そば屋の「つゆ」のはなし
最近の「手打ちそば」ブームで「そば」に興味を持つ人が増えました。素人さんでも「そば粉」を良く勉強し「そば打ち」に挑戦する人が増えているようです。しかし、残念ながらそういった人達から「そばつゆ」に関してあまり話を聞くことがありません。
意外に忘れられがちな「そばつゆ」実はとっても奥が深く「そば」にとって大切なものなのです。
例えば、どんなに良質の「そば粉」を使い優れた技術をもって「そば」を打っても最後の「そばつゆ」が美味しくなければその「そば」は美味しく食べることが出来ません。またその逆に「そば」自体がそんなに美味しくなくても「そばつゆ」が抜群に美味しければ食べた時その「そば」は美味しく感じることができる筈です。このように「そば」を生かすも殺すも「そばつゆ」次第なのです。
一言で「そばつゆ」と言っても「辛汁(つけ汁)」「甘汁(かけ汁)」などがありその作り方や使う材料は店によって様々で正解というものはありません。味にしても各店によって全く違うものです。
一般的に東京(関東)では、鰹節を主体にした濃い目の「だし」を取る店が多い様で、他に鯖節、宗田節、昆布や花鰹などのものを混ぜて使う所もありその店独自の「だし」を取ります。店によっては、どんこ(乾燥させた椎茸)や煮干などのものを混ぜる所もあり、その組み合わせ方や使う材料などは数限りなくあります。この「だし」に「返し(かえし)」、味醂、砂糖、などを入れた物が「そばつゆ」になります。
「返し(かえし)」とは、醤油に砂糖、店によっては味醂などを混ぜ合わせたもので「本返し」「生返し」などが代表的です。
「本返し」とは沸騰寸前まで火を入れたもので、「生返し」とは逆に火を入れないものです。この中間の作り方をする「半生返し」というものもあります。「返し」を作った後、醤油の角を取る為に長時間寝かせるのが一般的です。しかし、これもまた「だし」と一緒で作り方や寝かし方(時間など)は、各店によって全く違ってきます。
この「返し」実はそば屋の扱うものの中で一番大事だと言われ、昔から「火事になっても『返し』は持って逃げろ」と言われるほど大事にされてきました。
「築地さらしなの里」では、厚削りにした鰹節(本節)で「だし」を取りじっくり寝かせた「返し」(本返し)、味醂、砂糖を混ぜ沸騰寸前まで火を入れて「辛汁」を作ります。さらにそれを一日寝かせ湯煎をし冷ましてからお客様に出します。
「甘汁」は、その日の朝、鯖節を使って「出し汁」を取り「辛汁」に使うものと一緒の「返し」を入れて作ります。
しかし、これは「築地さらしなの里」のやり方であって他の店はまた違うやり方をしています。
どの店でも共通することと言えば「辛汁も甘汁もその店のそばとの相性を考えて作る」と言うことです。
「美味いそば」それは「そば」と相性の合う「そばつゆ」がなければ出来ないものなのです。
