美緒の気まぐれエッセー

下手の横好き

趣味で習っているダンスが足の甲の痛みのせいで思うように踊れなくなり、私はつらい日々を過ごしていた。そう、もう10年前から痛い、イタイと思いながら、重い体重をよいしょと乗せて、跳んだりはねたり、腰も足もつらかったでしょうね。整骨院へ行ってもシップと塗り薬だけ。やめれば痛みは治まるでしょうと決まった答え。日中未亡人の私は(主人は2年前に他界)、妻の仕事がなくなった分、時間を持て余す。そうなると、やっぱり音楽に合わせて踊るのが性に合っているようだ。
渋谷区でやってるカルチャーセンターが近くにあるのを思い出し、ぶらぶら出かけた。掲示板には、お茶、絵画、英会話と、お誘いのビラが所狭しと貼ってある。そしてとても安いのだ。何だか嬉しくなった。その中で私が選んだのは、フラダンスと太極拳とストレッチ。ダンスは宙に舞うものだけど、フラダンスや太極拳は床だから、足にやさしいと思いすぐに入会した。

あれから数ヶ月。フラダンスの生徒たちが実におもしろい。なんたって40代が1人、あとは50、60、70、80の姉御がそれぞれ番張っているんだから。主義主張を持っていて、思ったことをはっきり言う。
「○○さん、そこんとこ違うわよ」
又別の人が、「なに言ってんのよ、こうよ」
なんて言うか、私には裏がないように思える。
花柄のスカートとレイをつけた昔の美女達が、一生懸命振りを覚えて、夢中になってダンスをしている。私なんぞはこのグループではまだガキで、入会初日に、
「アナタ、腰振りゃいいってもんじゃないわよ」なんて言われ、
「あー、そうですか」と返事したものの、内心、
「そうかなー、フラダンスは腰振んなきゃ」と思ったものだ。逆に先生がおとなしい。
40分位稽古をすると休憩があって、少し背中の曲がった係りのお姉様が、ビニール袋に入った飴を1人ずつに配ってくれる。私はいつもハッカをもらう。これも若いダンスグループにはない事だ。
会が終わるとロビーでお茶の時間。これもまた可笑しい。公共のロビーの椅子。指定席じゃないのに、姉御から順番に暗黙の席があるようだ。人数が多い時はガキの私は立っているか、補助椅子に座る(自分で取りに行き、後で返す)。そんなオバさん達が生き生きしていて、堂々としていて、私には新しい体験。可笑しくてしょうがない。
オバさんやオバーさんは嫁の悪口や愚痴が好きで、意地悪かと思ったら大間違い。優しくて感情豊かで、お肌もツルツルで、可愛くて、大雑把で、お菓子なんかも誰かが持ち寄り、あっという間に談話室になる。私が時々人数分のおせんべいをそっと置いたりすると、
「あんたはまだ気を使わなくてもいいのよ」なんて優しい事言ってくれる。
戦争や別離を経験した多くの未亡人のいる仲間。なんとかっこいいんだろう。
皆さんずーっと、今のままでいて下さい。2月の文化祭に向けて、「バリバリの浜辺」、がんばりまーす。

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