ひんぎゃ塩ラーメン
神田駅西口から小川町駅に向かう多町大通り。神田警察通りを越して80m、目指す店がある。黄色いシェードに白い暖簾、どちらにも黒い文字で店名が記されている。
暖簾を潜り、店内に歩を進めると、温かい笑顔で主人が出迎えてくれる。奥のカウンターに腰を落ち着ける。
丼に塩を直接入れる主人、熱々のスープを注ぎ、味を確認する女性店員。指で麺の茹で加減を確認、平ザルで掬い上げる、麺が踊る。モモ肉の叉焼、メンマ、ネギ、海苔が添えられる。
顔を近づけるだけで、節系と煮干系の切ない香りが鼻腔をくすぐる。塩の香りの中に、はっきりと感じられる複雑な魚貝系の味、そしてそれらを品良く支えている動物形のコクと旨味。
中細の、ややウェーブの掛かった麺は、固くも無く、柔らかくも無く、口中で軽く飛び跳ね、やがて喉へと注ぎ込まれる。すーっと残る旨味と塩気が、次の一口へと手を休ませてくれない。一気に半分ほどを平らげる。
ふと箸を休め、大きな存在感を見せている叉焼に手を伸ばす。しっかりと肉の旨味が残り、確かな味わい。一心に食べる。最後の一滴を口に納め、店主を見ると、自然とため息が出る。
どうでしたか今日のは。いつもの、自然な店主からの会話。煮干の質を上げまして…。日々向上したいと言う店主の心意気に、今食べた一杯が、また新たなスタートなのだと実感できる。心地良い疲労すら感じられる一杯が、店を出てもいつまでも余韻として残っている。名品である。