Château Beychevelle
Saint-Julien 1988
少なくとも日本では、サンジュリアンははまる人ははまるというのが定説みたいですね。思うにそれって、サンジュリアンのワインって共通 する特徴はあるんだけど、なかなかそれをはっきりと言葉で表現できないからじゃないかと思うんですね。それでついつい飲んでしまう、と。僕自身、サンジュリアンのイメージって、全然漠然としたものでした。サンジュリアンといえば、ラスカーズを筆頭とするレオヴィル御三家だったり、デュクリュボーカイユの名前が挙がったりするわけですが、それとはちょっと違った意味で、ベイシュヴェルもサンジュリアンのサンジュリアンたるゆえんを知ろうと思ったら案外大事な部分じゃないかなと思うんです。
ベイシュヴェルは、昔はさらっとしていたが今は違う、ってよくいいますよね。それが本当かどうか分かるほどベイシュヴェルを飲んでいるわけじゃないんですが、この88に関していえば、さらっとしすぎることもなく、パワフルすぎることもなく、といったところです。そのバランス感覚ってとてもサンジュリアン的じゃないですか? 80年代以降サンジュリアンのシャトーはパワフルなスタイルへと移行し、それが成功を収めたということになっていますよね。実際それでラスカーズはポイヤックの三つの一級と肩を並べると考えられるまでになった。でもその一方で、一貫性がないともいわれるベイシュヴェルはいかにもサンジュリアン的な曖昧路線を突き進んでいるんじゃないかと思うのです。
ベイシュヴェルは88が最高というわけではなく、たぶん86や89の方がすばらしいんじゃないかと思います。でも88も、他のオフ・ヴィンテージのサンジュリアンワインみたいに弱すぎることもなく(そういえばラスカーズの77はキツかった)、サンジュリアンの何たるかを語ってくれる一本です。アロマも深く味もバランスが良く、後口には少しだけ甘みのようなものが残ります。ラスカーズを初めとする他のシャトーが何故成功を収めたかがよくわかる一本という意味で、サンジュリアンを知りたい人には是非ともお勧めの一本でした。