『マンハッタン』。バーボンウィスキーとベルモット、アンゴスチュラビターをダッシュしてチェリーを沈める。私の定番のひとつだ。
先日アメリカの4大ネットワークがCMなしで『TRIBUTE TO HEROES』というアーティストたちによるチャリティー番組をオンエアした。日本でも生中継され、観た人も多かったのではないかと思う。
なかでもBilly Joel の『New York State of Mind』には心が痛む思いだった。この曲は私がいちばん好きなもので、ニューヨーク出身の彼がこの歌を歌うのをコンサートの度に心待ちにしたものだ。このようなかたちで聴くことになったのはとても残念だった。
It comes down to reality
And it's fine with me 'cause I've let it slide
Don't care if it's Chinatown or on Riverside
I don't have any reasons
I've left them all behind
I'm in a New York state of mind
この『It comes down to...』のあたりを聴くと灯がともりはじめたタイムズスクエアを歩いている気分になる。イエローキャブのクラクションがますます響きわたり、ストリートミュージシャンのサキソフォンが街並みとシンクロする。毛皮をまとったブロンドのマダム、足早にタクシーに乗り込むビジネスマン、紙コップ片手のホームレス、ブロードウェイに向かう老夫婦、ベルボーイの笛・・・。ニューヨークの夜がはじまるのである。彼らは今夜どんな夢を見るのだろう。
悲しい気持ちで『New York State of Mind』を聴いたその夜、私はいつもの店で『マンハッタン』をオーダーした。グリニッチ・ビレッジで飲んだ夜を想い出しながら。そしてBillyが『New York Times...』の歌詞をかえて歌った意味を考えながら・・・。ニューヨークはまもなくハロウィンの季節になる。感謝祭そしてクリスマス。人々がおだやかな気持ちで過ごせますように。

1998年9月、私が最後に見たニューヨーク・マンハッタン。
左手にツインタワーが見える。右側にはエンパイアステートビル。
ボストン行きのアムトラックの車窓から。