クリスマス限定小説 Don't look at me の続き
お正月小説です。

Don't Look at Me



ザクッ    ザッ    ザクッ  ザクッ


もー、腰痛いよぉ。なんで元旦から雪かきなんてしなくちゃいけないわけ?
そりゃー暇そうにしてましたよ。コタツの中で寝転がって、みかんをパクパ ク。
しょーもないお正月番組をだらだら見て。だからってさー。もーーーー、寒 いっつーの!!

「ゆうこー。お昼にするわよ。おもちいくつ?」
「4・・・・5!」
お正月って恐怖だ。
ぷくぷくと太っていく自分。
鏡餅になる日も近いかも。
お昼を食べたら駅前の本屋に行こうかな。漫画でも買ってこよう。
前はお正月とか商店街も全部閉まってたけど、最近はそんなこともない。
ブーツを履いて雪の中をザクザク歩く。
寒いよーーーー。はぁ、白い息。
まるでたばこの煙を出してるみたい。やっぱ、鼻から白い息が出たらダサい かな。
口呼吸しよ。
厚い位の店内をウロウロ。結構人いるなぁー。やっぱり、皆暇なんだよね、 お正月って。
えっと・・・・あ、この漫画家好きなんだよね。買い買い。あと、ファッ ション雑誌。
なになに〜、『お正月太りに効果抜群ダイエット』もちろん買いでしょ。
あとはーーーー。文庫本も買っとこう。ベタベタの甘い恋愛小説。こんなの ばっかり読んでるから彼氏が出来ないんだって友達に言われた。
いーじゃん、せめて夢くらい見せてよ。夢の中では私は細くて目もぱっち り。性格も健気な女の子。
ちょっと強引なかっこいい男の子に告白されちゃって、デートして・・・。
はぁ、空しい。
この妄想から醒めたときが一番空しい。
だって、そんなこと現実には起こらないもん。
こんなデブで可愛くない。暗い女なんってだれも好きになってくれないよ。

合計 1490円也。

コンビニも寄ってこう。えーっと、いちごみるくと、午後ティー。ぽてちは のりしお。
あ、でもコンソメも捨てがたい・・・・。うーん、両方買っちゃえ。つぶつ ぶいちごのポッキーにじゃがりこ。
プリンも籠に放り投げる。あとは・・・・

「肉まんとあんまんとピザまん二つづつ」

こんなに喰うのかよって顔で店員さんに見られた。ちがうもん、家族で食べ るんだもん。
・・・・本当は一人で食べるけど。おっきなビニール袋を抱えてコソコソと 店をでる。

「アリガトーゴザイマシター」

おざなりの挨拶が痛い。

あ、うそ・・・・・偶然。

白い杖の彼。
リヒトさん。
ど、どうしよう・・・・。心臓ばくばくする。
無視して行っちゃおうかな、声とかかけなきゃ気づかれないもん。うん、そ うしようっ
あれ、信号待ってるのかな・・・。横断歩道の前でじっとしてる。
あ、ここの信号は音楽とか鳴らないから。誰か助けてあげてくれないかな。
お正月だからあんまり人もいなくって、いる人は皆見て見ぬふりをして過ぎ ていく。
ああーーーーーーー、もう!!!

「て、手をかしましょうか!」

何、意気込んでるの、あたし。
ダサすぎる・・・・。

「え」

リヒトさんが振り向いた。見えてないはずなのに、じっと 顔を見るもんだから居心地が悪い。

「君・・・だね?」
「い、いえ!ちがいます!!!」

思わず条件反射。くくって笑った。

「誤魔化されないよ」

うぅ・・・・冷や汗出てきた。手がヌルヌルする。

「ね、時間ある?」
「え、あっ、いや!えっと!その・・・・あるというか、ないというか」
「あるんだね。じゃぁ、どっかいこ」

え、なんて強引な。
ハッ まさか、これって夢の通り、ちょっと強引なおっかこいい男の人?  ウソ・・・・・
頬を摘んでみる。イタイ。

「手、貸してくれる?」
「手?肩じゃなくて?」
「うん、階段の時は肩の方がいいけどね」

そうなのか・・・といって ハイ って素直に手を出せる わけもなく。
動かない私にじれたのか、リヒトさんは手を空中に彷徨わせた。
おおっと、やばい。
ザザッと後ずさる。胸に手が当たる所だった

「イヤ?」

あたしが後ずさったのが分かったのか、彼は手をひっこめ た。
あああーー。誤解された
あたしは、えいやって彼の手をつかんだ。
手袋してくればよかった。それあ、彼が手袋しておいてくれればあたしの 湿った手がばれなかったのに。
ふって笑った。

「あったかいね」

ぐはっ 湿っててゴメンナサイ。あわてててを話そうとし たのをぎゅって握られた。
ぎゃぁぁ、こ、これっていわゆる恋人つなぎっていうか! 指がっ絡んでる んですけど!!

「やわらかい」

ぐっっ 息がつまる。
あたしの手はぷにぷにしてる。こんな所にまで肉がつくのかってくらい。
バ・・・バレた?
そろそろと顔をうかがう。
サングラスで顔は見えないけど、口元は微笑んでるからバレてないのかな

「喫茶店でいい?」
「あ、はい」

横断歩道を渡って、少ししたところの喫茶店に入った。こ このケーキは美味しいんだ。

「コーヒー」

席について、ウェイトレスさんにオーダー。

「あ、ミルクティー」

窓辺の日が当たる席。ポカポカ気持ちいい・・・・んだろ うけど、そんなこと感じてる余裕はない。
顔が火照って厚い位だ。

「最近特に寒いね」

ハイ、そうですね
心の中で返事

「つい厚着になっちゃってさ、動きにくいよ」

・・・・あたしはミニスカートにブーツ、コートって姿 だ。
見えてなくてよかった。あんまり人もいないだろうってミニを履いたけど。 心無い男どもはデブにミニスカはキモイって言われる。
ああ、見えなくてマジよかった。
ウェイトレスさんが来て、無言でコーヒーと紅茶を置いていく。
あっ、一発でコーヒーカップを持ち上げた。まさか、見えてる?

「見えてる?」

思わず口にしちゃった

「え・・・?・・・・ああ、ここにはよく来るんだ。僕が見えないのを知っているからね、いつも同じ位置においてくれる」

なるほどー。・・・・間。  気まずい!

「あっ・・・・あ・・・・サンタのブーツ!ありがとう」
「サンタのブーツ?あ、あれね。食べた?」
「うん。お、おいしかった」
「よかった」

ニコリ。
うはぁっ

「あ、こ、これっ。お礼にっっ」 

手元にあった肉まんの紙袋を差し出した。

「え・・・。」

計6個の肉まんどもを手にしてうろたえる彼。
し、しまったぁーーーーー。

「あ、それ、べつにあたし一人のってんじゃなくって。おとーさんと食べようと思ってて、あ、でも気にしないで」

くくくくって肩を震わす

「一緒に食べよう。暖かいうちにさ」

ガサガサと紙袋を開ける

「肉まん?」
「えっ、あ、肉まんとあんまんとピザまん」
「ビザまんがいいな」
「あっ、うん」

がさがさ
ちくしょう。なんでよりによってビザまんが一番したなのさ

「ハイ」

ピザまんを彼の手に乗せる。

「あたしも、ピザまんが好き」

残りの一個のピザまんを取った。

「ハハ、これあげようか?」
「あ、もう一個あるから」
「そう?」

喫茶店に来て、コンビニで買ったピザまんにかぶりつく二人。
顰蹙者だ・・・・。

「おいしいね」

うん、うなずく。

「名前・・・まだ教えてくれないの?」

ぐほっ ぴ、ピザまんがっ
水をがぶ飲みする。
どうしよう・・・・こんな平凡な名前

「言いたくない?」
「・・・・・・・・へ、平凡だから・・・」
「?」
「ありきたりで・・・・恥ずかしい」
「平凡な名前なんてないよ。親とかの願いが込められた名前でしょ」
・・・・・・・
「・・・・ゆうこ」
ボソって言ってみる
ああ、へーぼん

「ゆうこ?苗字は?」
「鈴木」
「スズキ ユウコ か、どんな字?」
「スズキは、普通に鈴に木。 ユウコは優しいって時」
「そっか。いいね。名前の通りだ」

・・・・うそだ。あたし、優しくなんてないもん
卑屈で、人と比べてばっかり。自分よりも綺麗だったり可愛い人をねたんで・・・

「優しくないよ」
「優しくない人は僕に声をかけたりしないよ」
「き、きまぐれだもん」
「ふーん。3回もきまぐれ?」
「ぐっ・・・そ、そう」
「そんな気まぐれを起す人を優しいっていうんだよ」

く、口が達者な・・・・


「優しい人、好きだよ」

ピキン、 固まった

知らないくせに。見えてないから言えるんだよ
あたしのブサイクな顔みて同じこと言える?
ウソツキ、ウソツキ。

「あたし、帰る」
「え?」

急にあわて顔。

「なんで?」

ガタン、席を立つ。
あ、支払い。
慌てて500円をテーブルに置く。

「待って、何か悪いこと言った?」

無言。
あたしを捕まえようとしてるのか、手がフラフラ目の前で彷徨う。
ツイってそれをよけて、出口までダッシュ。

カララララン・・・・ドアベルが響く

キライだ。何もかも、ダイキライ。




バリバリバリッ チューーーーーーーーーーッッ ガサガサ  バリンッ

こたつの上に所狭しとお菓子の山。やけ食い。
好きなお菓子を食べて忘れるんだ。

「優子!夕飯前よ!」
「うるさいなぁ!!」

バリバリ ゴクゴク 

忘れるんだ。忘れてやる。
夢なんて見ない。一人でいいもん。
忘れてやる。忘れて・・・・・

優しい笑顔、ちょっと低めの声、大きな声、くくって笑う声





あと、いくつ寝たら忘れられるんだろう。



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