アルコール添加について
僕の経験上日本酒好きと言う人でもアルコール添加に関しては正しい理解をしている人はほとんどいません。
これにはたぶん正しい説明を聞く機会がないことに起因していると思います。
僕の理解も完全とは言い難いですが参考にしていただければ幸いです。
アルコール添加の2つの全く異なる意味
日本酒にアルコールが添加される目的は2つあります。僕の周りの人の話を聞く限りではこのどちらかしか知らないことが、いろいろな誤解を生んでいると思うので両方一度に見てください。2つの目的とは
1.低コストで多くの日本酒を作る
2.酒の味を整える
1.の目的の理屈は簡単です。醸造した日本酒にアルコールと水を加えてがさ増しをするのです。もちろんこれでは甘味も酸味もなくなるのでさらに糖類と酸味料も添加します。俗に三増酒(三倍に増やした酒という意味)とか合成酒だといわれる安いお酒はこうして作られています。もともとは戦時中の米不足のときに芋焼酎を用いて開発された製法らしいのですが、現在でも広く用いられてかなりの量このようなお酒が流通しています。日本酒はおいしくないというイメージの多くはこのタイプのお酒に起因していると思います。
2.の目的は少し複雑です。もろみの発酵末期にアルコールを添加すると発酵が止まり目的とする酒質に近づけやすくなります。また、鉄や銅など酒の味にとって好ましくない成分減る上、香りや味の成分が引き出されるなどお酒にとっていいことづくしです。よく原料に醸造アルコールが添加してある酒はおいしくないという人がいますがこれは正しくありません。味を整える目的で適量添加してあるものはむしろ純米のお酒より軽快で香りがよいお酒になります。このため大吟醸と名乗るお酒でもある程度のアルコールの添加が認められています。
以上のようにアルコール添加には2つの異なる目的があるので、アルコール添加の可否や、味への影響について考えるときはこのことを分けて考えなければならないと思います。
低価格酒の問題
やはりアルコール添加について考えるときはこの問題を避けてはとおれないと思うので少し触れて僕の考えを書きたいと思います。悲しいことに現在でも消費されている日本酒の大部分が上の1.の目的で大量のアルコールを添加して調味したお酒です。居酒屋の飲み放題で出てくるお酒は大概は紙パックなどに入った低価格のお酒を徳利に入れたものです。多くの人はこのような場で日本酒を飲んでおいしくないと感じたことがあると思います。低価格酒が日本酒のイメージを下げて、結果として日本酒の消費量が減少していることに一役かっているのは間違いない事実だと思います。日本酒の愛好家の中には低価格酒を真っ向から否定して「蔵元は三増酒の製造を止めるべきだ」とか、「三増酒は日本酒と表示するな合成酒と書け」とか言う人もいます。しかし、このようなお酒もまたニーズに合わせた企業努力であると思うから僕らが否定するところではないと思います。発泡酒はビールまがいだから生産するなとか言うようなものです。僕らは僕らの判断で目的に合わせたお酒を選び、日本酒を誤解している人がいたら理解してもらえるようにしていけばよいと思います。
アルコール添加と嗜好
「表示について」を見てもらえればわかると思いますが、アルコールを添加をしない精米歩合70%以下のお酒は純米と名乗ることができます。
(適度に)アルコールを添加したほうが飲みやすいお酒になるというのが一般的な常識ですが、最近はさまざまな技術の進歩により純米のお酒でもかなり飲みやすいお酒もできています。また、アルコールを添加したお酒では味わえない独特の力強い味わいを活かして、純米は吟醸・大吟醸と違った独自の一ジャンルになっていると思います。
岡江兄は個人的にはお酒としては(適度に)アルコールを添加したお酒の方が好きですが、「純米」独自の風味は料理との相性が広いと思います。
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