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【Tおばちゃんのまん丸笑顔】
私は店について、善し悪しの評価を、なるべく言わない(書かない)ないようにしている。
ガンと力強い麺もあれば、ホッとする優しい麺もあり、バシッとしたいりこダシもあれば、フワッとしたかつおダシもあり、各々が独自の(色んな意味での)味を持っていて、多種多様の面白さを感じるし、結局、美味い不味いなんていうのは多分に主観的であり、人はそれぞれ好き嫌いが違うのだから、論じても仕方がないからだ。
例えば、Y本興業のY田花子を私は可愛いと思う。えーっと、ま、そう言うことです。すんません、後がうまく続かんのですが(笑)
ただ、自分の中でお気に入りの店は、麺やダシだけでなく、その『環境』が大きなポイントを占めている。
ここで言う『環境』とは、ロケーションであったり、お店の人達の対応であったり、システムであったり、店構えであったりする。
田園に囲まれた店、温室の店、化粧品店やベビー用品店で食べるうどん。ワクワクするじゃあないですか。
また、システムが解らずおどおどしながら食べるのも、スリリングであり、それはそれで楽しいものだ。
何より、おっちゃんやおばちゃん、店の人達の人柄が良いとこれはもう最高に嬉しい。
作り置きでコシのない麺でありながら、優しくて暖かい店がある。
「中田」や「小浜」、「さらさや」などがそれにあたる。図らずも「恐さぬ」で紹介されたり、「八十八箇所巡礼」に選定されたりして世間に知られることになってしまったが、本当はこっそり置いておきたい店なんだよね。
まあ、それがために行列が出来て、対応に困るなんてことはないと思うが「岩田」の例もある。
ブームになる前は出勤途中にほぼ毎朝行っていたが、今は簡単ではない。遅刻覚悟だ。
讃岐うどんファンなら誰しもそんな「荒らされたくない店」を持っていると思う。もちろん、私にもそんな店がある。
当然「全店制覇」に赤丸や小文字で載ったこともない。たぶん、かの麺聖さんやsakasanさん、パイソンさんやBっPくんも知らないはずだ。
店の名は「T」と言う。
ふっくらとしたおばちゃんが1人でやっていて、いつも笑顔で迎えてくれる。
それ以外、特筆すべき点は何もない。
何しろ「普通のうどんしかない」のである。天ぷらうどんも、肉うどんも、きつねうどんすら無い。
うどんの他に、おばちゃんはバラ寿司と少しだけおかずを作る。小魚の煮付けたのや、菜っ葉の炊いたのや、きんぴら等だ。全て和風で洋風の物は無いが、これ等がまたたまらずに良いんですわ。
但し、1日に10人も客が来れば充分と考えているのか、昼前に行って、すでに玉切れなんてことがある。
そんな時は、玉子をうどんダシに落として半熟の玉子汁を作って貰い、ご飯(運よく残っていればバラ寿司)とおかずを食べる。
駐車場はない。店の前に通行の邪魔にならないよう、ギリギリ1台だけは置ける。近くにスーパーや銀行も無いので、先客が車を停めていれば、その日は諦めるしかない。
箸立てには『種類の違う割箸』が無造作に突っ込まれている。弁当屋の箸やコンビニの箸があったりするのだ。この天衣無縫なところがホンマに良い。
最近テレビが新しくなった。おばちゃんは、みのもんたの「思いっ切り〜」が好きだ。その内容を話題にしながら食事を済ませる。
「ありがとなー」
と言うおばちゃんの笑顔はいつもまん丸だ。
「いえいえ、こちらこそありがとうなんですよ」の気持ちを込めて、
「ごちそうさん、またねー」と、私は店を後にする。
店の名を「T」と書いた。
実はウソです。アルファベットを1つズラしています。
ふっふっふ、教えてやるもんか。
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