HAPPY CHRISTMAS

 バーの話題がクリスマス・ツリーのことになると、スラッツ・グロブニクは語りはじめた。

 「・・・おそらく三十年ぐらい前のことだと思う。クリスマス・イブの前日で、さっきもいったように、俺は、叔父貴の酒場の隣りにある空地で店番をしてたんだが、もう二時間くらい客足が途絶えてたんで、あと三十分くらいしたら店を閉めようと思っていたんだ。」

 ツリーは2ダース分くらいは残っていたが、イブ前に客が手にとってふるいにかけたりなどしたため、ほとんどが『見るに忍びない』ものだった。

 そこへ若いカップルが一組やってきた。スラッツは彼らに見覚えがあった。名前は知らないがその界隈では最もみすぼらしい三軒長屋の地下室に住んでいることは知っていた。寒い夜にもかかわらず、彼らは手袋もせず、まともな靴すら履いていなかった。彼らはツリーを手にとって、まともなものを選んで値段をたずねてきた。

 「・・・八ドルか九ドルだったと思う。」 

 値段を知った彼らはそのツリーを置いて別のツリーを探しはじめた。そこにある木を全部みたが、スラッツが値段を答えるたびに残念そうに首を振った。彼らはスラッツに礼を言ってその場を立ち去ろうとしていた。しかし歩道にでると女のほうが男に何かささやいて相談しはじめた。しばらくして彼らはスラッツのもとに戻ってきた。

 「俺はたぶん、まともな木のうちの一本を買うことにしたんだろうと思った。」

 ところが彼らは、中でもいちばん惨めな木を指し、値段をきいた。その木は片側は申し分なかったが、反対側の枝が半分くらいなくなっていた。

 「俺は、その木なら二ドルでいいけど、その木じゃ、どんなに念入りに飾りつけをしても、見映えがするようにはならないだろうって忠告してやったよ。」

 しかし彼らはもう一本みすぼらしいツリーをもってきて値段をきいた。それも2ドルだと答えた。すると女のほうが男に耳打ちをして、男のほうがスラッツに二本で三ドルではどうかときいてきた。

 スラッツは『そんな木を二本買うより、あと何ドルか出して、まともな木を一本買った方がいい』と忠告したが、女は『ちょっと試してみたいことがあるの』といい、結局二人は三ドル払って一人一本ずつツリーを持って帰った。

 翌晩スラッツはそのカップルの住んでいる建物の前を通ったとき、彼らの部屋の窓からツリーが見えた。そこから見えたツリーは一部であったけれどもとても素晴らしかったのでスラッツは玄関の扉を叩くことにした。外からツリーをみて、どうしたのかきになったから、というスラッツを二人は部屋の中へいれた。その狭い部屋の中にはこんもりとした森と見間違うほど枝が生い茂った美しいツリーが飾られていた。

 「ふたりは、驚いている俺に、その世にも美しいツリーの秘密を教えてくれたよ。彼らは、二本の木の幹を、枝ぶりの悪いほうが内側になるようにしてくっつけて、それを針金で固定してたのさ。・・・そのツリーの出来映えにふたりがあんまり嬉しそうだったもんだから、おかげでその週はこっちまでずっといい気分で過ごすことができたよ。

 それに、あのふたりが現れなかったら、まちがいなく捨てられたと思う、あのみなし児みたいな二本の木のことを考えても、やっぱり俺の気分は弾まざるをえなかった。

 これが俺の知っている、誰も見たことのないような美しいツリーの木を手に入れる秘訣だよ。

 完全じゃない、欠点のある、見てくれもよくない、誰も欲しがらないような木を二本手に入れる。だが、そんな木でも、うまく両方のいいところをくっつければ、人も羨むような美しいものを作り出すことができる。

 人間の場合と同じことさ。ちがうかい?」

****『クリスマス・コラム』Mike Royko(井上一馬訳)より*****

 

HAPPY CRISTMAS AND A HAPPY NEW YEAR!

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