NY chie ・s

『五番街でシシカバブを食べよう』

 私の数少ない自慢にのひとつに『1969年生まれ』というのがある。1969年、アポロは月に行った。まあ、それも人類の歴史の中では意味のあることではある。しかしある世代の人々にとって1969年というのはまた別の意味もある。ウッドストック。LOVEとPEACEのロックの祭典だ。その年に生まれた私は自分を『LOVE & PEACE』を掲げるべき人間だと信じている。(・・・なんてね。でも信じ込もうとしているのは事実)別にうちの両親がヒッピーだったわけでもないし、うちにジミヘンやジャニスのアルバムがあったというわけでもない。1969年にうまれたのも偶然だ。(しかもウッドストックが開催されたより前に生まれている)でも私にとって『LOVE & PEACE』は当たり前のことだと思っているし、今このときにこそ主張しなければいけないような気がする。

 成田美名子の代表作『CIPHER(サイファ)』は双子の男の子の話である。舞台はニューヨーク・マンハッタン。この作品でアメリカやニューヨークに憧れた読者は多かったのではないだろうか。サイファとシヴァ(本名はロイとジェイク。二人は芸能人って設定でこのへんもややこしい)は訳あって二人一役?の暮らしをしている。お互いがお互いを必要としていて二人だけの生活に閉じこもっている。ところがそこにアニスという女の子が入ってくるから・・・というあらすじはどうでもいいんだが、その二人は自分たちをツインタワー(ワールドトレードセンター)にたとえ、またストーリーの展開においてツインタワーはある意味ただの背景ではなく、彼らの象徴となっている。

『ツインタワーの本名知ってる?』

『ジェイとロイ』

 そのツインタワーが崩落した。2001年9月11日。アメリカは、そして世界はこの日を決して忘れはしない。無差別テロに崩されていくツインタワーをニュースで見ながら私はとにかく今ニューヨークで、またアメリカで何が起こっているのか自分に把握させるのに精一杯だった。頭の中で時間が戻ることを願いながら。

 私はワールドトレードセンターが一度めの爆弾テロにあう前とその後にそのビルの展望台に行っている。前述した『CIPHER』でツインタワーのことは良く知っていたし、90年代前半はウォールストリートは憧れの街(ヤッピーっていう輩がはびこっていた時代)でツインタワーはその象徴的存在だった。ニューヨークへ行く人の多くは自由の女神を見に行くと思うが、自由の女神のあるリバティ島からマンハッタンを眺めるとそのツインタワーが真っ先に目に入る。私はニューヨークに戻るたびにエンパイアステートビルを見て『ただいま〜』と思うし、ツインタワーを見て『また会えたね』と思うのだ。しかしそのビルは今はもうない。

 必死の救助活動が連日おこなわれている。にもかかわらず行方不明者の数は依然5000人以上だ。一方でニューヨークは日々の生活を取り戻しつつある。正確には取り戻そうとしている。テロの攻撃にあった直後灯が消えていたブロードウェイは早々に再開し、近代美術館(MOMA)などは無料で美術館を開放したりしている。ニューヨークのタフさはここにある、と人々は言う。確かにそのとおりだ。しかしニューヨークのあのエネルギーは自由の国アメリカに夢を抱いて集まってきた人々がつくりあげたものだと思う。デリを経営しているギリシャ人、ターバンを巻いたキャブドライバー、即興でジャズを演奏する黒人ミュージシャン、・・・この街は誰にでも『ここにいていいんだ』という安堵感を与えてくれる。その自由の街がテロのターゲットになった。

 ・・・ニューヨークは日々の生活を取り戻しつつある。それは『何事もなかったように』ではなく、『自由に対する攻撃を乗り越えるために』だと私は思う。私が次にニューヨークへ行くときにも彼らがそのままであってほしいと願っている。『自由』を誇りに思い日々ポジティブに生きている彼らのままであってほしい。そして私はきっと屋台で買ったシシカバブ(羊肉の串焼き・ギリシア料理)をほおばりながらビルの間を歩きウインドウやストリートを眺めているはず。

写真はロックフェラーセンター側から見た聖パトリック大聖堂(5番街)(1998年9月)

 

『IMAGINE』のページへも寄ってみてください。

chiekony@td5.so-net.ne.jp

MENU