美緒の気まぐれエッセー

転がり込んだ遺産

竹ちゃん(仮名)は40代の独り者。1960年代の頃の風貌をそのまま残した、人のよさそうな男である。仕事をバリバリとやるタイプじゃないから、上司に叱咤されながら、小さな事務所で働いている。
時代に取り残された様なところが、私はほっとする。いい人だと思っている。

そんな竹ちゃんのパッとしない人生に、ある日降って湧いた様な遺産が舞い込んだ。
「私が死んでも、あんた達にゃ、あげないよ」
なんて正月に親戚の集まりで嫌味をゆう、大嫌いなオバさんが70代の若さであっけなく死んだのだ。10人の身内で、何千何百何拾円まできっちり分けた。
竹ちゃんはそのお金の半分で、小さな事務所を開いた。初めてのひとり立ち。嬉しかったでしょうね。
残りの遺産はとゆうと、
「これはあぶく銭だ。いつまでもとって置いてはいけない。残りはいさぎよく使ってしまおう」
こう思った竹ちゃんは、今まで味わった事のない楽しみに突進した。
それはキャバクラだった。
きらびやかな広い店内には、着飾った若い女の子の群れ、大胆な服装、甘い香り――彼女達が笑顔で入れ替わり接待してくれた。ロングで倍のお金を払い、時々店外デートをしてもらった。1日10万円を支払った日もあったとゆう。女の子は竹ちゃんのお金の出しっぷりに、ぞっこん参ったに違いない。
しかし、夢のような生活はそうは続かなかった。遺産を使い果たすと、キャバクラ通いをあっさりやめた、まるでこの日を待っていたかの様に・・・

浦島太郎は悲しい結末を迎えるけど、竹ちゃんはいつもの竹ちゃんでした。よかったよかった。でも、時々龍宮城を思い出す事もあるのかなー。