテキストは、株式市場取引や株価形成の仕組みを理解するのに最適な教材である。第二次大戦後の米国経済および企業経営の発展を学ぶこともできる。

 

参考文献

井手正介・高橋文郎共著『ゼミナール 経営財務入門』(日本経済新聞社)

本書は、経営財務の基礎的概念を、より詳しく理解するのに適した教材である。

 

評価方法とその基準

各人の毎週の発言内容によって評価する。したがって、出席が必須である。必要に応じて期末にリポートを提出してもらう場合がある。

 

講義計画

ゼミ生には、毎週事前にテキストを一章ずつ読んでもらい、ゼミの場で各人がポイントを発表する。毎週のゼミの場で、次の章の難解なテクニカル・ワードを、私が事前に解説する。それによって翌週に取り扱う章の理解を容易にする。

 

注意事項

 自分自身のキャリアディベロップメントのために、社会人としての見識を養い、視野を広げることに興味を持ってもらいたい。


課題

日本の株式時価総額のGDPに対する比率を、1980年以降、毎年計算し、グラフで図示せよ。

 

    GDPとは、毎年、日本経済が新たに生み出した付加価値の合計

国民所得=雇用者所得+財産所得+企業所得

GDP(生産所得面)=国民所得+(間接税―補助金)+減価償却(固定資本減耗)

GDP(支出面)=個人消費+政府消費+設備投資(民間資本形成)+公共投資(公的資本形成)+在庫投資+(輸出―輸入)

 

<資料>

経済社会総合研究所『国民経済計算年報』

内閣府・経済社会総合研究所のホームページ(目次・統計・長期時系列)

www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html

 

★株式時価総額とは、株式数×株価=株式市場の時価価値

各年の年末の値。東京証券取引所第一部上場銘柄の合計

 

<資料>

最近の統計は、東京証券取引所『証券統計年報』『証券統計月報』

過去の統計は、東洋経済『経済統計年鑑』(目次:金融の欄の「株式市場」)および金融財政事情研究会『証券年報』(目次:第三篇統計の株式欄)

 

東京証券取引所のホームページ

www.tse.or.jp/data/index/topics/index.html

 

<その他の統計>

『日本の統計』『日本統計年鑑』

岡山大学経済学部のホームページが便利

www.e.okayama-u.ac.jp/”shiryou/stati.html

 

 

 

 

 

 

<マルキールの6章>

 

チャート分析とは、過去のデータだけを頼りとして将来を予想する。過去のデータには将来の予測を可能にする要素が含まれている。

ジンクスをあてにするのと同じである。ミニスカートとスーパーボールの例。

人間行動には規則性があるから、チュートの成功確率は、前のシュートの成功確率に依存している。

フィルター法…損切りルール

ダウ理論…ダウ平均法=累積投資、抵抗線と支持線の間で売買を繰り返す。

抵抗線を抜いたら買い進む、支持線を下回ったら売り越す。

 

しかし、筆者によれば、過去の変動と将来の変動の間には、統計的に有意な相関関係はない。かりに規則性があったとしても、それはコイン投げの規則性と同じ程度のものである。

その意味で、株価はランダムである。これを効率的市場仮説と呼ぶ。

テクニカル分析は無効である。有効であれば、誰かが先に儲けてしまって、株価はすぐに上がってしまう。いかなる規則性にせよ、規則性があれば、それを知った人が必ず先に行動するから、ある特定の人が継続的に勝ち続ける事はできない(リンカーンの教え)。

 

もし過去と将来の株価に関係があるとすれば、それはモメンタムがあるからである。モメンタムとは、一度あがり始めた銘柄は、あがり続けるという法則。

確かに、経済は着実に成長し、利益が増加してきたから、株価がモメンタムを持つことはありうる。しかし、モメンタムがあるとすれば、バイ・アンド・ホールドすればよい。

しかし、私の経験によれば、95%の頻度で儲ける事ができても、残りの5%で大損する。

 

相場には砂上の楼閣的な規則性(熱狂的相場)があるが、それをチャート分析であてることはできない。相場を当てることのできるチャーチストは、ファンダメンタルズもキチンと評価している。たとえばアビーコーエン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルキール7

前章は、テクニカル分析は当てにならない。ウィーク型効率的市場仮説(過去の価格データから将来は予測できない)257ページに効率的市場仮説

効率的市場仮説とは、市場は効率的であって、その時点で知りうるすべての情報が価格に反映されているから、そうした情報に基づいて売買しても儲けられない(251〜252ページ)。

ファンダメンタルズ分析も当てにならない。セミストロング型効率的市場仮説(公開情報をもとに銘柄選択を行っても他人より優れたパフォーマンスをあげられない)

 

インデックスファンドを買ったほうが良い260ページ(259ページにはサムエルソンのコメント)。しかし馬鹿が相場をかく乱することもある(筆者の妥協的)。

 

常に勝ち続ける事はできない。投資信託のパフォーマンス(運用成績)。但し時々すばらしいファンドがある。時流に乗ったというだけかもしれないが。

その理由は

第一に、ランダムに発生する予測不可能な事件がある。サッカーでも偶然が左右する。しかし、大きな方向(軌道)は変わらない。フリーキックを失敗した韓国が勝ったではないか。

第二に、アナリストの能力不足。大勢についてしまう人間の習性(失敗しても攻められない)。

株価にとって最も重要なのは利益成長、しかし過去の利益成長が今後も続く保証はない。

過去の利益成長は、将来の利益成長の予測には役立たない。ブルーチップ神話の崩壊

アナリストは、三寒四温の天気予報程度のことしかできない。会社の利益予想よりも、GDP予想を使った方が無難。

第三に、会社による会計操作。キャッチボールによる売上の水増し。暖簾代の一括償却による将来利益の水増し。

第四に、利益相反問題

 

術語

アナリスト:高給取りで、非常に困難な仕事に従事し、凡庸な手法で仕事をこなす、非常に高い知性を持っている人物

投資信託

証券会社経営

公益事業会社

パッシブとアクティブ(手数料が安い、MPTに合致)

パフォーマンス=運用成果、株価の上昇率

ベンチマーク=標高測量の基準、市場平均

後期再開講にあたって

 

株式がなぜ重要か

企業にとって資金調達の手段である。多額の資金を広範な投資家(小口)から集める事ができる(米国の株主8000万人、日本も3350万人いる)

 

投資家にとって資金運用(投資)手段である。1952年以降の株式投資の収益率は14.4

債券は7

 

付加価値の創出は会社によって行われる。会社組織にしなくても、財貨サービスの生産は行える。しかし、会社組織にしたほうが規模の利益が働く。大量生産すればコスト(平均コスト)が低下する。

会社形態の方が取引費用が少なくて済む。不確実性が低下する。一々契約する必要がない。

経営者を含めて専門家を動員できる。

 

会社経営の専門家ではない株主は、経営を任すことができる。しかし、勝手に経営されては困る。法外な報酬を取られても困る。経営者を監視する必要がある。経営者を監視し、会社が効率的に経営されるようにすることをコーポレートガバナンスと呼ぶ。

 

それでは誰のために効率的に経営するのか? 会社の主権者は誰か?


9

今、我々がこの本で学んでいるのは「現代ポートフォリオ理論」(MPT

9章は、MPTのアカデミックな説明である。

MPTの結論は、長期的により高いリターンをあげる唯一の方法は、高いリスクをとることである。

 

その関係を図示したのが図20297ページ)の直線である。ベータがリスクの指標。

リスクを取ることには報酬(reward)が伴う。ただしベータはシステマティック・リスクで分散不可能なリスクを指している。

E(Ri)=Rf+β*E(RmRf

 

分散投資によってリスクを軽減することができるが、すべてのリスクを消すことはできない。なぜなら、すべての株式が同時に同一方向に動くことがあるからである。

 

リスクを「分散可能なリスク」と「不可能なリスク」の二つに分けて分析するモデルが資本資産モデル(CAPM)・・・DDFと並ぶファイナンスの重要理論

リスクとは=リターンの変動性(標準偏差で測る)

 

総リスク=システマティック・リスク+非システマティック・リスク(個別リスク)

システマティック・リスク=市場リスク=市場全体の変動性に対する感応度(ベータ)=分散投資によっては軽減できない=だだし、証券によって感応度は異なる

非システマティック・リスク=個別証券に固有のリスク=個別リスク)

 

システマティック・リスクの構成要素はGNP、金利、インフレ、為替などのマクロ変数である。

 

市場ポートフォリオ(市場全体=株式指数)のベータは1である。

 

証券のリターンの大小に関係があるのは、総リスクではなく、システマティック・リスク

である。

 

ベータは、証券の収益率と市場の収益率の回帰式(=特性線)の傾きとして求められる。

特性線の傾きがβ=証券の収益率と市場収益率の共分散÷市場収益率の分散

回帰式のパラメーターの推計値

この回帰式によって求められるβを証券市場線に代入して個別証券の期待リターンを計算する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


296ページの後ろから5行目。投資家は分散できるリスクを取っても報われない

分散可能なリスク(個別リスク)の高い銘柄を沢山買っても、分散可能なリスクを取らなかった投資家(市場平均を買った投資家)と同じリターンしか上げられない。

 

(図20)ベータが大きいということは、個別証券のリスク・プレミアムが大きいこと

ベータがゼロであれば、無リスクの金利を得る(国債の利回り)

(図20は資本市場線と呼ばれる)

 

ベータは、個別証券と市場平均の間の共分散

株式投資にとって有意なリスクの代理変数。非システマティック・リスクはリターンに無関係。しかし、実証研究によれば、ベータとリターンの間の関係は正の相関がない。つまり証券市場線が成立していない。

ベータ以外にも株式投資にとって有意なリスクがあることを窺わせる。

アナリストの意見のばらつきの方が、ベータよりもシステマティック・リスクの指標として適当かもしれない。

 

2122・・・ベータ値とリターンの実際の関係

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