| ば ん や | (南部八戸、居酒屋) |
たどりつくだけの価値がある、なんとも居心地の良い空間
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| 訪れたときの様子 |
| 「ねえマスター、もう1杯だけ飲みたいな」 主人と手塚治虫・ときわ荘の話で盛り上がっていた女性はそろそろ帰りそうだ。これで少し主人と話せるかなと思っていたら、女性がこちらを向いた。「お客さんはどちらから?」 東京です、と答えるとなぜか酒談義になっていった。「東京は遊ぶ所がいっぱいあっていいわねえ」 「遊ぶにはいいけど住むのは大変ですよ。せめて通勤ラッシュさえなければ・・ 」 「そうそう、僕も東京に何年かいたが、あれは大変だ」(連れの男性) 「でも、あたしはいろんなお酒がいっぱい置いてある店が好きだから、東京いいなあ。」 どうやら若い頃東京に住んでいたらしい主人も参入する。「確かに東京にはいい居酒屋がいっぱいありますな。」 「あっ、ここは例外よ。こんなにお酒がそろっているお店はなかなかないわ。」 この店に並ぶ銘柄を見ていると、八戸にいることを疑ってしまう。「磯自慢」「九平次」「黒龍」「早瀬浦」「綿屋」「東北泉」「墨廼江」「明鏡止水」「飛露喜」等など。いずれも純米から(高くない)吟醸クラスの飲み頃が揃っている。店員がしている前掛けは「神亀」「あづまみね」だ。どうやら、冷蔵庫にはそれ以外に内緒のお酒が隠れているらしい。 居酒屋談義に進む。「根津にいい居酒屋があるらしいですな」(主人) 「シンスケ」のことだろうか。「鍵屋」が良かったですというと、どうやら知っているらしい。本棚に飾られた雑誌(「サライ」99年のやつ)の表紙はここの写真のようだ。「日本の居酒屋をいく」やら「いざ、純米酒」などとともに、なんと「下町酒場巡礼」が置いてある。 いや、でもこれだけの雰囲気の店はなかなかない。高めの木のカウンターに大皿の惣菜が並び、すぐ奥の棚には前記の銘柄の1升瓶(空)、天井からはイカ釣り漁船の?灯りやら干した魚・はりせんぼん?などが下げられ、黒ずんだ木の柱・壁にぴったりだ。真ん中の冷蔵庫が目隠しとなって人目が気にならず、適度に窮屈な空間に色紙の品書きを照らすあかりがなんともあったかい。一言で言えば居心地が良いのだ。(田舎家の豪華な土間で飲んでいる感じ) 忘れられているのかと思ったニシンが届いた。20センチを超える1匹が約30分かけて焼き上げられてきた。ピチピチに張った身に見事な焦げ目。思わず「写真撮ってもいいですか?」と聞くと主人は笑っていた。取材には慣れているのだろうが、ニシンを撮る奴は珍しいのだろう。 「お客さん、りんごは津軽だと思っているでしょ。でも、八幡(近くの町の名前らしい)のほうがおいしいのよ。少量生産のせいで、出回らないだけ」「あそこのは木で完熟させるからね」(連れの男性) 「りんご送ってあげるわ」 「じゃ、僕は鍵屋、案内しますよ」と取引成立。 「あっ、マスター、もう1杯飲みたいな。」 ここ八戸は「南部」に属し、もとは盛岡藩。青森・弘前(「津軽」)との境になる野辺地・平内には関所まであったという。戊辰戦争においても「官軍」と「賊軍」(南部)に分かれ・・ といった由来のせいかどうかは知らんが、とにかく対抗意識が強い。青森県=津軽・下北と思われがちなせいもあるのか。(そんな八戸の人も認めるのが、青森のほたてのうまさよ) 久しぶりに飲んだ「九平次」がうまい。(梅雨寒から頼んだ燗酒はちょっとアルコール辛かったから、ここ飲むなら冷やだ) 手前側に並ぶ青森県の酒のなか、主人のお勧めは「十(とお)」のようだ。この酒、青森県では自慢の一品、格式が高いらしい。 なにかつまみも、という注文には、なめこが出された。なにかであえてあるなと思っていたら、「麹あえです。酒にはこんなのがいいんですな。」 なんかこの流れ、どっかでもあったなあ。 いかん、そろそろ新幹線がなくなる。(八戸の中心らしい本八戸の街は八戸駅からは遠いのだ) 「じゃ、ごちそうさまでした」 「おやすみなさい。ねえマスター、もう1杯だけ飲みたいな」 この人、あと何杯飲むんだろう? |
| この日注文したもの |
筑前煮(大皿から)、ニシン焼き、イカ刺し、なめこ麹あえ、 |
| 勝手なコメント |
| 太田氏のいう「いい人、いい酒、いい肴」が確かにここにはある ★★★★★(5つ星が最高) |
| 詳しい紹介 |
八戸市朔日町(ついたちまち)4番地
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