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コーヒーが進行前立腺がんのリスクを下げる可能性 --- 2012/3/2の朝日新聞web版やさしい医学リポート
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坪野吉孝 《山形さくら町病院精神科・早稲田大学大学院客員教授》

コーヒーは、紅茶や緑茶と並んで世界で広く飲まれている。コーヒーを多く飲むと、進行前立腺がんのリスクが
下がるという論文が、米国立がん研究所ジャーナルに昨年5月公表された。

米国の40〜75歳の男性保健医療職(歯科医、薬剤師など)47,911人を対象に調査を行った。
1986年から4年ごとに、平均して1日何杯コーヒーを飲むかを質問票でたずねた。

2006年まで20年間の追跡調査を行い、5,035例の前立腺がんの発症を確認した。このうち3,221例はがんが
前立腺の内部に留まる「早期のがん」、896例はがんが前立腺の外部に広がる「進行がん」だった(918例は早期の
がんか進行がんか不明)。また、進行がんのうち642例は死亡または骨転移のある「致死的ながん」だった。

結果を調べたところ、「早期の前立腺がん」については、1日にコーヒーを飲む量が多くても少なくてもリスクは
上がりも下がりもしなかった。

これに対して「進行がん」のリスクは、コーヒーを飲まないグループと比べて、1日1杯未満のグループで0.81倍、
1〜3杯で0.75倍、4〜5杯で0.73倍、6杯以上で0.47倍と下がった。同様に「致死的ながん」のリスクは、コーヒーを 飲まない
グループと比べて、1日1杯未満のグループで0.76倍、1〜3杯で0.71倍、4〜5杯で0.76杯、6杯以上で0.40倍と下がった。

つまり、1日に飲むコーヒーの量が多いほど、前立腺がんのうち「進行がん」や「致死的ながん」のリスクが下がるという結果だった。

さらに、カフェインを含む通常のコーヒーとカフェインレスのコーヒーで分けて分析したところ、どちらでも「進行がん」と
「致死的ながん」のリスクが低くなった。

こうした結果から著者らは、コーヒーに含まれるカフェイン、ミネラル、ポリフェノールなどの各種成分のうち、カフェイン以外の
成分によって進行前立腺がんのリスクが低くなると思われると結論している。

1日に飲むコーヒーの量と前立腺がんのリスク
(コーヒーを飲まないグループを1とする)

著者らによると、コーヒーと前立腺がんについての研究はこれまで約15件報告されているが、大部分はコーヒーの予防効果を
認めなかった。ただし、前立腺がんを「早期のがん」と「進行がん」に分けて調べたのは、今回が初めてという。

研究の問題点として著者らは、調査年齢(40〜75歳)より若い時期のコーヒー飲用の影響は調べていないことや、コーヒーを
多く飲むから進行前立腺がんのリスクが低くなるのではなく、進行前立腺がんにかかったからコーヒーを少なく飲むようになった
ことから、見かけ上、進行前立腺がんのグループでコーヒー飲用が少なく観察された可能性を完全には排除できない点などを
挙げている。

その上で、今回の研究一つだけに基づいて、前立腺がんの進行がんや致死的ながんのリスクを下げるためにコーヒーを
より多く飲むことを勧めるのは時期尚早として、さらに研究が必要と留保している。

コーヒーのがん予防効果としては、肝臓がんのリスクが下がる可能性が日本の複数の研究で示されている。コーヒーが
進行前立腺がんの予防に役立つのか、今後の研究に期待したいところだ。