終電間際のおかしな人々
その4 恥
笑い飛ばせる恥、心まで冷えてしまう恥。出来る事なら恥はかきたくない。
私の人生は、けっこう笑える恥のかき通しだが、「終電間際のおかしな人々」の中に、1つ書いておきましょう。
最終電車の改札口に向かう一直線の通路は、商店街のシャッターも下ろされ、まるでゲートの様だ。駅員が各配置場所に立って、早く、早くと手招きしている。私も、フーフー言いながら走って来た。
改札口にあと一歩の所に、か弱いOLが酔って座りこんでいた、というか、寝ている姿がかわいく思えた。
私は何の躊躇もせず、
「この電車に乗らないと、もう電車はありませんよ」
と、やさしく声をかけた。
か弱きOLと見えた女性は中年だった。ウッと私を見上げ、鬼の様な、口裂け女のような真っ赤な口で、
「ウルセエ。人の勝手だろうが! バカヤロウ!」
と、あたりかまわず、大声でわめきちらした。日曜の歩行者天国だったら、人だかりができそうな塩梅で−−。
ヒャー、身の毛もよだつ、0時52分。
恥ずかしさで顔が真っ赤になり、心臓はドキドキ。一刻の猶予もならぬと、最終電車に飛び乗った。
もう、イヤダ。怖かった。真夏の怪奇映画の様だった。
気が弱いのに、なまじっかの親切心なんか起こすからいけないのだ。もう、おせっかいはやめようと思った。
こうやって人は、他人に無関心になっていくのでしょう。
でも、私は嫌。淋しい。心が悲しい。
だから、私はこの乾いた東京で恥を繰り返しているのでしょう、ね。
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