かくてボクは焼とん愛好会の会長になった!

橘家 文吾

 全日本焼とん愛好会というものがありぼくはその会長である。
 だから、『一体この会は何をするのだ』といわれて真っ先に答えられねばならぬ立場にあるわけだ。しかし、残念な事にぼくにも一体この会は何をするところなのか、いまだに良く解らない。とはいえ、一応会員は存在しており会報も出した。
 この機会に設立の事情などを振り返り新たに会の意義を(多分そんなものは無いと思うが)発見しなおすのも会長としての役目だろう。
 今から丁度1年前の事だった。ある雑誌の編集者と飲食する機会があったので西麻布の焼鳥店へ入り、ビールと焼鳥を注文した。今から思えばその際にぼくの言ったその注文のセリフが元凶だったのかもしれない。
「あのね、つくねと正肉、それとレバ・タン・シロ・・・」 この何気ない注文のセリフに店員は激怒した。
「おいウチは焼き鳥店だぞ。そんな下衆なシロだかタンだのないわい!」 と怒鳴り、店の奥に引っ込んだ。そう言われて最初何でヤツはあんなに怒ってるのかな、とキョトンとしてると、一緒に居たその編集者が、
「だから店員が言うには焼鳥には、『タン』だの『シロ』ってえのが無いんだよ。お前の頼んだのは焼とんだろ」
 ぼくの認識不足だった。だがぼくは素直に謝らなかった。ぼくは焼鳥も好きだが焼とんはもっと好きだった。自分の店の品物に自信とプライドと格式を持つ事は結構な話だがタン・シロをゲスなものとのたまう事は断じて許さない。味・値段など多少は違うものの姿形は同じ串仲間ではないか。貴様らの理屈からしてみりゃ焼とんに限らず串物であれば鰻は勿論、キモ・短冊・バラ、羽二重団子だって、バーベキューだって、きりたんぽだっておハナシにならないって言うのかい?そう言われてみればその焼鳥屋の看板には「高級焼鳥店」と書いてやがった。
 なにが「高級」だ!
 たかが鶏の首をチョン切り血を抜いてバラバラに解体し一本一本串に刺して焼いただけの物じゃないか!ぼくはその場で声明文を書き、「全日本焼とん愛好会」の結成を世の中に訴えた。
 その声明文とは。

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