クリスマスの微笑み(作・テヌート)

笑顔−1 投稿日 : 99年12月23日<木>02時47分
   12月24日、Xmasイブ。今日ほど、晴天の恨めしい日はない。c
  afeの住む街は、日中の晴天が夜まで続き、どこにも雪の気配は無かっ
  た。
   街中が、1999年前に産まれた一人の男の誕生日に便乗したお祭り騒
  ぎに浮かれ、様々なイルミネーションに飾られていた。
   すれ違う人々、同じ方向に歩く人々。素敵な予定でもあるのか、楽しそ
  うに歩く人々と、こんな日に仕事に追われているのか足取りの重い人々。
   cafeは、自分が軽やかに歩いている事に気付いて、少し歩幅を狭め
  た。
   雑踏を抜け、彼の待つ場所に向かった。そこでは、見慣れた彼の車が雪
  化粧をしていた。
   「どうしたの、これ」
   驚いて聞くcafeに、彼が照れくさそうに答えた。
   「ディスプレイ用に使った雪のスプレーが大量にあまってさ、せめて車
  だけでもホワイトXmasにしようと思って・・・」
   「ありがとう。あたしも洗車手伝うね」
   cafeは、そう言うと複雑な印象の笑顔になった。


笑顔−2 投稿日 : 99年12月23日<木>02時47分
   12月24日、Xmasイブ。たまごは、少し浮かれて台所でパーティ
  ーの準備をしていた。
   手早くパーティー料理の下準備を終えて、たまごは軽く伸びをしながら
  台所を離れた。
   TVのスイッチを付け、選局することなく画面に現れたニュースを見た。
  画面の中に、今日一日の事故や事件、様々な出来事が流れた。
   「今日と明日くらい、暗いニュースは流さなければいいのに」
   たまごは、ニュースを見て呟いた。
   ニュースの中で、世界のXmasというコーナーが始まり、南半球の夏
  のXmasが映し出された。
   真っ青な空の下、光り輝くビーチに水着の女性、そして、見慣れた姿の
  サンタクロースが歩いている。
   「なんか、サンタさんが可愛そうね」
   たまごはTVを消し、TVから流れていたXmasソングを最後まで鼻
  歌で歌いきり、更に鼻歌を続けた。
   そして、Xmasなのに、自分の中に季節はずれな思いでの歌が有るこ
  とに気付き、複雑な印象の微笑をたたえながら、その歌を歌った。


笑顔−3 投稿日 : 99年12月23日<木>02時48分
   12月24日、Xmasイブ。toは、相変わらず歯の治療をしていた。
   「しかし、キリスト様も歯痛には通用しないようだな」
   独り言を言いながら、首を回して次の患者を待った。
   いつもは悲痛な顔の子供が多いが、さすがにXmasなのか今日は子供
  の患者は表情が軟らかい。
   待合室では、母親がサンタクロースとプレゼントを餌に子供を窘めてい
  る光景が有るのだろう。
   to自信も、ここしばらく子供患者にはXmasを餌にしていたのだが、
  自分のことは棚に上げていた。
   本当に、子供発想は面白い。サンタクロースを餌にしても、サンタクロ
  ースは居ない説、サンタクロース宇宙人説、サンタクロース泥棒説と、色
  々な話を聞ける。
   診察時間も終わろうとしているときに、一人の男性が駆け込んできた。
   「先生、こんな時間に申し訳有りませんが、痛みだけも止めていただけ
  ませんか」
   中年の大柄な男が、すまなそうに体を小さくしてる光景を見てtoは声
  を掛けた。
   「どうしました、いいですよ。さあ、かけてください」
   toは、診察用の椅子に座るように勧めた。
   「いやあ、これから息子の為にサンタクロースの格好でパーティーに参
  加しないといけなんですが、急に歯が痛み出して・・・」
   「そうですか、サンタクロースも歯の痛みには勝てませんか」
   toは、複雑な印象の笑顔になった。


笑顔−4 投稿日 : 99年12月23日<木>02時48分
   12月24日、Xmasイブ。びおろんは、ごく親しい人だけで行うX
  masパーティーの為の支度をしていた。
   髪に複雑なウエーブを付け、服装に合わせた化粧をし、全てを丁寧に時
  間を掛けて行った。
   選び抜いた洋服を着て鏡の前に立つと、何故か自分でない物を感じて戸
  惑ったが、変更可能な時間は残されていなかった。
   「ま、いいか」
   びおろんは、独り言を言いながら、頭の中で選んでいた靴を出そうとし
  た。
   ところが、どうしても靴が見あたらない。
   どんなに記憶をたどっても、靴の在処がわからない。時間は、無情にも
  進んで行く。
   「仕方ないか・・・」
   びおろんは少し暗い気持になったが、服装と色のあまり合わない靴を履
  いて出かけた。
   小さな飲み屋を貸しきりにしたパーティー会場にびおろんが到着すると、
  すでに全員が揃っていた。
   「ごめん、遅くなって」
   びおろんがそう言うと、全員が暖かく迎えてくれた。
   親しい女友達が、びおろんの側に来て声を掛けた。
   「今日は、立食だって言ったのに。何、その靴。せっかく決まってるの
  に、もったいない。でも、あんたらしいわ」
   親しい女友達は、軽く微笑んだ。
   びおろんは、「あんたらしい」という言葉を聞いて、複雑な印象の笑顔
  で頷いた。


笑顔−5
 12月24日、Xmasイブ。キリスト教の厳粛なお祭りのイメージと
  はかけ離れた街の喧噪の中、まさゆきは一人パーティー会場に向かってい
  た。
   会場の入り口で、見慣れた友人にチケットを渡した。
   「一人で来た女、けっこういるぜ」
   友人が、まさゆきに声を掛けたが、幸せそうな街の風景で気落ちしてい
  たまさゆきには意味がなかった。
   「女より、今日は料理と酒だよ」
   まさゆきは、そう言い残すと会場に入った。
   会場にはいくつかのグループが出来ていて、まさゆきは見慣れた友人を
  見付けて、そのグループに混じった。
   カップの多い、そのグループから静かに離れて、ツリーの下に腰掛けて
  酒を飲んだ。
   「あーあっ、来るんじゃなかったかな」
   まさゆきは、酒を飲んだ。
   「こらっ、そこに居るとキスされちゃうぞ」
   声に驚き視線を上げると、そこにはドレスの腰に両手を当てて立ってい
  る女性が居た。
   「どうぞ、いいですよ」
   まさゆきは、おどけて答えた。
   「本当は、女の子の席なんだぞ、そこは」
   彼女は、身をかがめてまさゆきの頬にキスをした。
   「えっ」
   まさゆきは、驚きの声をあげた。
   「メリーXmas、鈍感な、まさゆきさん」
   まさゆきは、ようやく彼女のことを思い出し、複雑な印象の笑顔になっ
  た。
   「ごめん、ドレス姿で気付かなかった」

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