遠 太 (三ノ輪・居酒屋)
古き良き昭和の雰囲気
     
訪れたときの様子
店に客1人だとうらさびしくなるものだが、ここはなぜだか落ち着く。幅広で堂々とした表、引き戸からして厚みがあり、今時珍しいほどゆるぎなくぴっちりと閉まる。カウンターや(おそらく住居である)2階への階段まできっちりしつらえてある建具が重厚さを感じさせるのだろうか。
そういえば天井も少し高めのようだ。カウンターの上部にひさしのようなものが付いていて、小上がりがすごく近い。客間より広いのではないかと思われるほど厨房がゆったり取られているから、こんなにのんびりした空気になるのだろうか。

「ハイボール」を頼んだら琥珀色のが出てきた。炭酸とレモンスライスが効いていておいしい。ウイスキーのハイボール(330円)かと思ったら、どうやらこれが焼酎入り(270円)の方らしい。
ガスホースを引っ張る昔懐かしい金(かね)の重たいコンロに、300円台とは思えないほどごろごろ豆腐が入った鍋がのせられる。なにかすぐできるものを取ろうかとも思ったが、グラス片手にぼおっと店内を見上げているのがけっこう気持ち良くて、そのままにしたくなった。初めて来たのに、座っていてなにかが懐かしい。

鍋にはネギと春菊が入り、幅広の削り節ときざみネギが薬味だ。あたたまった豆腐にちゃんと味があって、おいしい。
「ハイボ−ル」のお代わりを頼む時に「色見たらウイスキー入りだと思いましたよ」と言うと、「これは特製ですから」とおかあさんがにっこりした。(ちょっとうれしそうだ)

揚げたそばからご主人が持ってきてくれた「めごちの天ぷら」(450円)。油がきちっときれていて、ほんわりした身がおいしい。大根としょうがのおろしに天つゆ。のりと、もう一つ細長いのははじかみを揚げたのだろうか。のれんに「うなぎ・天ぷら」を掲げ、品書きにも「〜の天ぷら」が多く、実はこの日、天ぷらを食べたくて来たようなものだったので満足だ。

そろそろ閉店という時間に1人で訪れたのに、快く迎えてくれる老夫婦。油ものを頼んでもむしろ腕が鳴るといった風に揚げてくれる。「これ以上煮ると酢が入るからね」と湯豆腐の火を弱めにくるおかあさん。齢三十幾ばくの身ながら、ここが古き良き昭和の一つの原形であると断言したい。帰りに立ち寄る居酒屋として最適だ。なぜこんないい店が空いているのだ?(「なくならないうちに早く行ったほうがいいよ」という飲み仲間の忠告も、あながち冗談ではない) すでに顔がくしゃくしゃなご主人がかくしゃくとしているうちに訪ねることを強くお勧めする。
この日注文したもの
湯豆腐(330円?)、めごちの天ぷら(450円)、各1、
遠太特製ハイボール(270円)2、
(お通し無し)
1人で1300円(30分強滞在)
勝手なコメント
古き良き昭和の香りが今なお残る店。居酒屋好きなら(早く)行くべし。
★★★★★(5つ星が最高)
詳しい紹介

荒川区東日暮里1-31
11時から14時と17時から22時の営業
日祝定休

営団日比谷線 三ノ輪駅 から徒歩2〜3分
都電荒川線 三ノ輪橋駅 から徒歩5分ほど

日比谷線からは、三ノ輪交差点方面の出口を出て、東京三菱銀行の角を入る。そのまま少し歩いた左側が「遠太」。
都電からは、線路の突き当たりの方へ歩き進むとすぐ商店街につきあたる。右に行き、すぐの大通りを渡りそのまま直進。信号のある筋(店はまばらだが、商店街)を右に行くと左手が「遠太」。

天ぷら、うなぎ以外には、焼き魚やフライ、豚汁、野菜炒めなどごはんのおかずになるものが豊富。(400円前後がほとんど) 丼ものや定食も数種あるほどなので、夕食も済ませてしまいたいときに最適。
酒は「遠太特製ハイボール(焼酎入り)」(270円)があれば十分だったが、ほかに、「ウイスキー入りハイボール」(330円)、生ビール、「清酒大関」「清酒並酒」があった。

⇒「新精選 東京の居酒屋」 太田和彦  草思社
⇒「下町酒場巡礼」 大川渉・平岡海人・宮前栄  四谷ラウンド 又は ちくま文庫
http://www.h3.dion.ne.jp/~bkkwolf/keller/
(銘酒揃「狼亭」内 「余は如何にして大酒呑となりしか?」の一番下の方・2002年3月16日分)


この日の次の店(@)へ

店一覧に戻る