越前そばについて
全国的にはあまり知られていないようだが、福井のうまいものといえば「越前がに」と並んで「越前そば」があげられるほど福井でのそばは名物なのである。
福井のそば食文化は、古くは文明3年(1417年)朝倉孝景が一乗谷に城を築き、幾度かの合戦での経験からそばを非常食として用い栽培させたことに始まる。当時はそば餅、そばがき等として食べてられていたようである。現在のように「そば切り」の形で食されるようになったのは、慶長6年(1601年)関が原の合戦後本多富正公が伏見から府中(現在武生市)城主として、国替した時、そば師金子権左衛門という者を連れてきてからであるという。公は、そばの栽培を奨励させて、非常食とし、また、自分もそばを好み、そばと収穫時期を同じとする大根をおろしにして添え食するようになったと伝えられている。
しかし、福井のそばを「越前そば」と呼ぶようになった歴史は浅く、昭和年22年10月、天皇陛下が北ご視察のため来福された際、武生町(現在武生市)で、おろしそばが供された。陛下は、このおそばを大変お気に召され、2杯お召しあがりになり、その後、そばの話が出ると「あの越前のそば………」というお言葉を口にされたという。これが『越前そば』の命名の由来とされている。
越前そばといえば、おろしそばである。越前独特のそば(灰褐色の麺)をお湯でゆでたあと、冷たい水をかけそばをしまらせる。そばは店にもよるが、太めで腰が強く弾力性がある。つゆはかつおぶしとしょう油で味を調え、大根おろしを加えた冷たいもので、のどごしが良く、大根の辛さと反比例するそばの香りと甘さが特徴である。今でも、福井にはおそば好きの方が多い。休日ともなると、人気のおそばやさんはご近所の家族連れで賑わっており、ファミリーレストランと変わらないノリである。地元の方にお話をうかがうと、「越前そば」のよしあしを決めるのは、そばのこしと大根の辛さのようだ。そういう意味では、信州や関東でのおそばとはまた違った視点でおそばを楽しむことができる。