焼とん愛好会の皆様と

柳家喬太郎

 だから俺は別に会員じゃないんだって!

「焼とん愛好会というのを作って、これから全国的に活動を展開する。会費も集まりつつある。時代はこれから焼とんだ。俺はマジだ。やる時はやる。焼とんは食い物の王様だ。焼鳥がなんだ。焼とんが一番だ!」
 橘家文吾アニさんがこう熱っぽく語ったのは確か去年の秋、場所は池袋の焼肉屋であった。あの人は冷メンを食っていた。始めはシャレであろうと思っていた。面白半分だろうと・・・  ところがマジであった。会報まで作り決起集会をなんと池袋演芸場でやるという。
 呑み会の誘いをウチにも時々頂いたが体調が悪かったり仕事が有ったりで残念ながらお断りをしていた。
「すいませんアニさん、この次また誘って下さい。でもねアニさん、言っとくけど俺、会員になるって言った覚えないよ。」
「ま、ま、いいじゃない。堅い事言わないでさ。じゃ又、この次行こうよ。」
 で、浅草の焼とん屋に行った。仲間が集まって呑んだが成程、皆焼とんに対する思い入れが強い。子供の頃、焼鳥と書いたのれんに騙され買った屋台の
「旨いけど、なんか違うよな!」
と思いながら食ったあの味・・・。噛めば噛む程味が出る。疲れたサラリーマンや元気なオジさん、ちょっと訳ありのカップルが焼とん屋で一杯・・・
 などというシチュエーションは新作落語に作っても、なかなか味があるではないか。うーん、こりゃなかなか侮れないぞ。
「あ、喬太郎?八月に池袋演芸場おさえたからさ、焼とん愛好会の集会やる。空いてたら出てよ」
「あ、大丈夫です。空いてます。」
「そう?さあーて!当日、何やろうかなぁ。」
「あ、あのねアニさん、俺会員じゃ・・・」
「楽しみだなァ!なんかいい企画あったら考えといてよ、じぁあな!」
「あ、アニさん、あのォ・・・」
 ・・俺、一応、会員じゃないんだけどなぁ・・・

− 完 −

HOME