(JR行橋駅そば)

福岡県の東部にある行橋市は、今はかなり寂しくなってしまったまちですが、寂しくなった故に
古くからの建物や街並みが残っているともいえます。
この和田食堂も年季の入った渋い建物です。入口横にある品書きのデコレーションや、
木製の間口が実にいい味出してます。「大衆食堂」のお手本のような食堂です。

入口右にあるデコレーションを覗いてみると、定番のメニューベスト6が飾られています。
大衆食堂にはたくさんのメニューがあり、その中でも厳選された人気メニューなのでしょうが、
何と上段の右にはビフテキが鎮座しています。小倉の食堂みなみではまみえることが出来なかった
ビフテキですが、小倉から30キロばかり下った行橋の地で、ふたたび食するチャンス到来です。
店内に入ると、想像通りの香ばしい雰囲気。歳月を経た木造に独特の重みを感じます。
カウンター奥の棚には、ビールや酒の一升瓶が行儀よく並んでいます。だるまや七福神といった
置物も、この手の店には欠かせない脇役です。
メニューも大衆食堂の王道をいくラインナップ。画面に映っていない部分に、そばやうどんの
アイテムもありました。私の臭覚ではチキンライスが当たりメニューと読みましたが、やはり
ビフテキを頼まないわけにはいかないでしょう。今日こそ逢えるのか、おそるおそる注文します。


むかしながらの店の造りでは、店内に続く座敷(部屋)がよくありますが、この店にも茶の間が
あり、お客さんのいない間は、店のおばちゃんは茶の間に上がってテレビを見ています。
茶の間の卓上には決まってお茶やみかんがあり、来客があるとおばちゃんは、読んでいた新聞を
たたみながら店に降りてきたりします。

店内の雰囲気に酔っていると、念願のビフテキが登場しました。フォークとナイフが三角ナプキンに
くるまれているのが愛らしいです。ゆっくりとほどきながら、幾年かぶりのビフテキを賞味します。
一口食べた瞬間、これぞビフテキという感動が走ります。最初に食べたのは端の脂身のところ
だったのですが、これにやや酸味のきいたビフテキソースの味があいまって、むかし我が家の食卓
でプレミアメニューだった、ビフテキの味そのものです。ちょっとくどめの脂身と硬めの肉の味が、
瞬時に幼少期の夕食の味とダブります。写真ではソースが一見デミグラス風に見えますが、実際は
ソースと醤油とステーキを焼いたときの脂をブレンドして作った家庭の味でしょう。
(あくまで私の分析ですけど)
まだステーキソースなどが市販されていなかったころの、手作りのビフテキソースの味そのもの
だったと思います。