手紙
太極拳に通い始めて1年以上、2年未満。怠惰な私は遅刻しながらも通っている。
60代の知的な先生と20人前後の老若男女の生徒達。
辛いストレッチのあと音楽が流れると、私なんぞはもう見よう見まねでおごそかに24式を舞う(?)。そんな時の自分が好き。
時々見学者が訪れる。みな少し恥ずかしげに隅の方で稽古を見ている。
ある日、中年のきちんとした女性が入って来た。
「主人の病気の介護を13年続けたおかげで、痩せ細ってもうガタガタです」と、先生に話していた。
私は疎遠になっている10歳年上の姉に似ているなと、思った。知らない人の中で心細い経験をした私は、笑顔で近づいて行った。二言三言話した後、彼女は私に言った。
「もっと早く死んでくれたら、私はこんな体にならなくてすんだのに」と。ごく普通の声で自然に。
私は思わず彼女の目を見た。正直な人だなー、気に入ったと思った。次の瞬間、私は、
「貴女、私の怖い姉に似ているわ」と、とんちんかんな事を言っていた。
それから何度も稽古で会っていたが、挨拶を交わす位だった。
ある日、たまたま一緒に帰る道すがら、我が家へ彼女を誘った。さっぱりした性格の彼女にコーヒーを入れ、玄米と雑穀のご飯で小さめのおにぎりを作って、
「食べてみてー」私は手渡しした。
彼女は夜小茶に行く私の為、早々に帰っていった。
ただそれだけの事。
後からハガキが届いた。
「今まで毎日が介護介護で明け暮れていましたので、友達の家へ行ったのは十四年ぶりでした・・・」
おむすびのお礼も――きれいな字でびっしりと書いてあった。
十四年振りだなんて・・・何度もハガキを読んだ。ワープロじゃない生きている字。その人の人格まで感じられる温かい文章。
なんだかとっても優しい、いい気持ちになった。その気持ちはまだ続いている。
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