The Place I love.

 その場所は六本木にある。よく知られた店『Hard Rock Cafe 東京』(以下HRC)。こことはもう長いつきあいである。初めて店にいったのは9周年めの頃だから(今年7月で19周年を迎える)もう10年近い。といっても通いはじめたのは8年前くらいからだろうか。東京に住む以前のことである。

 8年前といえばその頃のHRCは異常に混み合った店だった。週末といえば外まで並ぶときもあったし、BARに潜り込んでも映画『カクテル』のようにカウンターは客で溢れかえっておりオーダーするのもままならなかった。

 その頃バーテンダーだったIさんは当時アルバイトだったがバーテンダーとしてはとてもいい腕をしていたし、実際BARの中でリーダー的存在だったと思う。もちろんその頃は話もしたことがなかった。

 東京に移り住んで、月に2回は週末を過ごしただろうか、スタッフの中の何人かは私の顔をおぼえて話しかけてくるようになった。その頃はわがままなオーダーはできなかったから、ソルティードッグやストロベリーダイキリ(これはあのプリンスがとってもお気に入りで、ツアー中出前オーダーしたほどである)をよく飲んでいた。エアロスミスやパールジャム、エクストリームを聴きながら夜が更けるのを楽しんでいた。

 今ではHRCは私の家のようなものである。オールド・ファッションをオーダーすると『え〜〜〜』と拒否するスタッフ、ホットコーヒーとミルクを頼むとコーヒーとともに牛乳パックを手渡してくれるスタッフ・・・など、客扱いされていないのも事実だが。私の方でもサッカーの試合があるとBAR唯一のモニターの前に席を陣取りナチョスと酒で日本チームと相手チームの競り合いに一喜一憂するなど、『あんたの家かよ、ここは〜』とスタッフにつっこまれるほどリラックスしているのである。仕事で嫌なことがあるとここで飲み、試験でいい点を取ったりするとここで飲んだ。私の東京での生活の半分はここにあるといってもいいかもしれない。

 Iさんは数年まえ社員になったが、この度HRC上野駅店の店長となった。彼は今まで国内に新店舗を出すたびにBAR研修に駆り出されいくつもの店のグランドオープングに立ち会ってきた。何人ものバーテンダーを育ててきた。その彼が自分の店をまかされたのだ。私にとっては感慨深いものがある。彼とは2年ぐらい前からよく話すようにもなっていたが、この上野駅店のオープニングが決まったときはめずらしく饒舌になっていたのが印象的だった。

 そして3月25日店はオープンした。Iさんの他に研修時代から知っているスタッフも副店長として異動になった。みんな新しい店に期待がふくらんでいるようで生き生きとしている。そんな彼らを見ていると妙な親心のようなものが湧いてきて、うれしいような寂しいような、なんとも言えない気持ちになる。3月は卒業をはじめとして、別れ、そして巣立ち旅立ちの季節である。東京店のいつものBARから知っている顔が少なくなっていくのは寂しいが、また別の家に通う楽しみができたのも確かである。

 

 『Natural Wonder』はIさんの作ったカクテルです

chiekony@td5.so-net.ne.jp

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