冷酷


私は他人に優しくないと思う。
どうでも良い人間の事なんかいちいち気にしてられない。

簡単に、当たり前のように傷つける。
今後関わりたくない人間なら尚更。
言い回しを変えることなく、自分が思っている素の言葉で相手を傷つける。

「今更何の用?もうこれ以上あんたの迷惑受けたくないんだけど。」父親に言った。2年振りの電話だった。

「もう今後一切あんたと会う気も寝る気もない。」恋人に言った。弁解の余地も、謝らせる時間も与えなかった。

「私に関わろうと思わないで。私はあなたが嫌いだから。」同級生に言った。涙目になった彼女を一瞥した。

「もう二度と会う事はないと思うけど、お元気で。」これは最近友人に言った。もう切れている関係にわざわざ宣言した。

煩わしい人間関係は面倒で仕方が無い。自分にメリットのない、何の利害関係もない、しかも自分が好感を持てない人間に媚を売る必要はないと思う。

その反動だろうか、身内にはすこぶる甘い。何を言われても、何をされても大丈夫。
例え、彼(女)らが、私を騙したとしても、落ち込む事はあっても、怒りはわかない。許せるだろう。ただ、悲しい。多分、そうなったら彼(女)らは、私にはもう会わないだろうから。
私は十分すぎるほど彼(女)らから貴重なものを貰っている。共通の時間の中で私はどれだけ財産を貰っているだろう。考え方や、思想、誇り、それぞれ全く違うが、確固たるものを持って生きている。その会話の中で私は毎回、驚きや新しい発見を見出す。
そして、私は彼(女)らをこの上なく愛している。

小心者で、臆病な私はほとんど人を嫌いになる事はない、『苦手』か『自分とは合わない』と思うだけ。
嫌いになる条件は、悪意のある攻撃。若しくは悪意が無いからこそタチの悪い言動。そして身内を傷つける人間。
それ以外の事ではそうそう嫌いにはならない。そして大抵の場合、嫌いになったら、交流を断つだけ。
自分の嫌いな人間を執拗に攻撃するほど暇じゃないし、物好きでもない。
そう、たまに「あんな奴もいたな」と酒のつまみにするか、上辺だけの罪悪感を味わいたい時に思い出すだけの存在。