| 酒 盃 | (羽後秋田、居酒屋) |
秋田の酒・つまみと主人の迫力
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| 訪れたときの様子 |
| 「いろいろ飲みたいのなら、半合でお出ししましょうか。」 酒飲みにとって、これほどうれしい言葉は無い。しかも、席に着くなり「由利正宗と刈穂でおすすめのものを」と言ったとたんの返答なのだから、こたえられない。 1杯目は「美酒の設計」。注文どおり「由利正宗」の蔵の吟醸だ。冷蔵庫から出された生酒1升瓶から、高台の盃に注がれる。きれいな口当たりながらも、ふくむとうまみがあって、のどを通すとすっとひける。「うまい」とつぶやくと、目の前の主人もにっこりする。 半合といいつつもしっかりふくらみがある器で、ゆっくり楽しめそうだ。6つに仕切られた平膳が出てきた。2〜3口ずつの和の品、ゆで・煮・焼き・酢のものなど。 「由利正宗」の話をしていたら「今のは美山錦と吟の精だが、美山錦でないの(山田錦?)もある」とのこと。もちろんもらうと、ラベルが「酒盃」と店の名だ。純米大吟醸らしいがこちらの方が旨みがある気がする。蔵の華もそうだが、新しい酒米は注目だなあなどと勝手に思う。 つまみつつもちょっと酔ってきた。そろそろ刈穂がほしい。「ちょっと面白いのがあります。」と言って出されたのは、さきほど酒屋で見た12号酵母のやつだ。 「さっき、まるひこさん(川反にある酒屋)で見ました。うまいらしいですね」(実は1本買ったのだが、試飲もしていないので味はわからない) 「おお、まるひこに行きましたか。彼とは一緒に蔵にも行って試飲したのですが、今年のこれ(刈穂)は大当たりです。」 「今年初めての酒じゃないのですか?」 「もう数年前から作っていますが、今年のがいちばん良いです。」 こんなうまい酒が、何年も前からあったんだ。地の酒を飲む醍醐味だなあ。どーんと旨みがのっているが、香りが爽やか(個人的には14号酵母っぽく感じた)で後に残らない。好きだなあ、こういうの。 「これなんとなく静岡の酒に似てますね」と言うと、主人の顔つきが少し変わった。 「秋田の酒として飲んでいるので、他の県の酒と比べるのは好きじゃないですね」 あぶないあぶない、穏やかな物腰だが、この点だけは譲れないらしい。 「どんな酒が好きですか?」(主人) 「香りが立ち過ぎず、ふくむと旨みがあって、すっとひけるもの。贅沢かなあ? ここにある銘柄で言うと○○○の○○はうまいですねえ。」 「○○○の○○は思い出のある酒なんです。」 ここから酒談義が深まる。 「○○○は最近どうも酒が良くない、と思ったのでこれは話をしなければならないだろうと、まるひこと蔵まで行ったのです。杜氏にいろいろ聞いてみると、やはり造りがおろそかになっている気がしてならない。そこで、その年1本だけ残っていたタンクの造りを変えてもらいました。いろいろ手をかけるようにしてもらって出来上がったのが○○です。」 さらっと言うが、定評のある酒を造っている杜氏にそんな話をしに行くだけでもすごいことだと思う。更に造りまで変えさせてうまい酒を造らせるとは。酒への情熱は素人の私にもすでにひしひしと伝わってきていたが、この主人、恐るべし。 「燗酒を飲みたい」という注文には、本醸造が出てきた。 お通しもなくなったので一緒に何かつまみを頼むと、(高級品もあるなか)出されたのは、いわしをあぶったのとイカの沖漬け。「酒のつまみにはこんなのがいいんですよ」と主人が笑う。 最後に1杯ほしいというと「私のお勧めでいいですか?」ときた。この主人のお勧めなら飲んでみたい。 興味津々で待つなか注がれたのは「五風十雨(ごふうじゅうう)」。「天の戸」の吟醸、(ここまでの4杯に比べると)強めの吟醸香で引けが良い。旨みが程よく広がったあとに軽い酸味などいわゆる「五味」が感じられる。そういえば、いい杜氏は酸をうまく出すなんて話、したなあ。 この年代(50前後)の人はきれいだけどきれいすぎない(味もある)吟醸を好むという印象があるが、もしかしたらこういう吟醸が酒の終着点なのか、主人を見ているとそんな気さえしてくる。 |
| この日注文したもの |
お通し(かるくゆでたこごみ?に醤油、牛房煮、にこごり、魚酢の物、鯉甘露煮、渦をまいた貝の焼いたものの6品、1200円) |
| 勝手なコメント |
| 秋田の酒と主人に出会える店。探し出して行く価値あり。 ★★★★★(5つ星が最高) |
| 詳しい紹介 |
秋田市山王1-6-9
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