NPMと新制度派経済学の関係について 

私は、3年12月の卒論テーマ決定の際に、卒論のテーマとして「日本版PFIは成功するか?」というものに決めました。
現在様々な本や論文を読み、研究を進めているところです。

PFIとは公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う新しい手法のことで、現在日本では内閣府が主となってこのPFI事業を推進しています。
PFIは、行政管理の時代から行政運営の時代へと移ってきた現在において、英米をはじめとする各国で主流となっているNPM理論における官と民の契約型システムの1つである。

ではNPM理論とはどのようなものなのか。その理論と理論的背景と言われている新制度派経済学についてここで簡単に紹介します。

NPMという言葉を最初に用いた者の1人はおそらくロンドン大学経済政治大学院(LSE)のC.Hoodではないかと言われてい。彼は“A Public Management for all Seasons?”の中で、1970年代後半から盛んになる英国、オーストラリア、ニュージーランドその他OECD諸国における行政改革について分析を加えており、これらの行政改革を包括するための便宜的な名称としてNPMという用語を用いている。だが、NPMというパラダイムは、1つの理論として明確に確立しているものではなく、行政における実践を踏まえた行政学者による観察の結果として緩やかに収斂してきたものである。
大住(2002)によると、
NPM理論とは、1980年代の半ば以降、英国・ニュージーランドなどのアングロサクソン系諸国を中心に行政実務の現場を通じて形成された革新的な行政運営理論である。その核心は、民間企業における経営理念・手法、さらには成功事例などを可能なかぎり行政現場に導入することを通じて行政部門の効率化・活性化を図ることにある。

具体的には、
@業績・成果による統制:経営資源の使用に関する裁量を広げるかわりに、業績/成果による統制を行う
そのための制度的なしくみとして、
A市場メカニズムの活用:民営化手法、エイジェンシー、内部市場などの契約型システムの導入
B顧客主義への転換:住民をサービスの顧客とみる
Cヒエラルヒーの簡素化:統制しやすい組織に変革する
というものである。

このような四つの要素のなかで、NPM理論の本質的なものは@およびAで、BおよびCはシステム統制の基準や手段にすぎない。
具体的には、これまで一緒だった中枢部門と実施部門とを分離し、中枢部門と実施部門間での契約関係を想定し、マネージャークラスへの経営資源(主に予算)を与えるかわりに明確な業績目標の達成を義務づけることになる。
このとき採用しうる契約型システムにはいくつかのパターンがある。広義の民営化(民間委託・バウチャー制度など)、PFI、エイジェンシー、内部市場のような類型化が可能であり、公共サービスの属性に応じて最適なものを選択すればよいとする。

NPMは、戦後発展した新制度派経済学と、経営学を基礎とするニュー・マネジャリズムをその理論的な背景としている。

新制度派経済学は、各経済主体や組織が有する情報の非対称性に着目し、その行動原理を説明する。また、合理性に基づく行動を、市場取引よりもより広範な、契約、義務、忠誠心などが支配的である領域にまで拡張を試みる。
すべての経済的関係は、異なった利害をもつ経済主体が、みずからの目的のために協力する当事者間の暗黙あるいは明示的な契約関係、とみる。この新制度派経済学の確立によって、行政が非効率を生み出すメカニズムが理論的に解明されるとともに、その解消のために必要な制度設計を提示するための枠組みが提供されたのである。

新制度派経済学は、一般的な理論体系を持っておらず、いくつかの方法論的に似たアプローチから成り立っている。研究は大まかに、取引費用論、プリンシパル・エージェント理論、プロパティ・ライツ論、公共選択論から成り、そのいずれも「国家の介入を、独占を助長し、起業的行動を制限し、選択を限定し、望まれないサービスを過剰に生産し、浪費と非効率を加速させるものとして捉えている」という点で共通している。新制度派の中でもNPMとの関係で親和性をもって説明されるのは、主にプリンシパル・エージェント理論、取引費用論、公共選択論である。

ニュー・マネジャリズムとは、企業経営の手法を公的部門に導入することによる行政改革の実践を言う。NPMにおけるニュー・マネジャリズムとは、民間企業と同じように人、資源、プログラムの経営を通して成果、業績、目標といった価値の実現を図るために、積極的に企業経営的手法を行政に導入しようとする動きを指す。財政が危機的な状況にある中で、質の高い行政サービスを求める市民のニーズに応えていくためには、政府の生産性を向上させる必要がある。つまり、経済性や効率性といった視点が非常に重要になる。これをより少ない資金でより多くの行政サービスを提供する、バリュー・フォー・マネーの実現という。そして、これを規則による管理によって目標達成を実現するのではなく、積極的に政策の実施部門に権限を委譲することで、目標を効果的に達成しようとする動きが現れる。ここにNPMが企業経営と親和性を有し、ニュー・マネジャリズムの影響を受けているといわれる所以がある。


★おまけ★☆

制度学派と新制度派経済学のちがいについて。

〜制度学派の創始者は、ソースタイン・ヴェブレン〜
ヴェブレンは、“近代進化論的歴史観”および“行動主義哲学”の立場から、「古典学派」ないし「限界効用学派」を批判して、“進化論的経済学”を唱え、これに続くミッチェル、コモンズとともに、いわゆる「制度派経済学」という一派を形成した。また、ヴェブレンには多くの著作があるが、処女作『有閑階級の理論』および次作『企業の理論』が、よく知られている。
1929年の彼の死去から現在まで,制度派経済学は紆余曲折を経てきた。A. G. グルーチーによれば,ヴェブレン,コモンズ,ミッチェル,J. M. クラーク,R. G. タグウェル,およびG. C. ミーンズらの1939年以前の制度派経済学者は,「旧制度主義」に含められ,C. E. エアーズ,G. ミュルダール,J. K. ガルブレイス,およびG. コルムらの1945年以後の制度派経済学者は,「新制度主義」に含められる。

〜新制度派経済学〜
それに対して、新制度派経済学は新古典派経済学のミクロ理論を補完するという立場を取っている。新制度派経済学といってもいろいろな理論があるが、制度や組織の形成の論理を解明しようとしていることに大きな特徴を見出せる。研究者にはロナルド・H・コース、オリバー・E・ウイリアムソン、ダグラス・C・ノースなどがあげられる。


これからNPMの理論的背景となっている新制度派経済学の理論について詳しく知り、次に福祉の現場における行政運営をみるという実証分析に進んで行きたいと考えています。

参考文献
大住荘四郎(2002)『パブリック・マネジメント』 日本評論社
大住荘四郎(1999)『ニュー・パブリック・マネジメント』 日本評論社
国土交通省 国土交通政策研究所(2002)『New Public Management』 財務省印刷局
経済史については、
香川大学経済学部柳沢哲哉氏のこちらのページがわかりやすいと思います