郷土料理 しまや (津軽弘前、料理屋)

   津軽の人とつまみは東京もんにもあたたかい

      
訪れたときの様子
またやっちまったか! 店の写真を撮っていたら、フラッシュに驚いて中から人が出てきてしまった。こっち見てるなあ、(当たり前だ。あたり見回しても俺しかいない) どさくさにまぎれて入っちゃえ、「ああ、すいません。これから入るところです」

「光ったから雷かと思ったわよ」(このあたりは住宅地のようで灯りが少ないからフラッシュがとても目立つのだ) 「ほんと、雨降ってきたら困るもの」 よかった、カウンター内のおばちゃんや店のお客さんも怒ってはいないようだ。改めてすいませんと詫びてからビールの小さいのと頼む。

「(中瓶or小瓶もあるけど)生の小さいのもあるからその方がいい?」(おばちゃん) おっ、いい感じだ、こういう店はいろいろおすすめを聞くに限る。
白いバットが並ぶなか、「このかれいおいしいわよ。じゃがいもが入っているなんて珍しいでしょ」(隣りに座っている女史) 確かにこのだしはうまみがひろがる、じゃがいもが効いているのか? 思ったより薄味だ。
「東京から来たの? じゃ、たけのこ食べていきなさい、こんなの(東京には)無いでしょ」(女史) 「根曲がり竹って言うのよ」(おばちゃん) 「煮物もあるけど焼くのなんてどうかしら? 皮ごとよ。あら、ごめんなさいね、人のことなのに」(女史) いえいえ、どんどん勧めてください。あっ、このしそ巻、中身は茄子だ。初めて食べたが、湯せんされた「豊盃」に合うなあ。

味が薄味でおいしいですね。もっと濃いイメージがあったんだけど 「あらっ、若いのにここの味がわかるなんて珍しいわね。食べ物の仕事をしているの?」(女史) いえいえ、とんでもない、ただの食いしん坊です。
「でも、よくこの店に来たわ。(ここは弘前一よ) 初めてだと入りにくいでしょ。」(女史) 実は本を見てきました。太田さんという人が書いた居酒屋の本・・ 「あの本にはいい店が載っているわね。」 女史は知っているようだ。「私も全国あちこち行ったけど、これは、と思う店はほとんど載っていたわ。いったいあのひと、一つの町で何軒くらい入ってるのかしら?」 おばちゃんも太田さんが来た時のことをよく覚えているらしい。 「あの人、よく飲んでいたわね。ここの後も夜中3時くらいまで飲み歩いていたそうよ」

〆さばもあっさりしめてあるが、ちゃんと味があっておいしい。ここのつまみは、何か一味ずつ違うなあ。 「他の所は年季が足りないんじゃないの」と笑うおばちゃんがサツマイモを揚げはじめた。女史が身を乗り出して手順を追う。「へえ、砂糖けっこう多いわね。そこで〜を入れるの?」 大学いもが出来上がり、奥で宴会している人と女史へのおもたせとなった。
とくに高い材料ばかりでもなさそうだけど、おいしい。 「高いもの使ったらお客さんに出せない(値段が高くなる)からね。調味料に頼らず、手間をかけるのよ。」(おばちゃん) そこが年季の違いか。
これまかないだけど、と出された味噌煮。さっき〆さばの残りがビニール袋で漬けられていたやつだ。これも酒となにかもう一つ味が付いてるんだよなあ。すっきりしているんだけど複雑な味、不思議だなあ。


青森は魚がうまいですね。市場でほたて買いましたよ。 「市場で買って持ってかえって食べるのがいいのよ。市場内の食堂でも食べたけど、いいものは出してないわね」(女史)  たしかに食堂で食べた中落ち丼(1500円?)は期待はずれだった。「大間のまぐろは食べたことあるの? ここは最高級の魚仕入れているから食べていきなさい。人のこと、決めちゃって悪いけど。」(女史)
でてきたまぐろの角切りはさらっと脂がはいっているが、なんといっても噛んだときの香りとうまみが鮮烈だ。こんなにまぐろってうまかったのか。
イカが一緒に盛られている。ねっとりした身が酒を呼ぶなあ。このコリコリしたのは・・
「イカの三角の耳のところ。この辺では“耳っこ”ていうのよ。」(おばちゃん) かわいい呼び方だなあ。「ざるっこ」なんてのも聞いたぞ。「鰺ヶ沢であがったのよ。この辺の魚はあそこから来るの」(おばちゃん) おっ、郷土自慢か?

これ食べてみて、と小鉢がでてきた。イカの塩辛だ。「あそこ(鰺ヶ沢)の市場で売ってたの。時期じゃないのにうまく漬けてあるのよ。」(別のおばちゃん) とくに梅雨の頃はすぐすっぱく?なってしまい漬けるのが難しいそうだ。寒い時期がいいのは日本酒と一緒だなあ。(ともに発酵食品) 酒、もう1本。
塩辛を持ってきたおばちゃんは女史の前で俳句をひねり出した。「〜とのほうがいいわね。○○だと品が無くなるわ」 俳句の先生もやるらしい女史は、著述業?で東京にいたが、数年前に弘前へ移り住んだらしい。「ここは食べ物もお酒もおいしいけど、なにより空気がおいしいわ。東京よりぜんぜんいいところよ。」(女史) 

東京の影響があまり無く、地元に自信をもっている街で飲むのは楽しい。新幹線がこない方がこの街にとってはいいんじゃないだろうか。

「つがるさけ いずれみやこか あづまとまどう」 お粗末(いや、それ以前)
この日注文したもの
かれい煮つけ(じゃがいも入り)、根曲がり竹(焼き)、水菜と油揚げの煮物、茄子(煮)のしそ巻、刺し身(〆さば、大間のまぐろ、イカの身と「耳っこ」)、各1、
ごはん、もずくの汁(「シロ」と呼ばれる白ネギ入り)、各1、
生ビール(小ジョッキ)1、燗酒(弘前の蔵、「豊盃」)2、
アラの味噌煮(〆さばの残り、まかない)、イカの塩辛(味見)、←この二品は多分お金をとられていない
1人で5300円(1時間半弱滞在)
勝手なコメント
おばちゃんとつまみに年季が入っていて、一味違う
★★★★★(5つ星が最高)
詳しい紹介

弘前市・元大工(もとだいく)町31
15時から22時半の営業
日曜定休

奥羽本線他 弘前駅 から車で10分ほど、歩くのは厳しいか
弘前公園と弘前大学医学部付属病院の間、タクシーの運転手さんには元大工町で通った。飲み屋の中心らしい鍛治町からは少しはずれるが、歩ける距離。
弘前駅から歩くと30分近くかかりそう。弘前公園のあたりまで100円バスが走っているので、バス利用が吉。

短めのカウンター席と小上がりのテーブル少々と、さして広くはない。奥で宴会している風だったから、座敷もありそうだ。

つまみは盛りがよく、いろいろ食べたい私にはわざと少なめに盛ってくれた。刺身は別として、1品500円くらいか。

酒は「豊盃」1種(おそらく純米)。「しまや」という店の名前がラベルの酒もあるが4合売り。(こちらは吟醸のよう) 1合徳利が20本ほど入るように仕切られて湯が張られた燗付け用の容器が(おそらく炭火で)温められているのが素晴らしい。そこで燗された「豊盃」がうまい。

⇒「ニッポン居酒屋放浪記」 太田和彦 新潮社
     「青森」の部分(実は記載のほとんどが弘前)、文庫本の中表紙はこの店だ
  「ニッポン居酒屋放浪記 立志篇」(上記の文庫版) 新潮文庫
http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kankou/koto/index.html
(弘前市役所公式ページ内、この町には風情のある名前がたくさん残っている)


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