クリちゃん
私の次女は誰に似たのか友達が多い。友情をもっとも大切にしている。先頃、クリという子が小茶に遊びに来た。小学校以来の仲間で我が子と20年以上続いている親友だ。ポッチャリしたハーフの様な子だったけれど、やせてすっきりした美人になっていた。ビールを飲みながら「オバさーん、お世話になっている上司です」ちゃんと男の社員を立てている。時々からかわれても笑顔でさらっと切り返す。大人になったなー感動もんだ。ただスローなしゃべり方や動きは昔とちっとも変わらない。
「オバさんちのテンポにはついて行けません」クリにはよく言われた。そう、うちの家族はすごいと思う。興がのってくると早口でまくしたて、人の話に割り込むは大声で叫ぶは、笑うは体中で表現する。クリは我が屋に来てしゃべろうにもテンポが間に合わず、酸素のなくなった魚みたいに口をパクパクさせるだけ。そんななつかしい話から、「そういえば、オバーちゃんに怒られたなー」クリが言った。初耳だった。
「何、何、又、お母さんやらかした?」私はクリに言った。お母さんが入院した時のことらしい。高校生だった娘とクリが病院にお見舞いに行った。小茶のお客にはにらみをきかす母さんも本来テレ屋だから、さぞかし借りてきた猫のようだろうと想像する。母は私の様におちゃらけたりしないので、3人で話がはずんだとは思えず、おかしな3人組だったことでしょう。二人のお小遣いで買ったみかんをクリがおもむろに手に取った。(きっと子供心に気を使ったのだ)そして母のベッドのそばでスロースロー、ゆっくりと皮をむき、次に白い薄皮を又、ゆっくりゆっくり取っていたところ、「あーじれったい!」急に母のどなり声。
クリの手から大きな手がパァっとみかんをつかんだと思った瞬間、「オバーちゃんはふた口で食べてしまった」と。
クリは……「あ、わ、わ、わ、わ」今だから笑えるけど、かわいそう。話を聞き終わった時、私もクリに同じことをしていたのを思い出した。
それはクリと娘が高校生の頃の話。体育祭の応援に使うポンポンを我が家のリビングで仲良く作っていた。梱包用のビニーひもを赤、白、青と混ぜ、束ねてゆわき、細く切る。まあ、掃除の時に使うハタキの様なもの。不器用なうちの娘のほうが先に仕上がっていた。几帳面なクリはものさしで長さと巾を測ってハサミで切っている。ゆっくり、ゆっくり、ていねいに。
私は何気なく見ていたのだが、だんだん腹が立ってきた。「えーい、貸しなさい!」クリからポンポンを取り上げた。測って、切っていたら日が暮れちゃうわよ、私は心の中で叫んでいた。「こうやるのよ!」ビニールひもを束にして手でちぎり、雑に手際よく、あっという間にポンポンを作ってしまった。どうだと言うように強い調子で「ハイ」と手渡した。
クリは目をまん丸くしていた。今では友達同士の語り草。いつも大笑い。すみません。子供が一生懸命作っているのに短気もないもんだ。しかも親子で似たようなことをしていたなんて。クリの性格が温厚でよかった。この几帳面さがのちに認められ、現在キャリアウーマンとして大活躍しているのです。めでたし、めでたし。
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